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生と死の境界!(前編) - 老化は細胞から始まる-

こんにちは、ビビです。
ちょっと前にお気に入りのティーカップを買ってから、家で紅茶をいただくのがさらに楽しくなりました。おうち🏠が大好きなので、その分好きなものだけをよく考えて購入するようにしています。欲しいなーって思っても、数年かけてお気に入りを探すことも。別名、優柔不断って言います。
こんな風にものの見方や考え方って、言い方を変えるとポジティブにもネガティブにもとれるのが面白いですね☕️ 自分のペースで楽しく過ごせたら、それが「幸せ」なのかも🍀 

さて、今回のトピックは「老化」です。レンさん曰く、『老化は「生と死の境界」でもあり、楽しく生きるためには、健康であることが大切である』。
今回は、前編&後編の2回に分けてお届けしますので楽しんでいただけると嬉しいです。


🐭平均寿命の伸びと老化

平均寿命とは「0歳時点での平均余命」のことを言いますが、人の平均寿命について統計が取られるようになったのは、そんなに昔ではありません。中世ヨーロッパでは、20歳代と推測されており、1750年のスウェーデンでやっと38歳ほどに達したようです。現在、世界の平均寿命は70歳を超えますが、背景には乳幼児の死亡率の低下や医療技術の発展があると言えるでしょう。もちろん、戦争などの争いがない平和な世界であることが前提となりますが。

医療の発展が様々な疾患や怪我による死から人類を遠ざけてきましたが、逆に寿命が長くなることで「老化」という現象が顕著になってきたという事実もあります。
ところで、老化ってなんでしょう。

老化が進むのは、なんとなく人の一生を見ているとわかります。でも、実際に何がどうなって老化という現象が起こっているのでしょうか。まだまだわからないことばかりですが、最近の研究を元に紐解いていきたいと思います。

🐭遺伝子の読み取りが正しくできない老化細胞

老化とは、一般的に「加齢に伴う機能的な変化」を言います。「機能的な変化」は、細胞レベルで始まります。この変化については、様々な報告がされていますが、ゲノムの不安定性、エピジェネティックな変化、ミトコンドリアの機能異常などの12の特徴に分類されています(Cell)。
12の特徴といってもピンとこないですが、これらの多くにはDNAが関係しています。しかしながら、DNAは生物の設計図であり、老化によりこれらのコード自体が変わっていくわけではありません。その設計図の「読み取り方」が変わるのです。

DNAには読み取り開始の目印がついているが
細胞老化によりこの目印が正しい位置につかなくなり
正常時とは異なるタンパク質が産生されることがある

生物はDNAの情報をもとにRNAやタンパク質を合成しています。とは言っても、いつも全力で全てのDNAを元に合成をしているわけではありません。細胞ごと、臓器ごと、あるいはタイミングごとに必要なタンパク質等は異なるため、状況に合わせて必要なものを必要な分だけ作り出すメカニズムがあります。これが、エピジェネティクスです。DNAにアセチル基やメチル基という修飾物をつけて制御しています。どうやってかというと…..

細胞一つ分のDNAの長さは2mにもなりますが、実際にはヒストンというタンパク質に凧糸のように巻き付けることで、絡まることなく、省スペースで保存されています。しかしながら、あまりにタイトに巻き付いていると、DNAからRNAを作ろうとしても、RNA合成酵素などが入り込めないので、需要に合わせて緩める必要があります。DNAをアセチル基やメチル基をつけたり外したりして三次元的な構造を変え、隙間を作ってみたり、きつく巻きつけてみたりするのです。

Newtonの2024年12月号でも老化を取り上げられていて、このアセチル化やメチル化を付箋に例えています。この付箋がついているところは無視してね、あるいは読んでRNAを作ってね、っていう感じです。わかりやすいですね。

ところが様々な要因で、この付箋が正しい場所につかなることがあります。こうなるとDNAの読み取りが適切に行われません。これが細胞老化のサインの一つです。ただし、老化は全ての細胞で並行して起こるわけでなく、ストレスを受けた細胞が老化を起こし、一つずつ「老化細胞」となっていくのです。

🐭老化細胞とマーカー

例えば、日々の細胞分裂の中でDNAが創傷を受けると修復する機能が備わっています。修復がうまくいかない場合、アポトーシスによる細胞死を起こして排除されることが多いです。ところが、細胞は増殖を不可逆的に止めて生き延びることがあります。これが老化細胞です。老化した細胞は増殖せず、細胞死も起こしません。
修復がうまくいかずに増殖し続けるのががん細胞ですが、このがん化を回避する方法の1つとも言われています。といっても、「細胞が死なない」というのも歪な状態ですので、後でお話しするように疾患の原因になるという研究もあります。
まずは、老化細胞がどんな細胞かを見てみましょう。

老化細胞を他の細胞と区別するためのマーカー(指標、目印)があります。マーカーとは、それぞれの細胞やその周辺で発現が増減するタンパク質やペプチドなどの因子で、その発現量を他の細胞と比較することで、細胞の特徴的な変化を調べたり、かつ細胞が持つ機能を確認したりできます。例えば老化細胞のマーカーである、がん抑制タンパク質p53、その関連タンパク質p21、そしてp16はいずれも細胞の増殖周期を停止する機能を持つため、老化細胞ではこれらの経路が影響を受けて細胞増殖が止まることが分かります。
他にも核膜を安定に保つLamin B1も老化により消失してしまうタンパク質で、これもマーカーとして扱われます。Lamin B1の場合は老化細胞で消失することが分かったことで、機能が注目されるようになり、その周辺タンパク質の研究が進んだりもしています。

🐭老化細胞はSASP因子を撒き散らす

正常な細胞と同様に、老化細胞も独自のサイトカインなどの因子を分泌しています。これをSASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype)因子と言います。この中には、炎症性サイトカイン(周囲に炎症を起こす因子)も含まれ、分泌により周辺に慢性炎症状態を作り出すのは老化細胞の大きな特徴の一つです。恐ろしい事に、このSASP因子の影響を受けた細胞は、自らも老化細胞となります。
脂肪組織でも大きくなりすぎた脂肪細胞が細胞死を起こすことで慢性炎症が誘導され、動脈硬化やがんなどの疾患リスクが増加することは知られていますが、老化細胞でも同様にこれらの疾患リスクは上がります。

細胞は、細胞ごとに異なるシグナルを放出し、近隣環境に影響を与える
老化細胞も独自の因子を放出し、周囲の細胞に影響を与える

他にも、細胞外マトリックスと呼ばれるコラーゲン等を分解する因子も放出します。細胞はマトリックスの間に埋め込まれるように存在するので、これが分解されると基盤構造が揺らいでしまいます。細胞同士は、このマトリックスを介してシグナル(情報)のやりとりをしているとの研究もあるので、分解されると生存環境を正常に維持できなくなります。

なんだか余計なことをしてくれる印象ですが、実際のところはどうなんでしょう。気になりますね。

🐭次回は・・・🐭

さて、前編はここまでです。後編は、老化細胞と疾患の関係や老化しないハダカデバネズミについてお話していきます。

このお話は、ポッドキャスト(サイエントークをもとに書かせていただいています。”ワンピース”が終わるまで絶対延命したいレンさんと、シミをとる技術も老化研究というエマさんの楽しいトークを、ぜひ聴いてみてください!

サイエントークプロジェクト

サイエントーク
151. 生と死の境界!老化に挑む研究

関連資料他
1. 人類の寿命伸長
2. 12の老化要因『AGING HALLMARKS』
3. Cell: Hallmarks of aging: An expanding universe
4. DNAの折りたたまれ方
5. Newton: 別冊 死とは何か
6. 老化研究に必須の10のマーカー
7. 老化と神経変性疾患の関係性を、核小体分子PQBP3が説明する
8. 老化細胞(ゾンビ細胞)の謎が分かった
9. マトリックスという骨組みがあってこそ細胞が存在できる


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