SF・短編 #2 カラー・アウト・オブ・スペース(「宇宙からの色」)
どうもビビビです。みんな大好きH・P・ラヴクラフトの「宇宙からの色」が映画化!!前からレビューだけ見て気になっていましたが(キャラクターのアクが強くて主演のニコラス・ケイジが出てきただけで場内が笑に包まれるそうです)、ついに7/31からロードショー!!
映画は小説とはかなり設定が違うようですが、どういう展開になるのか楽しみです。映画版は見に行ってから書くとして、今回は小説「宇宙からの色」をご紹介したいと思います。まずはあらすじから。
あらすじ
ダム建設の調査員である主人公は、仕事で訪れたアーカムという陰鬱な田舎で、「焼け野」という場所の伝説を耳にする。調査中に偶然見つけた焼け野は、5エーカー(150×150m位)の草も生えない灰色の土地だった。空恐ろしい空気を感じて町に帰った主人公はその伝説はほんの40年前の出来事だと知る。顛末をよく知る老人アミを訪ねた主人公は身の毛もよだつ事件の内容を聞かされる。アミは、すべては隕石とともにはじまったという。
小説版では、この事件に巻き込まれたのはネイハム・ガードナーという愛想のいい50代の農夫で、妻と三人の息子と共に暮らしています。1880年代のある日の真昼彼らの井戸近くの庭に、大きな隕石が落ちてきます。学者たちが喜び勇んでサンプルを回収していくのですが、分光器にかけてスペクトルを観測すると、まったく見たこともない光の帯が現れます。(物質によって現れる色が違うので、何でできているかわからない物体を分光器にかけると正体がわかる)この色が、一家をどんどん蝕んでいくのです。
小説版には大々的にクリーチャーが出てきて大暴れしたりはしません。ただ、矢継ぎ早に恐ろしいことが起こり、ガードナー一家が、アーカムの町が、抜き差しならない状態に追い込まれていきます。一応地球外生命体は出てきますが、どちらかというと本体よりもそれにより引き起こされる災厄が中心に描かれます。しかし、それがめっちゃ怖い。見た目は美しいけれども異常性をはらんでいて、その異常の空気や気配が極限まで先鋭化して決壊する。物語全体の緊張度を図にするとこんな感じです。
ずっっと右上がりです。中だるみなし。ラヴクラフトの手腕がいかんなく発揮されていて本当に読みごたえがあります。
そして、多分、映画より面白いです。(映画まだ見てませんが。)ていうか絶対こっちの方が面白いって。(映画まだ見てませんけど。)
まだ読んでいない人は、もしかしたら映画を見てからの方が楽しめるかもしれないです。とりあえず、映画を見る予定で、原作を読んでない人は、どのタイミングでもいいから絶対読んで。お願い。
サザーン・リーチ シリーズ
ラヴクラフトを読み始めたのは「宇宙からの色」を読みたいがためだったので、かなり思い入れが深いお話です。(だから原作をみんな読んでほしい)なぜなら、私が一番好きと言っても過言ではない小説が「宇宙からの色」に影響を受けているという話を耳にしたからです。
その小説はNETFLIXでも話題になった映画「アナイアレイション」の原作、「サザーン・リーチ シリーズ」(ジェフ・ヴァンダミア著)です。読んで驚き、もう、ほんと、設定が激似!でもパクリとかではなく、世界線を踏襲しているという感じ。どちらもバイオSF+ホラーの色が濃く、派手な演出というよりは、徐々に手のつけようのないところまで世界が変質していく過程を淡々としたトーンで描いています。
「サザーン・リーチ シリーズ」は全3巻1300ページ越えで、全然短編ではないので、また別の機会にご紹介できればと思います。(じっとりした沼地に引きずり込まれるような気持ち悪さがあるので、本当に最高です。)
「アナイアレイション」はNETFLIXでしか見ることが出来ませんが、特有のしっとりとした極彩色の世界は一見の価値あり。こちらはキレイ&グロいクリーチャーが出てくるので、クリーチャー好きにもおススメです。この映画も実は「宇宙からの色」にかなり影響を受けていると思います。ビジュアル面しかり、動植物の表現しかり、原作小説にはない描写を「宇宙からの色」から拾い出して、より強固な世界観を獲得しています。
監督のアレックス・ガーランドの前作「エクス・マキナ」は映像は美しいものの、すっきりしすぎて先が読めてしまい、あまりノれなかったのですが、この作品はほどよい混沌が心地よいです。
おまけ
因みに「宇宙からの色」という単語を知ったのは全く別の機会で、日本が誇る3ピースロックバンド「人間椅子」の同名楽曲でした。イントロのリフが宇宙からのテレパシー()ぽくて超かっこいいです。
今度は時間のある時に「アナイアレイション」「サザーン・リーチ」「宇宙からの色」の共通点リストでも作りたいと思います。リンクしている所がわかると、各物語がほかの物語をより深く語ってくれます。こういう世界線を作家たちが共有していると、なんというか、いいですよね。
本日はここまでです。ありがとうございました。