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東京コミュニティスクール(TCS)の見学に行ってきました!
私が新卒で入社したのは人材系ベンチャー企業でした。そこで新人研修を担当してくれていた堀江由香里さんが、現在東京コミュニティスクールの理事長をされているとのことで、見学に伺ってきました。
非常勤講師として授業はさせてもらっているものの、学校や授業研究にどっぷりではない私が、たった数時間の見学でどれだけTCSの実践を捉えることができたのか。私自身の観察力や視点には全然自信がないのですが、それでもせっかく見たこと、感じたことは残しておきたいと思います。
テーマ学習がおもしろい!
私が見学させてもらった中で一番心動かされたのは、5年生7人の「Dear Editor 情報の価値は編集によって変わる。」という90分間の授業でした。
前回の振り返りから
授業の始めに、前回休んでいた子に向けて学んだことを子どもたちが伝える場面がありました。もう、その時点で驚きが・・・まず、とにかくよく手が挙がるんです。実はこれはこの場面だけでなく、見学中ほかの授業でも終始感じていたことでした。基本的に手を挙げる子がとても多く、発言したい!伝えたい!という気持ちがいつも教室中に滲み出ていました。
さらに驚いたのが、子どもたちが伝える姿です。事前に原稿が準備されている訳でも、前回のまとめがどこかに記載されている訳でもない中で、とにかくみんな自分の言葉で話す話す話す!!なんとか自分の言葉で説明しようと記憶と資料を辿りながら言葉を絞り出す姿に言わされている感じが一切なく、彼らが確かに掴みとった学びなんだという感じがしたんです。また、「そんな言葉、自然に出てくる!?」と思うような場面もあり、その語彙力にも圧倒されてしまいました。もちろん話す内容は一人一人少しずつ異なっていて、それらが積み重なっていくうちに前回の授業が網羅されていく。それを担当の先生が「いい感じだねぇ。」と言いながら見守っている。そのLIVE感がたまらなく「わ、すごい・・・」と思わず呟いてしまいました。私が担当している授業で「前回、何を学んだか説明してくれる人いる!?」と聞いたら何人の子が手を挙げてくれるだろう、説明できるほど記憶に、心に残ってる子がどれだけいるだろうと、苦い気持ちにもなりました。
学びの軌跡
教室内に掲示されていた『編集』についてマインドマップのように書かれた模造紙も目に留まりました。『編集』という言葉を起点に広がっていったその軌跡には、「編」「偏」といった漢字から捉えられること、新聞やラジオ、ニュース、テレビ、などのたくさんのメディアについて、髪の毛、手、足などの身体についてなど、多くの言葉が書かれていました。また「顔」の延長線上には「整形」という文字もあり、ただ模造紙を眺めていただけの私ですら「なるほど、整形も編集の一つだ!」と思わず膝を打ってしまいました。
編集をやってみる
前回を振り返りながら、「編集とは何か」を掴んだその後には、子どもたちは学んでいた部屋を出て3・4年生が学んでいるテーマ学習を取材しに行きました。同じ場面のどこを切り取り、何を掴むのか。3・4年生の様子を見ながらワークシートにメモしていく子どもたち。私自身がこのテーマ学習を見ながらずっとメモをしていたので、私もまた取材をしているのだと背筋が伸びる思いがしました。
取材を終えた子どもたち、今度は自分が観たことを作文用紙に記事としてまとめることになりました。ここでいったん私は別室の授業を見学しに行ってしまったのですが、戻ってきた時には書き終えた作文を先生が読み始めていました。同じ授業を観察していても、授業内容に注目する子、話を聞いていない子たちを否定的に見る子、聞いていない子に注目しつつも肯定的に見る子、読み手を意識している子など。まさに、情報の価値は編集によって変わるということを実感する時間でした。子どもたちからも「同じのを見たのに主張が違う!」という気づきが呟かれていました。
印象的だったのは、この記事をTCS外に向けて書くと読み手まで想定して書いていた子の「そんな内容(話を聞いていない子がいたこと)を書いたらTCSの信頼を失ってしまう。」という発言に対して、「そんなこと関係ないと思う。」と言った子がいたことです。情報の受け取り手に合わせて編集は変えるべきなのか。という問いが生まれた瞬間でした。そのやりとりに対して、担当の先生がご自身のデンマークでの経験(日本の選挙の滑稽さを伝える映画を上映したら現地で日本人に怒られてしまった話)を話していました。先生も子どももニックネームで呼び合っているTCSでは、関係性がみなフラットで「自分はこう思う。」「こんな経験をしたことがある。」ということを、いつでも声に出し合っているのだと思います。
テーマ学習のおもしろさ
また、こんな場面もありました。「同じ事実に対しても感じ方は一人一人異なる。」ということを話した際に「これまでのテーマ学習だって、きっとみんな受け止め方が違うようね、みんなどれが印象的だった?(楽しかった?だったかも)」と先生が問いかけると、またみんなの手が挙がるんです。「〇〇〇〇、もう一回やりたい!」「〇〇〇〇が楽しかった!」と。数年前に学んだテーマ学習のタイトルを何も見ずに自然と答えられることにも驚きました。それだけ身体に刻み込まれているなんて。テーマ学習の凄さを感じました。
テーマ学習についてはレポートがたくさんあるので、ぜひこちらから。
子どもの姿をどう捉えるか。
椅子の上に膝立ちする、椅子をガタガタする、他のことが気になりだす、おしゃべりする、立ち上がる・・・など、子どもたちのこんな姿も見られました。それに対して「ね、聞いて!」「それはやめよう!」と先生が声をかける場面も。でも、椅子の上に膝立ちするのはよく見ようとするからだったり、突然立ち上がったのは前で書いて説明しようとするからだったりもしたのです。でも、30人以上の教室ではそれらの行動は認められないことがほとんどです。立ち上がったり、何かを触っていると、聞いていないと見なされてしまう。「これ、私だったら注意しちゃうかも・・・」と感じる場面もいくつかありました。TCSの先生方はよっぽどでない限り気にしている様子はありませんでした。私はこれまで子どもの何を見てきたのだろう・・・と、自分の子どもの見つめ方を突きつけられた気がしました。
振り返ると、TCSの子どもたちはすごくリラックスして学んでいたのだと思います。リラックスしていると自然と姿勢が変わるのは当然のことで、それは大人だってそうです・・・(まさに今、このnote記事を書くのにもいろんな座り方で書いています。)そう考えると、姿勢や手元など、表面上に見えることだけで「聞いていない!」と判断するのは先生も子どももすごくストレスフルなのではないかと思います。ただ・・・とは言っても30人以上の教室であちこちおしゃべりだらけだったり、ガタガタ椅子の音がしていたり、立ち歩く子がいたら、それは他の子にとって聞きにくくなるのは確かです。
TCSの学年9人までという人数設定には、一人一人を丁寧に見つめ、共に学んでいくための大切な意味があるのではないかと思います。
今回の見学をどう活かしていくか。
教育の世界に足を踏み入れて15年。SNSの繋がりや数々の記事からオルタナティブスクールの情報だけは入ってくるようになっていました。でも、実際に足を運んで授業を見学させてもらったのは実は今回が初めてでした。教室環境も人数も、そもそも流れている空気や大切にしている価値観も大きく異なるからこそ、実際に足を運んでこそ分かることがたくさんあるということがよく分かりました。
私の場合、Edcampも地域活動もその地域に住んでいる多様な価値観・家庭環境をもつ子供たちのために力を注ぎたいという願いがあります。だからこそ公立にこだわって働いています。TCSで目にした子どもたちのいきいきと手を挙げ発言する姿、安心して言葉にする姿、一人一人とじっくり向き合う先生方の姿を私は自分のフィールドにどう活かしていけるのか。考え続けていきたいと思います。
東京コミュニティスクールの新たな挑戦と募集について
2004年開校から20年、自和自和(じわじわ)」という理念に基づいて、少人数・異年齢の学び、多彩な原体験の機会、体系的にデザインされたテーマ学習(探究)など数々のユニークな特徴を持って、ブレることなく学びを実践してきた東京コミュニティスクールが2025年4月に新しいタイプのフリースクールを立ち上げるそうです!
入学を検討する保護者向け説明会や、スタッフの募集も行っているとのこと!興味のある方はぜひチェックしてみてください♪