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『依存症 ー地域でできる関わり方ー について考えよう』
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こちらの本と共通の友人をきっかけに洋次郎さんに出会ったのは2年前のことです。寝る間も惜しんで読み進めたこの本には、衝撃的なプロフィールに反して決して特別ではない「寂しい」「分かってほしい」「認められたい」という感情が溢れていました。精神科病院入退院48回、刑務所3年服役という経歴にドキッとしながらもオンラインでお話を聞かせていただき、洋次郎さんと共に分かち合う時間を作りたいと関心のある友人に声をかけ、街のカフェで小さなお話会を開きました。2023年1月のことです。
それから1年半。
2024年7月18日、洋次郎さんが東京にいらっしゃるというタイミングで台東区内のコミュニティホスピタル同善病院のコミュニティ支援室所属のあやかさんに声をかけ、『依存症 ー地域でできる関わり方ー について考えよう』という会を開催することになりました。
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当日は平日にも関わらず10人以上の方が参加してくださいました。医療従事者として、家族として、地域活動をする立場として、それぞれの視点から依存症との向き合い方について考えたい、知りたいという方々でした。
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私が特に印象的だったのは、独房での自分自身の身体(心臓)との出会いです。
こんな風にしか生きられない自分を責め、自分を傷つけ蔑み、いなくてもいい存在だと心は感じているのに、身体は一生懸命に生きようとしている。それを自覚した時に「身体に申し訳ない。」という感情が生まれた。
そう話してくれました。その経験をきっかけに心から「変わりたい。」と思ったと。支援者と呼ばれる立場にいる数多くの方が洋次郎さんと出会い、働きかけたはずなのです。でも、一番のきっかけは身体との出会いだった。その事実が私にとって大きな驚きでした。「〇〇で出会った〇〇さんのおかげで、(〇〇さんの言葉がきっかけで)変わろうと思いました。」というストーリーを心のどこかで期待していた自分が恥ずかしくなりました。
もう一つ印象的だったのが自助グループでのことです。
感情の伴った人間としてその場に入れた。
無条件、無償の愛があった。
同じ仲間だと思えてから楽しくなった。
依存症であることを認めても楽しそうに生きていいんだと思えた。
自分の話をひたすらし続けたその先に、相手の話を聞きたいと思うようになった。
支援する側、される側という立場ではなく、”仲間”と思える人との繋がりがいかに洋次郎さんを支えているかが度々伝わってきました。
会が終了した後にも洋次郎さんの周りに集まって質問をする方がたくさんいました。また、著書を持参してくださり私もこちらの本を購入させていただきました。
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今回は「依存症」をテーマに医療現場の方を中心にお話をお聞きしましたが、孤立しがちな子育てや教育現場にも必要な視点がたくさんありました。教育現場の方にもぜひ洋次郎さんの話を聞いてほしいと思います。