便太郎のおもひでぽろぽろ【第13話】 飛び込み営業開始!
翌朝社長に浦東の汇丰大夏(森ビル)まで連行された。
「16時に迎えに来るので上からでも下からでも良いので順番に会社訪問して下さい。」
「それじゃー頑張って下さい。」
そう言い残すと社長は帰っていった。
え?
オレ1人?
最初は一緒に行ったりするんじゃ無いの?
どうやって訪問すんの?
確かに使用期間無しにしてって言いましたが…
もう少しやり方教えてよ〜
う〜ん…
さてどうしよう?
とりあえずロビーの看板と睨めっこ。
どれが日系企業か見て分かるのも有ればわからないのもある。
ん?
待てよ!
ようは航空券売ればいいのである。
別に日系企業に決めつける必要ねーなと言う結論に至った。
よし!
このビルの会社全部まわろっと!
とりあえず上から順番に行く事にした。
エレベーターで最上階へ。
フロアーの奥から順番にピンポ〜ン!
「○%△※。」
「すいませ〜ん!」
「旅行会社なんですけど〜!」
「※〆々&£€。」
やっべー!
全然何言ってっかわかんね〜
「失礼しました〜」
2,3回この不毛なやり取りを繰り返す。
これ無理かも…
と心が折れそうになったその時!
あ!
この会社ちょー大手化粧品メーカーじゃん!
早速、ピンポーン
「ハイ!」
おおお日本語だ!
「あの〜旅行会社の者ですが」
「日本人担当の方いらっしゃいますか?」
「ハイ。少々待ち下さい。」
受付の中国人が出て来て、入り口のロックが解除され中に案内された。
すんげ〜広い応接室に通された。
お茶が出て来た。
「しばらくお待ち下さい。」
10分後。
しーん…静かだ…誰か居るのか?
・・・・・・・・あれ?
・・・・・忘れられてる?
めちゃくちゃ立派なオフィスでさすが大手企業と思ったが、人が居る気配がまるで無いけど…
しかももう20分は待たされてる。
待ちくたびれてウトウトしかけたその時、ガチャっと扉が開いて上品な紳士が現れた。
「お待たせしました。」
「開業準備でバタバタしてて申し訳ありませんでした!」
「約束してましたか?」
「いえ旅行会社ですが飛び込み営業でお邪魔しました。」
「ああそうでしたか?」
「すいませんお待たせして。」
お、好印象!めちゃくちゃ良い人だ!
「実はさっき、社長にここに連れてこられて上から下まで会社訪問しろって言われまして…」
と説明したら凄い食いつて来て、調子に乗って今までの経緯を説明し続けた。
「なかなか面白いですね?」
「出張とかあるのでその時はチケット買いますよ!」
「ありがとうございます♪ 」
「ところで会社のパンフレットとかありますか?」
「パンフレット?」
そんな物無い…
「名刺しか無いんです、すいません。」
「チケット予約の時は、直接私しに電話下さい!」
こうして記念すべき1社目の訪問が終了した。
この会社を出たらもうお昼であった。
とりあえず浦東をぶらぶらして13時過ぎるまで時間潰し。
午後から訪問を開始。
さっきの続きから張り切って行ってみよう~!
ピンポ〜ン!
「ハイ!」
お、また日本語!
日本人のおっさんが出て来た。
地方銀行の代表所で一人駐在だった。
「どーぞどーぞ!」
と中へ案内された。
ここでも、午前中の某化粧品メーカーと同じように、ここまでの経緯を説明した。
ここもなかなか好感。
さ〜調子に乗って来た!
次行ってみよう。
2,3社撃沈したが、日本語話せない受け付けに、日本語で喋り続けたら、困って日本人呼んできてくれた。
そこですかさず名刺交換して事情を説明。ここも好感触。
午後から2社訪問した時点で、16時になっていた。
社長が迎えに来て会社へ戻る。
飛び込み営業初日で手ごたえを掴んだオレ!
会社に戻りパンフレットが無いのでせめて航空券の価格表を作って欲しい事、営業許可証コピーして持参して見せた方が信頼して貰えると説得し準備して貰った。
それをクリアファイルに自分の名刺と一緒に入れて200部作った。
退社したのは22時を過ぎていた。
(てか社長にもう帰れと言われたんですがね🤣)
つづく
【こぼれ話】
2004年当時、確か日本の森ビルの回転ドアに子供が挟まれて死亡する事故があった。その対策として森ビルは全ての回転ドアの使用を禁止した。浦東の森ビル(汇丰大夏)も例外ではなく、当時飛び込み営業を開始した日も、回転ドアの前には安全柵が設けられ、立ち入り禁止になってました。