便太郎のおもひでぽろぽろ【第9話】上海駅
上海駅到着。この頃の上海駅は裏側にバラックが立ち並ぶスラム街に隣接していて治安が悪かった。
スリ、置き引きが横行していて、駅の出口にホテルや白タクの客引き、ビラ配りの怪しい人が大勢スタンばってる。
出ると一気に取り囲まれて、いろいろ質問されるのだが何言ってるか全然わからない…
「どこ行く?」
「ホテルは?」
「どこ泊まる?」
そんな感じの事を言ってたと思う。
だれかれ構わず取り囲み、群がって来るのである。しかも、勝手にポケットやカバンに手を突っ込んでチラシを入れられる。外国人を狙っている訳ではなくターゲットは全人類なのだ!
「オレはスターじゃね〜ぞ!」
「どけぼけ!」
このどさくさでスリにやられるのである。
やっと1面クリアすると2面で物乞いが出現…
子供を抱いたおばあさんがコップを持って現れる。
奴らは機動力が無いので速足で振り切る事が出来るが、
嘘だと思ってもなんかあげちゃうんですよね…
この偽善者野郎の俺!
と同情と自己嫌悪の混ざった複雑な気持ちになる…
1面の客引きゾーンをクリア!
2面の物乞いゾーンをクリア!
ここからは3面のほのぼのゾーンとなる。
タクシー乗り場を抜けて、抱えきれない荷物を持ちながら、
上海に到着したばかりの農民工の群れに交じり地下鉄1号線の上海駅を目指す便太郎!
どいつもこいつもうるさい!!!
いやそうじゃなく、皆、生き生きとして明るかった!!!
きっと好景気に沸く上海ドリームを夢見ているのだろう。
共に頑張ろう!我が同志たちよー!
彼らの行く末を一瞬案じたが、まず自分の心配しないとね。
先に上海に出てきて働いているであろう人が、
到着したばかりの出稼ぎ労働者を出迎えている。
家族連れの親子、夫婦、兄弟、恋人だろうか?
いろいろな人が集う上海駅。
道行く人を見ては、その人の背景をいろいろ妄想…
出迎えに誰も来ていないお兄さんは、
キョロキョロ当たりを見回している。
「@#%#!%&@?」
突然、何か話しかけられた!
全く意味不明の為
「そーりーそーりー」
とかわす。
恐らく道を聞いているのであろうが、分かるわけもなく…
(これ中国あるあるで、いまでも良く道を聞かれる)
そして、ほのぼのゾーンの名物といえばやはり!
新聞売りの独特な掛け声。
「ぽ~いえっぽ~」
(恐らく上海語)
空の領収書を売る人。
「ふぉぴお、ふぉぴお、ふぉぴおやぶやお?」
おそらく時代の波に吞み込まれ、
現在は絶滅してしまったであろう彼らである。
当時は(てか今もであるが)、
出張旅費など会社清算する際、
政府発行のハンコの押してある正式領収書が必要で、
いろんなところで金額の書いていない、
空領収書を売っていたのだが、
実際に買った事ないので、
いくらで売っててどう使うのかは不明である。
外灘に次ぐ、ザ・上海的雰囲気が個人的に大好きだった上海駅なのだ。
ここで上海駅裏について少々…
当時の駅裏(北側)はお茶の問屋街と闇市みたいなマーケット(と呼べるか疑問だが)、ピンクの床屋が立ち並ぶ、かなり刺激的なところだったが、この後1年後くらいに再開発であっという間に取り壊され更地になってしまったのだ。もっと探検しておけばと思い少し残念…
聞いた話によると、
ピンクの床屋は散髪屋ではなく4発屋と界隈の人から呼ばれていたらしい。
なんでもスリガラスの扉を開けるといやらしいおねーさん達がソファーに3~4人座っているらしい。
気に入ったおねーさんを指さし裏口から別室へ向かい、あんな事やこんな事をするらしいのだ。
そんなピンクの床屋が当時の上海には至る所にあり、もはや絶滅したと聞いていたのだが、今年の春節に久しぶりに上海いったらまだ残っててびっくりした!エロは撲滅出来ないようですね。
余談はさておき、話を戻そう。
浦江飯店は、交通の便が悪く偉そうな服務員に怒られてばかりで居心地が悪いので、船長青年酒店へ向かった。
着くとまた無愛想に、そして無慈悲に
「満室ですと」
一言!(実際は満ベッド)
えええまたか…とうなだれていたら、
無愛想な受付が、
「チェックアウトの12時過ぎたら空きが出るからそこで待て!」
「ハイ!待ちます!」
12時過ぎ念願のチェックイン完了。通常の客室ではなく、だだっ広い会議室みたいな部屋に簡易ベッドを並べただけ、30人くらいが一堂に会する緊急対策特別室へ案内された。
通常50元/泊が45元とお得。
「ここしか無いが良いか?」
「よろこんでー!」
この時、残り7万円分のトラベラーズチェックのみ…
ケツがボーボー燃えていた…
どうなる便太郎?
つづく