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1.Bundesliga各クラブの環境的サステナビリティに対する取り組み(前編)

前書き

ある興味深い記事を見つけたのでまとめてみようと思う。
今回書くことにしたお題はタイトルからも分かる通り、1.Bundesliga(ドイツ1部)の各クラブが環境問題、持続可能な社会に向けて取り組んでいることについて。最近ではSDGsという言葉も頻繁に耳にするようになり、筆者自身がドイツに住んでいた時に関心を深めたものでもある。

では、さっそく本題に。

本題

今回は環境的サステナビリティについての情報を収集し、分析するsportspositivesleagues.comというサイトにまとめられていた1つの記事を基に書いていく。

記事では下記の8つの項目で点数をつけ、その合計点を基にランク付けされたものが記載されている。

① クリーンネネルギー
② エネルギー効率
③ 持続可能な輸送手段
④ 使い捨てプラスチックの削減や除去
⑤ 廃棄物管理
⑥ 効率的な水の使用
⑦ 植物性由来/低炭素食の導入
⑧ サステナビリティに関する発信や関与

実際のランクや各クラブの具体的な取り組みへと移る前に、まずはこの8つの項目や各項目の評価基準についてを説明する。

   8つの項目について

①クリーンエネルギー (最大2点)
クリーンエネルギーとは二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)などの有害物質を排出しない、または排出量の少ないエネルギー源のことを言い、再生可能エネルギーとも呼ばれている。主に太陽光発電、水力発電、風力発電、バイオマス発電、地熱発電などがクリーンエネルギーとして挙げられる。 (※1)
ランクではスタジアム及びそれ以外のクラブの敷地内でのクリーンエネルギーの使用率によって与えられる得点が異なり、使用率100%の場合は2点が、40%以上100%未満の場合は1点が、クリーンエネルギーを使用していることが分かる(0%ではない)ものの40%未満の場合は0.5点が与えられ、40%未満でかつクリーンエネルギーの使用、あるいは再生可能な資源からのエネルギー使用がない(0%)場合は0点となる。
今回のランクでは18チーム中10チームが2点を与えられ、残りの8チームが1点を与えられ、全クラブでクリーンエネルギー使用率が40%を上回った。

②エネルギー効率 (最大2点)
システム全体を対象として、投入したエネルギーからシステム内でのエネルギー消費、損失等を差し引いて、正味どれくらいのエネルギーが回収されるかを数値化したものがエネルギー効率となる。(※2)
ランクではクラブが建物/エネルギー管理システム、BREEAM基準(※3)、ESOS準拠(※4)などを通じ、敷地内全体で体系的なエネルギー効率化計画を実施している場合は2点が、エネルギー効率向上のための取り組みが単独 (方針や管理システムは整備されていない) で行われている場合(例:LED照明)は1点が与えられ、クラブがエネルギー効率の高い取り組みを行っていることを示すことができなければ、0点となる。
今回のランクでは18チーム中10チームが2点が、7チームが1点が与えられ、1チームが0点だった。

③ 持続可能な輸送手段 (最大2点+ボーナス1点)
ファンやスタッフが持続可能な輸送手段 (例:公共交通機関、徒歩やサイクリングなどのアクティブトランスポート(※5)、自転車置き場、相乗りなど) を利用することをクラブが積極的かつ目に見える形で提唱し、そのための誘因 (例:ファンゾーン内での無料移動、自転車通勤制度、公共交通機関の割引など) を与えた場合は2点が、クラブがファンやスタッフに持続可能な輸送手段を積極的かつ目に見える形で推奨しているものの、誘因が与えられていない場合は1点が与えられ、ファンやスタッフが持続可能な方法で移動することをクラブが積極的に、あるいは目に見える形で提唱していない場合は0点となる。
また、クラブが試合に訪れるファンがどの交通手段を使用しているかの割合を追跡し、報告している場合は1点のボーナスポイントが与えられる。
今回のランクでは18チーム中8チームに3点が、もう8チームに2点が、1チームに1点が与えられ、0点のチームが1つあった。

④ 使い捨てプラスチックの削減や除去(最大2点)
クラブが組織のすべての敷地内で使い捨てのプラスチックをすでに削減しているか、完全に除去するための方針を持っていたり、体系的な取り組みを現在進行形で行なっている場合は2点が、使い捨てのプラスチックを除去するための取り組みが場当たり的であるか、または個々の製品に焦点を当てているだけである場合は1点が与えられ、クラブが事業活動で使い捨てのプラスチックを削減または除去することができていない場合は0点となる。
今回のランクでは18チーム中6チームに2点が、11チームに1点が与えられ、1チームが0点だった。

⑤ 廃棄物管理 (最大2点)
スタジアム、トレーニング施設、オフィスなど全ての敷地内において廃棄物を削減し、少なくとも95%の廃棄物の処理は埋め立てで行わず、全ての廃棄物がリサイクルされることを保証し、循環型経済の中で機能するような体系的な廃棄物管理プログラムを導入している場合は2点が、クラブが廃棄物(を埋め立て以外で処理するため)の転換/リサイクルシステムを導入しているが、埋め立て地からの転換率が95%に達していない場合、またはシステムがすべての敷地内で運用されていない場合は1点が与えられ、クラブが廃棄物管理プログラムを持っていない場合、またはリサイクルや廃棄物を埋め立て以外の方法で処理する試みをしていない場合は0点となる。
今回のランクでは18チーム中3チームに2点が、13チームに1点が与えられ、2チームが0点となった。

⑥ 効率的な水の使用 (最大2点)
クラブがスタジアム、トレーニング施設、オフィスなど施設内での水の利用量を減らし、水の再利用を可能にするための方針やシステム上の取り組み(水のリサイクルや削減、状況に応じた水の再利用)を実施している場合は2点が、水の節約や再利用のための取り組みが1つまたは2つの分野のみでの分離した取り組みである場合、またクラブの運営全体で行われていない場合は1点が与えられる。上記の方針や取り組みの戦略が策定されているが、まだ実行されていない場合にも1点が与えられる。現時点で水の節約やリサイクルを行なっていないクラブは0点となる。
今回のランクでは18チーム中2チームに2点が、13チームに1点が与えられ、3チームが0点となった。

⑦ プラントベースフード/低炭素食の導入 (最大3点)
プラントベースフードとは全て植物由来原料から作られた食品、またその殆ど大部分が植物由来原料から作られた食品であり、 鉱物、添加物、乳・卵を含む場合もある。一方、その大部分が植物由来原料であっても畜肉及びそのエキス類、また魚介及びそのエキス類を含有するものは含まない、と定義されている。(※6)
低炭素食とは二酸化炭素の排出を最小限に抑える食品で構成された環境に優しい食事方法で、食べることによって排出される温室効果ガスの総量を削減することを目的としている、と定義されている。(※7)
肉を使わないノーミートの食事を積極的に取り入れること、食材を選ぶ際にできる限り地元で生産された食べ物を消費する地産地消をすること、旬の食べ物を生産し消費することを心がける旬産旬消をすること、自然食品やオーガニック食品を選ぶことでフードマイレージ(食材が産地から食される地まで運ばれるまでの輸送に要する燃料や二酸化炭素の排出量をその距離と重量で数値化した指標のこと)を減らし、地元の農漁業の振興に心がけることなどが低炭素食の具体例として挙げられている。(※8)
ランクでは試合時にスタジアムのコンコースでファンに提供するものや施設内でスタッフに提供するものなど全ての施設の選択肢の中に持続可能な方法で調達されたビーガンフードがある場合は3点が、全ての施設ではないものの地元の食材を使ったビーガンフードを提供している場合は2点が、ベジタリアン向けの食材や地元の食材を使用した食品をスタジアムでファンに提供している場合、またはすべての食品が持続可能な方法で調達されている場合は1点が与えられ、食材が持続可能な方法で調達されていない場合や、どの施設においても植物由来の食品の選択肢がない場合は0点となる。
今回のランクでは18チーム中6チームに3点が、11チームに2点が与えられ、1チームが0点となった。

⑧ サステナビリティに関しての発信や関与 (最大3点+ボーナス2点)
クラブが公表されたサステナビリティの方針や戦略を持っていて、長期的かつ全体的なサステナビリティの取り組みへの公約を示していて、この方針と関連する取り組みはがクラブのメインウェブサイトの常設ページで公開されている場合は3点が、気候やサステナビリティについてのクラブニュースやキャンペーンを定期的に発行している場合、クラブのウェブサイトにサステナビリティに焦点を当てたページがあり、サステナビリティや気候変動に焦点を当てたキャンペーンを紹介している場合、クラブがサステナビリティに関する方針を持っているが、クラブのメインウェブサイトのナビゲーションバーから簡単にアクセスできない場合は2点が、過去6カ月間に気候変動や環境、サステナビリティに関するクラブニュースを発信した場合は1点が与えられ、クラブがクラブの広報チャンネルやニュース記事を通じてサステナビリティについて積極的に発信していない場合、または発信が6ヶ月以上前のものである場合は0点となる。
また、クラブがファンに積極的に働きかけ、生活の中で環境への影響を減らすような前向きな行動を起こさせた場合、クラブが国連の「スポーツを通じた気候行動枠組み」(※9) に署名している場合はそれぞれ1点のボーナスポイントが与えられる。
今回のランクでは18チーム中2チームに5点が、5チームに4点が、4チームに3点が、3チームに2点が、2チームに1点が与えられ、2チームが0点となった。

後編ではランキングと共に、各クラブの具体的な取り組みやそこから考えられることについてを書いていく。

※1 https://gooddo.jp/magazine/clean_energy/6846/
※2 https://www.env.go.jp/council/former2013/03haiki/y0314-05/ref02.pdf
※3 https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieiej/34/6/34_357/_pdf/-char/en
※4 https://www.gov.uk/guidance/energy-savings-opportunity-scheme-esos
※5 https://www.isglobal.org/en/healthisglobal/-/custom-blog-portlet/actividad-fisica-transporte-publico-y-transporte-activo-una-combinacion-con-muchos-beneficios-para-la-salud/6712348/0
※6 https://greenculture.co.jp/2020/09/16/pbf-definition/
※7 https://www.lowlyfood.com/what-is-the-low-carbon-diet/
※8 https://www.jp.seicho-no-ie.org/active/meal/
※9 https://www.unic.or.jp/files/c6509b8eadff5384180a1fd439669a4b.pdf





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