SNSをキメた市長が敢えて言わない事

イキり散らかすのは勝手だが、意外と醒めた目で見ている人も多いんですよ。

兵庫の風雲児?

昨年辺りから、メディア露出が爆発的に増えた地方自治体の首長がいる。明石市の泉市長という方だ。
政府(というより財務省に逆らえない総務省)の方針で漸減されつつある地方交付税交付金などをやりくりしながら、子育て支援施策に多くの予算を割り振るという大胆な市財政政策により子育て世代の圧倒的支持を受けており、その余勢を駆って自らの同志を次期市議選候補として複数擁立しようとしている、今最もホットな地方自治体首長の一人といえるだろう。

…とはいえ、彼に対する反対意見もなくはない。
まず、この方はTwitterを見ている限り、日本維新の会に対する反感が相当強いと思しき言動が多々見受けられるのだが、御世辞にもその政治手法は「仮想敵を作って耳目を集める」という維新の会が良く行う方法論(もっと遡れば2005年の郵政選挙で自民党がやった手法)と酷似している点である。

そして、地方自治体の財政では止むおえない部分であるが、どうしても重点的に手当をした反動を押し付けられる部分が存在するのだが、それを公共工事部門に相当押し付けた格好になっている点だ。
本人曰く「非効率や無駄を省いただけ」という維新の会チックな言い訳をしているのだが、旧民主党系(菅グループ)にいたという彼の政治的出自を考えると「本当にそれがホンネ?(ただの土建ヘイトじゃないの?)」と穿った見方をしてしまう。
ただの穿った見方であればよいのだが…。

とはいえ、彼の「子育て世代支援ガン振り政策」は少子化対策が昭和の時代から叫ばれ続けている現状においては極めて注目すべきだろうと考えていた、そう一時期までは。

持てる者というのは持たざる者の心が理解できない

自分の穿った見方が疑念に変わったのが、昨年9月に開業した西九州新幹線について「地元土建屋だけ儲かるこんな無駄なモノ作りやがって」みたいなツイートを見てからだ。

確かに西九州新幹線というのは計画段階から二転三転するルート設定、着工、そして部分開業と極めて政治的な産物であり、肥前三大都市圏(長崎、佐賀、佐世保)の相互の綱引きやら様々な出来事の末に生まれた鬼っ子的存在である。
(詳しくは西九州新幹線の歴史とかで検索をかけて見て下さい。地方特有のドロドロが垣間見えます)

彼の様な完全外部の人間であれば、「九州新幹線にも接続しない、利便性もへったくれもない新幹線など無用の長物」に見えるだろうし、実際に現状は無用の長物呼ばわりされても当然である。ましてや、彼のリベラルに寄った?政治的価値観からすると、建設業者を儲けさせるなど「税金の無駄」で以ての外の行為に映るのは仕方がないのかもしれない。

勿論、そういう意見を持つのは政治的思想の自由が保障されている我が国においては自由である。但し、彼を含むリベラルな政治思想を持たれる方々は「コンクリートから人へ」の時といい、往々にして「その建設業者も多くは選挙権を持つ日本人」という現実を直視していないように見受けられる。
(ここら辺りの職業蔑視的な下品な発言の多さが、未だに革新勢力が政治的メインストリームになれない原因の一つなんだろうが、それはまた後で記載したいと思う。)

泉市長が敢えて言わない事

ここからは個人的私見に過ぎないが、このような発言をTwitterでやってしまってプチ炎上してしまったのは、彼は首長を務める明石市の立地的優位性を自覚していなかった?というより、自覚した上で敢えて言わないからでは?と思えてしまったからだ。
海路においては明石海峡があり、鉄道に関しては山陽本線に面して山陽新幹線沿線(西明石駅は新幹線停車駅)があり、陸上では神戸淡路鳴門自動車道と山陽自動車道が接続するという、現代日本の交通の要衝である。
しかも、周辺自治体は東に20kmには人口150万の神戸市があり、西においては高砂市や加古川市、そして姫路市があるという働く場所にも困らない立地…。

ここまで考えると、「そりゃ子育て支援施策にガン振りしても支障ないよな。同規模の地方自治体だと企業誘致やインフラ整備に予算取られるんだから」という醒めた感想も生まれてくるだろう。
露悪的なアンチからは「上部地方公共団体や周辺自治体の企業誘致・定着努力やインフラ整備にフリーライドしながら、周辺自治体の人口と税収を奪っている」と突っ込まれかねない危険性をはらんでいるのではないか、と老婆心ながらも心配せざるをえない。

結論。

果たして彼の施策を手放しで褒めてよいものか?とまで考えてしまうのだが、個人的には3割自治と揶揄される地方自治体の中では最も首長の色が出ていると思うし、彼自身の言動の過激さと政治手法故に敵を作りやすく毀誉褒貶甚だしいという心配はあるものの、子育て世代を大切にしようという世間の風潮が生まれつつある中での実現化、そして彼を選挙で当選させた明石市民の慧眼に敬意を表し、拙文を締めさせて頂きたいと思います。

(但し、この施策を行える地方自治体は立地及び産業に相当厳しい縛りがあり、周辺自治体に恵まれる、という制約があるが。)

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