『なにもこわいことはない』斎藤久志監督のことば
2013年公開当時に作成したプレスシートより、斎藤久志監督のことばを紹介いたします。
お化けやホラー映画のたぐいが怖くない。怖がれる人を羨ましいと思う。
なんかそれで人生を損した気になっていた。
だけども子供の頃、死ぬ事を考えると、眠れなくなった。
自分という存在が「無」になること。思う事も考える事もなくなると思うと怖くなった。
今考えると、なんて強い自意識なんだと思う。
今は、嫌われるのが怖い。その為に相手の顔色ばかりうかがってしまう。
自分のままで相手と一緒にいることなんて出来るだろうか、と思う。
嫌いになるのが怖い。人は馴れる。飽きる。
好きになった相手をずっと好きだなんてあるだろうか、と思う。
これも自意識の強さなんだと思う。だったら独りでいいじゃないかと考えるけど、それでも誰かと一緒にいることを望んでしまう。簡単に言うと独りは「淋しい」んだと思う。
ではどうしたら人は「安心」するのか?
そんな事を考えながら夫婦の話をやろうと思いました。
でもどうやら、夫婦でも「淋しい」ようです。ならば人はなぜ夫婦になるのでしょう。
夫婦になると何が変わって、何が変わらないのでしょうか。
人は自分と重なる部分が多い人と一緒にいるのでしょうか?
それとも価値観が違うことを面白がって一緒にいるのでしょうか?
目に見える葛藤や事件を起こすのではなく、圧倒的な日常の中にこの夫婦を置いてみました。
だって、良いにつけ悪いにつけ、葛藤や事件があれば人と人の関係はもってしまいます。
「日常」という敵(?)と人は向き合わなければなりません。
これはとても怖いことでした。それと同時に、とても面白かったです。
もしかしたら、怖いことと面白いことは、すごく近いことなのかもしれません。
実を言うと僕は、いまだに死ぬ事を考えると怖くなります。
斎藤久志