頭の中のスパイス箪笥
先日岐阜に行った時立ち寄った薬草の店にて富山の薬売り屋さんが持っていた立派な簞笥が展示してあった。大きなタンスには小さな引き出しが沢山ついていてそれぞれに薬草や漢方の名前が書いてあった。きっとその昔、富山の薬売りは病人が来るとその人に見合った漢方や薬草を引き出しから出してあげて病人に渡してあげたのであろう。そして豊富な知識からその患者に見合った薬を調合していたのであろう。大きな箪笥と小さな沢山の引き出しは富山の薬売りの偉大さと知識の豊富さを表しているようであった。
ついこの間、埼玉県は長瀞にて「かりん」を使ったカレーペーストを作ったのでその新商品の発表会にて実際にカレーを作ってお披露目をしてきた。長年それぞれの庭に放ったらかしにしてあったかりんが日の目を浴びたので町長、副町長をはじめみなさんに喜んで頂けた。そして何よりも嬉しかったのが生産者の方々が我先にとおかわりにやってきてくれたことである。何世代も前に植えられたかりんの木を大切に守ってこられた方々の嬉しそうな顔を見ることができた時、長瀞のかりんのカレーペーストを作って本当に良かったと思った。かりんカレーペーストは2種類、赤いのと黄色いのである。どちらを作るときも私の頭の中のスパイス箪笥から様々な思い出の引き出しや学んできた引き出し、香りの引き出し、知識の引き出しを引っ張り出し、混ぜ合わせ作りあげていったものである。そして出来上がったスパイスのミックスを使って作ったものが喜ばれた時、少しだけ富山の薬売りの気持ちがわかったような気がする。
私たちが見てきたことや、学んできたことが小さな引き出しとなって徐々に増えていくことによって箪笥の大きさも変わっていくのであろう。生まれた時からスパイスは身近にあったものの仕事として携わるようになって約15年。私はどれだけの引き出しを増やしてきてこれたのであろうか。果たして増やしてきた引き出しを活用できているのであろうか。箪笥の引き出しも使わないとあかなくなってしまうように培ってきた知識や経験も使わないと開かなくなってしまう。
困った人が来た時に私の箪笥から引き出してきたスパイス達で問題や課題、要望を解決していきたいものである。そのためにはもっともっと学ばなくてはならないのだと思う。
私の頭の中のスパイス箪笥が大きくなって行けば行くほど人々の役に立つことができるのであろう。
そしてそう願いたいものである。