【海外俳優記】日本脱出
『オレ、バラト行くわ』
『え、意味分からん』
『だから、バラトで映画出るねんて』
誰もピンと来ていなかったが、オレはしっくり来ていた。
親はオレが俳優でやっていくことを良く思わない。だから、別の言い方にしないといけない。
お世話になっていた俳優仲間にも伝えた。日本を出ることを。
みんなピンと来ーへんのよな。バラトって国がまだ未知過ぎて。普通にしてたら日本に情報入ってこーへんから。
妻も始めはピンと来てなかったけど、だんだんピンと来てくれたみたいで、条件付きでOk言うてくれた。
『始めっから俳優でやれるわけないねんから、ちゃんとした仕事見つけてや』
バラト行きを決めたのは自分主催の舞台をやったのがきっかけやった。舞台が終わったとき、次はバラトの映画に出よう、ってなった。
この舞台が大赤字になって、金返さなってなって外資に就職した。一旦俳優の仕事から距離を置くことにした。
即効、バラトで仕事見つけてバラトに引っ越しや、って思ったけど英語を使った仕事をした経歴がないとバラトで就職は難しいってエージェントに言われた。
とにかく、バラトに行く為に一年は日本で外資で働こうと思った。
『バラトに行くことを目標としています。これからよろしくお願い致します。』新入社員は自己紹介文を全社員に送る必要がある。
この紹介文を送った1年後にバラト行きが決まった。この会社を辞める時にオレの紹介文を覚えてくれてた方がいて、本当に自分の目標を1年後に達成するなんて凄い、って言ってもらった。
計画通り、1年間英語を使った仕事をし、バラトでの仕事を手に入れた。
妻は仕事をしていたのに、バラト行きの為に仕事を辞めてくれた。
もう何が何でも映画に出るしかない。
なぜか妻の会社の妻の送別会にオレも行った。
お互いの両親には仕事がバラトで決まったせいでバラトに引っ越しする、って説明した。俳優でやっていきたいとは、とてもじゃないが言えなかった。
俳優として大成するまで帰らんぞ!
覚悟を決めて妻と日本を出た。
深夜1am頃バラトに着いた。ここから全て始まるのを感じた。
とりあえず月々の収入とビザは手に入れた。後はどうやって俳優の仕事を見つけるか。
スタンダップコメディーに挑戦してみることにした。
この国だけではなく、日本以外では漫才はなく、一人の漫談『スタンダップコメディー』が人気である。
妻が台本を書いてくれた。
ウケた。この国の人とオレ、かなり相性が良いと。なんかオレの見た目だけでオモシロイみたい。
もしかしたらイケるかも。そんな歯ごたえがあった。
そしてこの国での3ヶ月の生活が経とうとした時、オレは仕事をクビになった。。揉め事を起こしてしまった。妻はオレは悪くないって言ってくれた。
仕事がクビになると言うことは、ビザがなくなるということ。海外長期滞在の為にはパスポート以外にビザがいる。たった3ヶ月でまた日本に戻ることになってしまった。親に何て説明しよ。。(日本脱出➁に続く)
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