対比が見事だった『ススメ!シンデレラロード 高橋礼子 / 首藤葵』。
2024年4月4日15時から『アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ』(以下『デレステ』)にて開催されているイベント『ススメ!シンデレラロード』のイベントコミュを全て読んだのでその感想を書き連ねることにする。
<高橋礼子 編>
冒頭礼子さんが行きつけのバーでマスターからカクテルを受け取るシーンからスタートする。
そのカクテルの名は『マンハッタン』。
カクテル言葉は「切ない恋心」。
おや?礼子さんらしくもない。
と思いきや、その異名は「カクテルの女王」。
なるほど、そちらでしたか。
古参ファンには堪らない、『アイドルマスターシンデレラガールズ』初期ユニットである『レッドバラード』がのっけから勢揃いする。
5人が5人、お互いをリスペクトし合って高め合う、強力無比なクールビューティークインテット。
今回の記事のサムネイルにもしているイベントスチルは、アイドルユニットの枠を飛び越えてもはやスーパー戦隊シリーズのレッド大集合の風格すらある。
礼子さんはパーティーが大好き。
それは彼女の元ネタとなっている『アイドルマスター』765オールスターのひとり、三浦あずさ役のたかはし智秋さんのお約束挨拶だった「ジューシーポーリー(パーティー)イェイ」に由来する。
レッドバラードで礼子さんの他にパーティー慣れしているのは良家の出身である千秋さんなのだが、虚飾を嫌う彼女はパーティーが苦手。
そんなパーティーの中、礼子さんの昔馴染みである資産家男性が登場。
「アイドルなんて子供だましでくだらない。君ならばもっとふさわしい活躍の場がある。私ならそれを用意できる」
これはこれはまあまあ。
なんとも使い古されたアイドルディスりと見え見えの下心ですこと。
それに対し礼子さんは激昂もせず相手をたしなめもせず、ひとまず「どうしようかしら?(/ω・\)チラッ」と態度を保留。
まったく悪い大人やで!
女豹ですわ女豹。
早速資産家男性による引き抜き&根回し工作がスタート。
汚い!カネ持ち汚い!
男なら自分の魅力だけで勝負しろよなあ!
しかしそれすら面白がる礼子さんに親友の柊志乃さんは「そういうことにしておいてあげる」と溜め息混じり。
ところで礼子さんのイベントSRのお召し物、志乃さんといわゆる「双子コーデ」に近いのってお気付きになりました?
ぷちデレラの方が分かりやすい。
尊いなあもう!
事態が急激に動き出したのはプロデューサーとの会話を盗み聞きしていた桐野アヤが他のメンバーに相談してから。
なのに礼子さんはこの期に及んでまーだ「私を求めて引き止めてくれるなんて。あぁ、ゾクゾクしちゃう……♪」などと余裕の構え。
志乃さんのみならず呆れてしまう難儀な性格。
いやもはや「癖(へき)」か。
これが冒頭のバーでマスターに言っていた「いいこと」の正体。
高橋礼子は求められれば求められるほど輝くオンナなのだ。
とはいえ、当の本人と志乃さん以外はとても冷静ではいられない。
あの東郷あいさんですら「私たちを置いて本当に辞めてしまうのかい?この5人でやれることも、やりたいことも、まだたくさんあるというのに」と脆さを垣間見せる。
高橋礼子の存在が『レッドバラード』にとっていかに大きいかを思い知らされる。
されどさすがの礼子さんもすっかり出来上がってしまった千秋さんの様子を見せられた挙げ句、ちなったんに「めっ!」されては白旗。
乱痴気騒ぎの翌朝目覚めると、彼女の元にはメンバー4人それぞれからのプレゼントが。
これにて高橋礼子、完全敗北。
余談ですけど、あいさんがお酒に弱いのめっちゃかわいくないですか!?
あんなにイケメンなのに!
このコミュには遊佐こずえ、大槻唯、水野翠、龍崎薫も登場。
各々桐野アヤ、相川千夏、黒川千秋、東郷あいに対応したベストパートナーポジション。
礼子さんの相方はもちろん志乃さん。
ちなみに
桐野アヤ&遊佐こずえ=『ピッコラ・マリオネッタ』
相川千夏&大槻唯=『サクラブロッサム』
黒川千秋&水野翠=『ブリヤントノワール』
東郷あい&龍崎薫=『ギャラント・ナイツ』
高橋礼子&柊志乃=『ベター・グロウ』or『酒場のドランカー』
となる。
ご存知ですよね?
こういうファンサービスは非常にありがたいし嬉しいものだ。
翠もお嬢様なのは意外と知らない人も多いのでは?
知れば知るほど面白くて深みにハマる。
それが『アイドルマスターシンデレラガールズ』。
かくして礼子さん主催のパーティーにて『レッドバラード』の圧巻のパフォーマンスと魅力を見せ付けられて打ちのめされた資産家男性の目論見はあえなく霧散。
「彼女は孤高の魅惑の蝶だった」とかなんとか言うとりますが、今では彼女は346プロダクションの女豹ですから!
なにはともあれ、『レッドバラード』のユニットとしての力を存分に見せ付け、礼子さんの悪い大人ぶりを含めた存在の大きさを知らしめたストーリーだった。
あ。
最後にこれだけは言わせて!
ちなったん胸元開け過ぎィ!
どうしちゃったのォ!?
何か言ってやって唯!
……唯?
どうしたボーッとして。
<首藤葵 編>
高橋礼子さんの方のユニットは『レッドバラード』だったが、こちらは『センゴク☆華☆ランブ』。
プロデューサーは『センゴク☆華☆ランブ』について「伝統や和の心を重んじ、人々を元気にさせるパワフルさを持っている」と評した。
元々は葵ひとりに「温泉街を盛り上げてもらいたい」とTV局から来た町興し企画オファーだったが、葵本人の強い希望により、ユニットでのお仕事となった。
浜口あやめは葵のことを「礼節と和の心がずば抜けている。私も学ばねば」と絶賛。
その言葉に喜ぶ葵だったが、彼女は内心に深刻な悩みを抱えていた。
「極める」とは。
「両立」とは。
首藤葵は「アイドル」と「料亭の娘」という2つの顔を持つ。
それら2つを同時に「極める」ことは可能なのか。
「両立」と言えば聞こえはいいが、それは結局どっち付かずのではないか、と。
現地に着いて早々、歓迎ムードの中、葵はひとりの少女に罵倒されることになる。
「料亭の娘なら自分の家を盛り上げろ。町興しなんて所詮アイドルたちが帰ってしまえばすぐに元通りだ」と。
その少女は奇しくも『センゴク☆華☆ランブ』の宿泊先の宿の娘だった。
料亭の娘と宿の娘、商売こそ違えど立場は似通っていた。
ただ明確に違ったのは、葵はアイドルで少女は普通の学生であることだ。
痛い所を突かれた葵。
そこで動いたのは脇山珠美だった。
自身にも噛み付いてきた少女にも珠美は動じず、「経験則」を説く。
その「経験則」はまさに彼女が星輝子、小関麗奈との『SOUL LEATHERS』で得た経験だった。
珠美は葵に言う。
「ユニットなのだから溜め込まずに吐き出してください」、と。
次に動いたのは浜口あやめだ。
「『忍気』を感じた」との謎の言葉とともに宿の娘の隠れ身の術(?)を見破り、忍法・読心術からの影走り。
少女は思わず心から「忍びだ……」と漏らす。
あやめ、いつの間にホンモノになってたんだ。
町興し企画のメインイベントは史跡での野外LIVEに決まった。
LIVEチケットと宿泊券をセット販売するなんとも上手い戦略だ。
『センゴク☆華☆ランブ』の本気の熱意に打たれて改心した宿の娘のアイデアによるコラボ衣装も大好評を博した。
結果として全てが上手く行った。
丹羽仁美が大西由里子を「師匠」と仰いでいたり、池袋晶葉が葵とのデレステの営業コミュ『父に贈る献立』での思い出を持ち出したり、『信長のシェフ』ネタがあったり、と実に小ネタも効いていた。
が、それよりなにより。
私がこのストーリーで最も驚いたのは、葵のアイドルに対しての考え方だった。
「アイドルは……一瞬だけ」
「あたしたちは調味料」
「アイドルはきっかけ」
これらは全て葵の台詞である。
普段の明るい彼女の姿からは想像もつかない達観だ。
我々は「首藤葵」というアイドルを見る目を改める必要がある。
アイドルが一瞬の存在であればこそ、我々は今後首藤葵の一挙手一投足を見逃してはならない。
私は先日の「『ススメ!シンデレラロード』の足跡を振り返って分かったあれこれ。」記事において同じアイドルが2回シンデレラロードに採用されることに疑問を呈したが、今回のコミュを読んだ今、葵シナリオを2回やった意義があったと認めざるを得ない。
本当に読めて良かった。
<終わりに>
高橋礼子と首藤葵。
今回のシンデレラロードのイベントコミュを読み、それぞれユニットとその仲間を大切に想う点は共通していた。
しかしアイドル活動に対するスタンスには明確な隔たりがあった。
それは単に年齢や人生経験の差から来るものではない。
なんならアイドルとしての経験なら葵の方が一日の長があるとすら言えるからだ。→ 参照『「先輩」と聞いて連想するアイドルは?』
イベントSRで彼女たちはそれぞれ遠い空を眺めている。
だが礼子さんは余裕たっぷりで、葵の表情は憂いを帯びていた。
人間性から来る対比。
改めて痛感した。
まだまだまだまだ、アイドルたちについて知らない面がある。
しかもたくさん。
もっと知りたい。
「もっともっと『ススメ!シンデレラロード』のストーリーを読みたい!」と思わせられる2篇だった。
まさに併せて読むことで得られた相乗効果だった。