虫の居所。:FGOイベント『妖精双六虫籠遊戯 まだ見ぬ完璧なあなたへ』
『Fate/Grand Order』(以下『FGO』)の期間限定イベント『妖精双六虫籠遊戯 まだ見ぬ完璧なあなたへ』をオールクリアしたのでその感想などを記す。
今回ミッションはストーリー進行のために必要な分で大部分が賄え、これまでのような低難易度フリークエストをたくさん周回する必要がなかったのは実に親切設計。
高難易度クエストのサクラファイブラッシュも凸配布イベント特攻礼装を持たせた水着伊吹童子をいつものアーツサポーターズで守りつつ宝具を回していたら3~4ターンで終了。
まずイベント概要を事前放送で目にし、すわ「もしかしてサプライズ『聖杯戦線』か!?勘弁してくれ!」と危惧したのだがそうではなくて一安心。
ただのボードゲーム仕立てだった。
場所はゴルドルフ新所長の隠れ家。
艦内見取り図にはない施設の隙間にある屋根裏部屋のようなスペースを巧みに利用したらしいが、きっとネモとかにはもうバレてる。
メンバーはマスターとカドック・ゼムルプス。
それにオベロン。
ほらー、内緒のはずなのにすでにいるー。
なんやかんやありつつもボドゲスタート。
ん?
カズラドロップのカード?
あれよあれよという間にメンバーは小さくされて彼女の「虫空間」に。
なんでもそこは固有結界レベルらしい。
オベロンは逃げようとしたがマスターが引きずり込んだナイス!
それにしてもカズラドロップ、おまえ本当に★5サーヴァントとして実装されたんだなよかったな!
私はてっきりアレはフリで、意地の悪い運営がカズラドロップを配布★4、ガチャ産★5はヴァイオレットにするとか予想してたのに!
しかも面白いオンリーワンの性能してるじゃないの。
報われたなあ。
そのカズラドロップ曰く、ムリアンはハイ・サーヴァントとしての構成要素の1つに過ぎず、面識はないとのこと。
でも霊衣でムリアンになれるのはめっちゃ嬉しい!
そしてマスターのことをまだ認めていないと。
なんでも本当に頼れて尊敬できる憧れの保護者、すなわち「完璧なパパ」でなくてはその資格がないと。
よってパーフェクトファーザーグランプリ『ただしいパパレース』開催決定ドンドンパフパフ~!
クリアしないかぎり永遠に虫空間を彷徨い続けることになる、認定されるためのデスゲーム、はじまります!
舞台は一件の家を模した双六ボード。
チェックポイントで「パパチェック」を受け、評価点が与えられる。
双六だが競争ではなく、3人1チームとして完走を目指す。
「デスゲーム」とはいえ不合格でも死亡することなく振り出しに戻る。
レース参加証兼システムに直結した得点記録カードを渡されいざスタート。
尚、得点の内訳は発表されない。
この世界ではサーヴァントは簡易召喚以外では喚べない仕様。
コースはやけに生活感に溢れており、「自分たちが日常から切り離されてしまった感」を痛感する性格の悪さ。
カズラドロップは見た目は小さいが実際には巨大サイズであり、虫空間では彼女以外の生物は均等に小さくなる。
チェックポイントは5つ。
1. 料理チェック
初回はゴッフのエッグベネディクトで75点。
堅実で慎重なカドックと閃きで動くマスターは実はいいコンビ。
2. おでかけセンスチェック
初回は遊園地に行ったらピエロのメフィストフェレスが大暴れしたりして81点。
3. お掃除チェック
それぞれのエプロンの立ち絵が登場。
『とらドラ!』の「高須棒」よろしく「ゼムルプス棒」が登場するも制限時間に泣かされ初回85点。
後に「エミヤ棒」も登場しかけた。
4. サウナ我慢チェック
オベロン真っ先に離脱。
カズラドロップは身体に障壁を張って熱気を遮断していた。
初回67点。
5. プレゼントセンスチェック
初回はカドックが実用的かつ手作りの特別感がある特製の獣除けを渡すも62点。
ちなみにゴッフのスーパーカーの模型は50点、マスターのフォウくんぬいぐるみは80点、オベロンの森の花で作った王冠は78点だった。
初回の合計点は385点で7割は超えたのだが、なんと合格点はオール満点の500点であることがゴール後に判明した。
カズラドロップはこの結果に「思ったよりダメでしたね。難易度が高すぎたんでしょうか。何かお助けアイテム的なものが必要なのかも。甘やかすのはダメでも、成長のためには……」と語った。
この「成長」こそがキーワードだったのだ。
2周目。
黒オベロンが令呪システムを利用してバランス調整を施す。
カズラドロップは「やってくれましたね」と怒り心頭。
システムがアップデートされ、「お助けカード」が導入された。
双六の最中に白紙カードを入手でき、マスターの簡易召喚と合わせて使えばアドバイスサーヴァントカードになり、会話専用窓口として3枚まで利用可能。
1つのチェックポイントで使えるのは1枚だけで使い捨てで、BBやサクラファイブは禁止カード扱い。
1. 料理チェック
執事力を買われてエミヤが召喚されるも彼に子供がいないことに驚く一同。
そりゃそうでしょうよ。
古参サーヴァントなのに未だに過去に謎が多い。
カズラドロップに自分で盛り付ける手法もあってか92点。
「食べさせる相手のことを考えること」が料理にとって一番大事との金言。
アニメ『衛宮さんちの今日のごはん』2期お待ちしております。
2. おでかけセンスチェック
アウトドア系パパジェロニモを招いての焚き火パーティー。
カドックの父は会話らしい会話もせず息子に淡々と引き継ぎマニュアル通りに魔術を教えて用が済んだらいなくなったことや、マスターの家庭はなかなか言葉で説明できないものだったなどのエピソードも披露された。
火起こしはカドックが、肉焼きはゴッフが行ない、カズラドロップも枝集めを手伝って疲れたのか最後はオベロンの肩にもたれかかって寝落ち。
盛り上がったのだが70点に下がってしまった。
ジェロニモは「このレースにおける設問は何かがおかしい。ズレている。本質が隠されている」と語った。
3. お掃除チェック
ダイジェスト扱いも助っ人なしで89点と高得点。
4. サウナ我慢チェック
精神修行といえばこの人、と柳生但馬守宗矩召喚。
息子・十兵衛、父・宗厳(石舟斎)と親子三代に渡っての英霊クラス家系。
前回よりもちょっと長く耐えて75点。
オベロンの値踏みをも看破し、「何を為すかこそが肝要」だと言い残して彼は去った。
それにしても日本には平安時代から蒸し風呂が存在していたのには驚かされた。
5. プレゼントセンスチェック
最高得点はマスターのコンのぬいぐるみの78点だったが、「他のサクラファイブが好きだから」の一言で台無しに。
2周目の合計点は404点でまたしても振り出しへと戻され、オベロンは「遠い知人(ムリアン)に敬意を払って黙って付き合うのは2度までだと決めてた」と次からは味方になることに。
「一旦点数のことは忘れよう」と彼は切り出し、「カズラドロップの秘密を曝くこと」に設定して動くことを提案。
「カズラドロップは何を重視してその点をつけているのか」が焦点に。
3周目はお助けカードが2枚になる(オベロンは知っていた)こととなり、マスターはウィリアム・テルと黄飛虎を助っ人とすることを決めた。
3周目。
1. 料理チェック
歯が融けそうなほど甘いシュトレンで75点も、甘ければ点数が上がるわけではないことが判明して収穫あり顔の一行をカズラドロップは不思議そうに観ていた。
2. おでかけセンスチェック
ゴーカート場でマスター&カズラドロップはゴッフに敗れるも91点。
黄飛虎の息子たちの「父上と共にいられる場所」が大いにヒントに。
ジェロニモと同じ負い目を持つ彼自身も「子を想うこと」こそ常に持っているべき考えだとした。
3. お掃除チェック
「いらなそうなものは壊して外に捨てる」という感情揺さぶる「ゴッフパンチ浄化作戦」を決行、カズラドロップがルール違反しそうになるほどに最悪な反応と点数(50点)を叩き出す。
4. サウナ我慢チェック
テルは「子供をよく見ろ」と言い、親なら都度都度の状態を知っておくべきだとした。
彼はまた「色々な理由と望みが混ざり合っての今」だと分析、カズラドロップが「自分と同じであってほしい」と願う目をしていると見抜いた。
70点。
5. プレゼントセンスチェック
カドックのヴィぬいぐるみが68点で最高(カドアナてぇてぇ)。
3周目は合計354点で、4周目は「お助けカード」が1枚に。
カズラドロップの根底には「夢見る子供」がおり、その採点基準は「彼女が望むもの」であることが判明。
彼女のとっての「パパ」とは、BBと共に彼女が生まれることになった要因の1つ、すなわち人類であることも合わせて分かった。
つまりはこれは「カズラドロップがマスターたちに何を望むのか」を純粋に読み取るレースであり、どれだけ特殊なものに思えたとしても全て彼女専用の答えを出すことが正解。
4周目。
1. 料理チェック
ゴッフ謹製真円パンケーキ(おかわりいっぱい)で100点。
2. おでかけセンスチェック
どこにも出かけず一緒に双六で100点。
3. お掃除チェック
カズラドロップが「そもそも汚いものを見るのが嫌」ということで水着シャルロット・コルデー(キャスター)の手品で消失させ100点。
ここでカズラドロップというものを構成する絶対的な誤魔化すことの出来ない特性「潔癖症」が明らかになり、カードの名称が『Secret Garden(秘密の花園)』へと変化。
得点記録カードは虫空間システムの一部であり、本人とも繋がっていたのだ。
4. サウナ我慢チェック
勝負をキャンセルし、代わりに自分のことを弱いと思っていて強いものが怖いと思っているカズラドロップの「加虐趣味」を指摘して100点。
それは彼女が常に秘めている強者への恐れと怨みであり、自分が受けている苦しみを他人にも味わせることでストレスを発散させて立場が逆転することに興奮する性質。
なのでここの正解は「一緒に弱いままそばにいてくれるパパ」。
5. プレゼントセンスチェック
100%カズラドロップに寄り添うマスターは、プレゼントに何が欲しいかを直接彼女に問う。
問いかけそのものもプレゼントの一部扱いであり、見事100点を獲得。
これにてついにオール満点……と思いきやカウンターをストップさせてカズラドロップが逃亡。
カズラドロップは「完璧たらんとする私を生んだ存在であるのに完璧じゃないことが我慢ならないからアナタたちもそうなってほしい、そうでなくては私がアナタたちを愛しているという矛盾を埋められない」と心情を吐露。
彼女は完璧という理想を求めているが、そんな完璧(もの)はないと分かった上で完璧なものしか愛したくない。
しかし同時に慈愛から生まれてきたアルターエゴであるため、この世で最も不完全な人間を無条件で愛してしまう。
「完璧な人類(パパ)」ではなく「自分にとっての完璧なマスター(パパ)」を求めていたカズラドロップ。
ただのAIとしてここにいたのなら人類全体に対する教育を始めていたが、今はサーヴァントになってしまった。
人類の管理と教育のために生み出されたはずなのに、それと比べればあまりにも個人的な存在であるサーヴァントに。
サーヴァントとしてのカズラドロップは本来は人類に向けるべき要求をマスターという人間一人に対して向けるようになった。
「人類を完璧な存在にしよう」との願いがあり、その人類の定義を「最後に残ったマスター」なら本当に叶うかもしれないと考えた。
だから実際に教育しようとした。
だがマスターは一人であるがゆえに、その形は個人的な好みとなった。
今回のレースを彼女はAIの責務として開催したと思っているが、それは違う。
これは夢。
人類(ひと)が本当に彼女を理解し、彼女だけの完璧な存在になってくれるという夢。
現代風に置き換えるなら「夢小説」に近い。
自分では気付かないままに全人類用の使命をもってマスターという個人を採点していた。
だから採点基準が壊れていた。
言い換えるならひどいバグ。
バグとウイルス除去が仕事の正常管理のために在るシステムなのに。
父親(人類)に対するエレクトラコンプレックス的な愛。
その裏側に存在する矛盾の解消欲求。
「完璧主義」
それこそがカズラドロップの本質であり、人類全体に向いていた願望をマスター一人に対して個人対個人の関係に強いるようになった要因。
聖杯を使ってまで開催した「パパレース」の正体。
完璧な存在であっても怖いものはあって当然。
そのことを受け入れるべきなのに。
オール満点を達成したにもかかわらずここから出さないとゴネるカズラドロップに、マスターは「完璧じゃなくても外でやらなくちゃいけないことがあるんだ」と優しく言う。
「だいっ嫌い!……でも、好き」
ついに自分の中の矛盾を認めたカズラドロップ。
だが、彼女は彼女自身というバグを消そうとする。
そうはさせじとオベロン(黒)が彼女の夢を引き取り、その時点で「このゲーム全てが本当の夢だった」ことに。
ちなみにオベロンは「嘘を嘘だと思わないタイプ」で、カズラドロップは「自分の嘘が分かってないタイプ」だとか。
なるほど。
エピローグ。
晴れてカズラドロップは偏屈作家キャスター(アンデルセン)の手引きでカルデアに。
これからもマスターが協力する価値のある人類なのか、本当に正しさを持っているのかをテストし続け、将来的には完璧なマスターになってもらうつもりだ。
あれが夢だったことになったとしても。
夢としては憶えているから。
ピックアップ召喚2はないだろう。
そう思わせるまでにカズラドロップに特化した内容だった。
ヴァイオレットの影はシナリオ上どこにもなかった。
彼女は彼女で今回のカズラドロップの実装の流れのように、いずれチョイ役からのメインシナリオが来るのかもしれない。
登場キャラ数を絞りに絞り、他の女性キャラはピンポイント出番のコルデーぐらいで、カズラドロップのみにメインヒロインとしてのスポットライトを当て続けた。
ストーリー演出としてはいわゆる「ループ物」で、記憶を引き継いだままニューゲームに臨むタイプ。
一本道でカタルシスまでは起伏に乏しく、カズラドロップというメインヒロインが肌に合わなければ苦痛でしかない代物ではなかったか。
幸い私にはドストライクツボだったので楽しめましたが。
なんたってCV.山下七海だし!
まさに「飛んで火にいる夏の虫」。
2体目召喚できなさ過ぎて虫の息。
ガチャ運のなさに腹の虫がおさまらない。
「カズラドロップ」という虫籠の中で繰り広げられた人生劇場双六、彼女が好みだった人には天国、そうでない人には虫酸が走った?
運営としてはそれだけの自信を持って送り出したイベントだったと思われるが、みなさんにとってはいかがだっただろうか。
虫が好かないものでしたか?
「蓼食う虫も好き好き」
さてさて。