ふつおたには快感がない。
*個人の意見です。
ふつおたに何らかの意義を見出している方、ふつおたで採用回数を稼いでいる方、などなどいらっしゃると思います。
これはあくまで私個人のこじらせたメール職人の特殊な意見だとあらかじめご了承ください。
「ああ!?なに煽ってんの!?」などと激昂せず、「こんなこと考えてる奴もいるんだあ」、ぐらいにお楽しみくださいませ。
そもそも「ふつおた」とは何の略か。
「普通のおたより」、略して「ふつおた」である。
いわゆるラジオ用語の1つ。
じゃあ「普通じゃないおたより」って何やねん、と思わないではないが、企画コーナーとの分かりやすい差別化なのだろう。
耳にし始めた当初は違和感が強かったし好きではなかったが、やがて私の感覚もすっかり麻痺して今では受け入れてしまっている。
で、どこら辺が「普通」なのかというと、とにかく当たり障りがない。
この場合の「当たり障りがない」がないというのはdisりではなく、正解なのである。
ん?伝わりにくいですか?
ならばこう申し上げましょう。
「当たり障りがないほど採用率が高くなる」と。
そんなわけねーじゃん。
当たり障りなかったらつまんねーじゃん。
そう思うでしょ?
それでいいんです、マジで。
なぜそれでいいかというと、ふつおたにはぶっちゃけ投稿者の主観が邪魔になるからです。
ふつおたのメールは出演者のエピソードトークを引き出すためのきっかけになればそこで全ての役割を終えます。
もしもこんなメールが採用されたとしましょうか。
「こんばんは!この前のライブの〇〇という曲の時の●●さんのダンスがこうで歌い方がこうで表情がこうでアピールがこうで感動してしまいました!あの時歌っていてどうでしたか?」
ってな感じの。
このメールを構成作家なりディレクターなりから託された出演者はきっとこう思うでしょう。
「いや全部言われたんだが!?ここから何を言えと!?」と。
その手のパスが許されるのは●柳徹子ぐらいのもんでしょう。
なので長文のふつおたはまずもって採用されません。
言ってしまえばシンプルであればシンプルであるほど、スリムであればスリムであるほど採用率は高くなります。
先程も申し上げたようにきっかけになればいいのですから。
ふつおたはスイッチ。
コアなメール職人になればなるほど爪痕を残したくなります。
存在証明をブチ上げ、承認欲求を満たしたいのです。
で、投稿者の色全開のふつおたを送ったとします。
まーまず99.9%採用されません。
結局それはその人の感想でしかないからです。
例えば「あの曲を歌っている時の××さんは涙をこらえてましたよね?」と訊いたとしても、本人にしてみれば「いやむしろ笑おうとしてたんだが!?」なんていうことも多々あります。
だったら構成作家もせっかく採用されたメールを否定してその投稿者が恥をかくようなことになるかもしれないのなら、最初からそんな危険性が一切ないものを採用した方が安全です。
こうして様々な可能性に配慮された結果、ふつおたは味も素っ気もないどこにでもあるテイストのもので溢れ返ることになったのです。
私はコアなメール職人側の人間です。
爪痕を残したくて自分にしか書けないテイストのメールで毎週博打を打っています。
なぜならそれで採用された方が気持ちいいからです。
自分を殺して勝ちに行ったモノが採用されても素直に喜べません。
誰でも書けるようなものは他の誰かが書けばいいんです。
私もこれまでふつおたで何度か採用されたことがあります。
あるにはありますが、上記の理由で採用率はとてつもなく低い。
その分自分色ふつおたで採用された時の快感たるやすさまじいものがありますが、そんなのは万馬券を狙うようなもの。
割に合わない勝負に手間暇をかけるぐらいなら、その分本命のドラマ台本や企画コーナーへのメールに注力した方がはるかに建設的です。
ところで「ラジオメール構文」なるものをご存知でしょうか?
いわゆるテンプレートな言い回しのことで、それを言っておけばラジオメールっぽくなる魔法のフレーズなのです。
『涙が止まりませんでした!』
『電車で座っていたのに立ち上がってしまいました!』
『夜中なのに大声を出してお母さんに怒られてしまいました!』
的なアレですわ。
インターネットラジオを聴く習慣がある人なら未だにしゅっちゅう耳にすると思います。
私はとにかくこういう捻りのない脊髄反射的なのが嫌いでして。
今の世なら「もうそんなんやったらAIに書かせたらええやん」と言い放ってしまいそうなぐらいには。
特に『涙が止まりませんでした』って何?
だったらその涙いつ止まったん?
今も泣いてるん?
でも過去形ってことは止まったんやろ?
いつどんなタイミングで止まったのかむしろそっちの方が気になるわ。
結論として、私は独自色の出せないものには興味がないのです。
だから私は今や「これやったらほぼほぼイケるやろ!」とよほど勝算がない限りはもうふつおたを送っていません。
たまーに「これがもし読まれたらめっちゃオモロイからいてもうたれ!」と愉快犯的に送る場合もありますが、あってもそのどちらかですね。
そもそもラジオでわざわざマイブームとか聴きたいですか?
Q.「今のマイブームは何ですか?」
A.「今はホットヨガにハマってます!」
それ本当に今知りたかった情報?
そんなんTwitter(現X)なりブログなりインスタなりにナンボでも転がっとるやろ、って私なんか思うんですけど、世間と考え方がズレてるのかなあ。
個人のTwitter(現X)リプ返企画とかYouTube雑談配信とかで訊いたらええやん、って思っちゃうんだけどそうじゃないのかなあ。
まあいいや。
他人は他人。
他所は他所、ウチはウチ!
と、ここまで長々と語ってきましたが、詰まる所私のスタンスといたしましてはこんな感じです。
「1クールのレギュラーより一瞬の伝説」ではないですが、「記録より記憶に残りたい」。
これが本音。
だってせっかくその番組の常連になっても「その人の名前よく聞くけどどんなメール読まれた人か憶えてないなあ」じゃ意味なくないですか?
まあ人それぞれでしょうが、少なくとも私は絶対に嫌ですね。
だから今週も爪痕を残すためにオリジナリティ満載のメールで一勝負打つのです。
採用された時の快感を求めて。