火縄銃:世界初のスナイパーライフル?
世界初のスナイパーライフルは火縄銃?
「世界最初のスナイパーは日本人だったーー」と聞いたらどう思いますか?
「根拠不明」「そんなはずはない」ということもないのです。
狙撃とは
狙撃という行為自体は昔からありました。弓などの武器は元々狩猟用だったのです。
命中精度も申し分ありません。
日本でも平安の昔に源為朝の強弓や屋島合戦の那須与一など弓の名手が登場します。
ただ、基本的に弓だと目立つということもあるので、現代の意味での「狙撃」とはまた少々違った感じです。
今現在の「狙撃」は銃の発明と共にあります。
13世の中国で青銅製の銃身から発射される火器が開発されると、それが西洋に伝播し実用的な銃「マスケット銃」が16世紀の1500年代から開発されました。
世界史的には17世紀(1601から1700年)頃から「狙撃」という概念が広まっていったと考えられます。
「マスケット銃」には点火方式に種類があり、マッチロック式と言われるのがいわゆる「火縄銃」です。
よく火蓋をきると言いますね。
弾丸発射のための火薬着火用に火蓋があり、着火方式で区別ができます。
フリントロック式というと火打ち石を使った後代の着火方法です。
江戸時代の日本でも製造可能でしたが、太平の世のため少数試作されただけでした。
日本では
日本では「マスケット銃」の一種である火縄銃の急速な普及とともに「狙撃」という概念が早くから存在しました。
16世紀の元亀元年(1570年)第一次信長包囲網の最中で翌年元亀2年武田信玄が遠江・三河両国に侵攻し、三方ヶ原合戦が行われます。
元亀元年(1570年)4月、越前朝倉氏攻めの途中で浅井長政に挟撃され一時京都に逃れていた織田信長は、翌5月に岐阜城への帰還の途についていました。
5月19日、杉谷善住坊(すぎたに ぜんじゅぼう)という鉄砲の名手が伊勢方面へ抜けるため近江国の千草越え(千種街道)を通過していた織田信長を狙撃しました。
20数mの距離から2発発射し失敗に終わったと伝えられています。
織田信長は軽傷で済んだとのことです。
詳細は不明なところが多く、杉谷善住坊も甲賀忍者とも鉄砲の使用に秀でた紀州の雑賀衆とも言われています。
2発発射したということは火縄銃は次弾装填に時間がかかるためバックアップウェポンとして予備の火縄銃を用意していたとも推測できます。
先に記載した「世界初のスナイパー」は杉谷善住坊のことです。
現在では鉄砲伝来は東南アジア経由で伝えらたとされております。
ヨーロッパの平原での使用ではなく、森林地域が多い東南アジアに適した「火縄銃」が日本にもたらされたのです。
ヨーロッパで主流だった平野部で密集隊形での大量使用の弾幕戦ではなく、山岳や森林での狙撃戦が主体の日本ならではの現象ともいえます。
日本では火縄銃の運用も大量使用の密集隊形ではありませんでした。
上級武士の指揮下に少人数ずつの銃手(鉄砲足軽)が配置されこの単位で戦闘を行うというものでした。
後述しますが現代では独立した最小単位の大隊へ狙撃部隊が配備されています。
上級武士部隊を独立した戦闘単位とすると、火縄銃の使用も現在の狙撃部隊に似た運用方法と推測できます。
現代の狙撃戦術
軍事組織では任務達成が最重要課題です。そのための効率化を行います。
戦闘行動中であれば通常の民法や刑法に縛られず、専用の法体系を持ち軍事法廷で裁かれます。
軍事行動の一部なので「狙撃」自体も全体の一部の戦術にすぎません。
「狙撃部隊」は独立して行動する単位、大隊などに配属されます。
大隊麾下の中隊などの戦闘を敵射程外からの遠距離攻撃により支援することにあります。
状況の変化が急なため、狙撃が外れた場合、反撃を受けた場合などが考えられるため、
バックアップウェポンとしてセミオートマチックの狙撃銃、小銃などを準備していることが多いと言われます。
狙撃銃として開発されていない自動小銃を用いる場合があるのもこのためです。
現代の火縄銃
豊和工業 64式小銃
89式小銃の前に使用されていた自衛隊の自動小銃です。
セミオート、フルオートでの命中率を重視しています。
開発関係者には旧軍の自動小銃開発に携わったものも多く、命中率にこだわり同時期の自動小銃の比較でも良好な結果が出ています。
日本軍自体が郷土防衛軍の性格が強く、当然ながらその兵器は日本本土での使用を中心に考慮されている場合が多いです。
そのため山岳が多く狙撃に向いている国土の事情が暗黙のうちに考慮されたのかもしれません。
専守防衛の自衛隊での使用ということも本土での戦闘を考慮されているので正しい開発構想と言えるでしょう。
7.62mmは大威力で通常は弱装弾が使用されます。
89式小銃が採用された後も高命中率と大威力が魅力で今でもSATなどほかの部隊でもよく使用されているそうです。
89式小銃より弾頭重量があり、弾道安定性が高く、長射程であるといことも大きいです。
日本の兵器や戦術は基本待ち伏せなので長射程での狙撃には向いているのです。
まとめ
「兵器には民族の性格が出る」という人がいます。
その郷土で使われる場合が多いこと、要求仕様も沿っていることが理由です。
狙撃銃に関しても凝り性のイギリス人、職人肌のドイツ人、大雑把なロシア人、
合理性と数のアメリカ人、精密な日本人などが現れています。
兵器単体としてみるのではなくその背景にあるストーリーに想いを馳せるのも興味深いです。
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