◆企業倒産の減少に鑑みて◆ vol.037 2015/9/11
東京商工リサーチ(以下、単にT社という)の最近の発表によれば、
15年8月の企業倒産件数(負債総額10百万円以上)は、
前年同期比13%減の632件と5カ月連続で前年を下回った。
8月としては1990年以来25年ぶりの低水準だったという。
産業別に見ると全10業種のうち6業種で倒産件数が前年を下回った。
建設業は14カ月連続、小売業と運輸業は5カ月連続で減少した。
景気が回復基調であることに加え、金融機関が中小企業の返済計画の
変更要請に柔軟に対応していることが背景にあるとは、
T社の見立てであるが果たしてどうか。
財務コンサルタントとしての現場実感でも、顧問先はもちろんのこと、
その取引先等でも倒産は減っている(ないわけではないが)。
一つは、金融機関の姿勢にあると考えられる。その意味ではT社の指摘
通りである。しかし、もう少し内実をみると、実相が見える気がする。
まず、金融円滑化法の施行以降には厳しい姿勢が強まると見られた
ハードランディングを回避する傾向にあるのは、ある金融マンの言葉に
集約される。
「過去には業績も良く金融機関としても儲けさせてもらったがいま構造的な
不況業種だからといって厳しい態度を取っていたら管轄域内の融資先の大半が
対象となる。後継者もおらず、経営者の生活もかかっているとなると、
そう簡単には右から左というわけにはいかない。」
次に、日銀成長資金融資である。財務基盤が弱いところであっても、
日銀資金が入ることによって、構造的な不況業種にも選択的に初取引で
結構の融資額を、好条件で融資している複数事例を筆者は間近に見聞きしている。
もう一つ、企業倒産を減らしているのはM&Aの増加である。
きちんとしたM&Aもあれば、M&Aもどきもあるのであるが、何からの資産
(いざとなれば売却可能かつ現金化可能な資産)を引当に、ノウハウ、人材、
あるいは、商圏を取っていくために買収され吸収されていくことになる。
統計上は倒産にはならない。
水面下で企業売買を探る動きは、M&Aの専門会社の動きだけみていても
わからないほど広がりがある実感がある。この点からは会員諸氏の
ビジネスチャンスが拡大していると思われる。
◆執筆者紹介◆望月徹
大手金融機関で法人融資部門、企画調査部門、業務開発部門等を経験。
この間、中央官庁、米銀本店勤務の出向経験もある。
大手金融機関を辞した後、総合商社系コンサルティング会社で事業成長支援、
事業開発支援に取組み、現在は、事業再生や事業成長支援のコンサルティング活動に従事。
CFPR、日本証券アナリスト協会検定会員、行政書士、宅地建物取引主任者。
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