【ボカクラ】#ボカクロ vol.36 セトリ解説
※画像は推し2人に挟まれるオタクの姿です
はじめに
初めましての方は初めまして、そうではない方は4月振り。B,F(@BigBigfriend333)と申します。
普段はボカロリスナーとして全曲チェックをしたり、曲紹介配信をしたり、ボカクラでDJをしたり、曲レビュー記事を執筆したりと、ありがたいことに色々と活動をさせて頂いている者です。
最近は転職活動だったりなんだったりで、また全曲チェックをサボっている状況です。ただ全てはにじさんじ甲子園とホグワーツ・レガシーが悪いので仕方ありません。エキシビジョンマッチ楽しみ。
さて今回私が筆を執ったのは、08/12に開催され、準レギュラーとして参加させて頂いているクラブイベント『VOCALOID Crossing(通称:ボカクロ)』のセトリ解説をするためです。
ボカクロとは
ボカクロとは、偶数月第1土曜日にnagomix渋谷にて定期開催されているボカクラです。
キャッチコピーは『踊ろう、僕らとボーカロイドの交差点。』で、知名度に囚われない様々な合成音声音楽作品を浴びることができるイベントです。
元々私は弊イベントの常連客であり、気付いたらDJを始めていたし気付いたら準レギュラーとして囲い込まれていました。不思議。
そしてvol.36の今回は、なんとボカクロ7周年!めでたい!!
豪華ゲストの二錠さん(@hakka_nijo)とジヲさん(@ziwo_ziwo_ziwo)をお招きし、最高のイベントになりましたね。
そんなスペシャルな回だったので、レギュラー陣は自然と力が入ったDJをしたような気がします。勿論、私も。
テーマ
早速やっていきましょう、今回のメインテーマは『彼岸』です。
彼岸とは極楽浄土、つまりあの世を指す言葉であり、開催期間はちょうどお盆の季節でした。お盆では地元に集まり故人を偲び、此岸(この世)へ招き入れ供養する、そんな季節の1日前。
つまり誰かへ/どこかへ、想いを馳せるそんな日だった訳です。
また裏テーマとして、昨年8月に主催した『VOCALIFE EX祭』から1年経ったという事で、リバイバルとしてその時のセトリから幾つか曲を引用しています。
これらの要素を捏ね上げて、彼岸と此岸の境界に佇むような、どこか危うげな心(愛)を表現するセトリを目指して組み上げたのが今回のセトリです。浴衣DJ楽しかった。
セトリ解説
ここからは細かいセトリ解説です。本当は1曲ずつ「歌詞のこの部文が……」などと解説したいところですが、余力がないので大まかに。
1曲目:メリーバッド / ジグ(@hylul_jp)
2曲目:愛しているって / でんちゃそ(@denden01280)
セトリの最初の曲って、とても重要ですよね。特に文脈DJをする上では、分かりやすく「これからこういう話をします」と提示する必要がありますから。
そう言った意味で『メリーバッド』と『愛しているって』はぴったりの作品でした。どちらも失ったあなたへ届かぬ愛を歌う作品であり、さよならさえ上手にできない不器用な姿が描かれています。
またジグさんは、個人的に夏バラードの最高峰に位置する方だと思っているので、夏の空気感を徐々に膨らませるという意味でも最適だったなと思います。でんちゃそさんの方はまさに夏の曲ですし、美しいグラデーションになりました。
3曲目:夏のにおい / もり(@mori4mirage) feat. 瘡蓋(@ksbta3u1),阿吽(@aun_una)
4曲目:夏来るらし / moja_manju(@moja_manju)
ここで一気に夏、特に田舎の空気感を持って来て『お盆』を意識させたかった。やっぱり夏と言えば郷愁の季節ですからね。生まれてこの方20数年、ずっと関東で過ごして来た私は体験していない筈の景色なのに、どうしてか懐かしく感じる田園風景。低い空に立ち上る入道雲や、胸いっぱいに広がる藺草の匂い。きっと遺伝子に刻み込まれたものなんだろうな、と。こういった作品に触れる度に感じます。
また『夏来るらし』でよりお盆らしさのある、つまり“人の死”に触れる作品が必要でした。ここからの流れがこのセトリの肝、つまり彼方と此方が交わる時間がやって来ます。
本作は山川方夫の著作『夏の葬列』をモチーフとして制作されています。内容としては、第二次大戦が終結するその日、主人公は疎開先で空襲に遭い、助けに来た少女をその渦中に突き飛ばしてしまいます。十数年後の現在、あの日以来初めて思い出の地に足を踏み入れた主人公が、自分の罪と向き合う。そんな物語です。
是非下記リンクから小説を読んでくださると嬉しいです、より曲の世界に引き込まれるので。
5曲目:Eren / Suntaro8(@Suntaro8),UNION(@uni39808456)
6曲目:海の幽霊(RKZ07 cover) / 米津玄師(@hachi_08),RKZ07(@bleached_cicaq)
7曲目:藍にひがん / ZEROKU(@yamazakura_P)
『夏来るらし』の戦争の記憶から、『Eren』の泡のように浮かんでは消える記憶の断片を映し出しているかのようなMV、そして歌詞の「銃声のこちら側に 僕は居ます 底のない悩み抱え今日も 眠る」が美しく繋がり、ひとりで溜息を漏らしていました。
そして『海の幽霊』と『藍にひがん』、この2曲かけるためのセトリと言っても過言ではない。
実際に今回のセトリを組む上で、当日神宮外苑で花火大会があったんですよね。
じゃあ折角なら花火に因んだDJをしたいなぁ、『藍にひがん』をかけたいなぁ、と言うのが今回の出発点であり、そこから要素を洗い出して組み上げました。楽しいね文脈DJ!
死者を迎え、悼む夜。海の音と吹き抜ける風、夜空を照らす花火の美しさと儚さ。
うーん、最高の夏。
8曲目:WAVE_FILES / 和田たけあき(くらげP)(@WADATAKEAKI)
9曲目:水彩メリーゴーランド / けーだっしゅ(@k_da5h)
10曲目:凍るサマー / Guiano(@GuiAnoDayo)
『WAVE_FILES』と『水彩メリーゴーランド』でより爽やかで涼し気な夏の空気、潮の匂いを香らせたかったのでこの流れになりました。1時間という長尺DJで、ずっと同じテンションで続けるのはだれてしまう上、一旦やりたいことが終わったタイミングでもあったので、ここで少し雰囲気を変えていきたかったのもあります。
すべての感情を飲み込んで、ただ波は行く。
ちっぽけな人間と、大きな愛と、氷漬けの夏の記憶。泣きたくなる程の美しさに、いつも呆然と立ち尽くしてしまいます。
12曲目:不可逆的にさようなら / Conslo(@Conslo2)
13曲目:知らない子どもと公園でサッカー / 可ラッカ(@caracca2)
海から地球、そして青空へ視線を切り替えていきましょう。夏と言えば真っ青で眩しい空ですよね。そしてやはり心の中で燻る、いつかの夏の記憶、現状との解離。その疼きを感じさせる2曲だと思います。
また音の話をすると、『地球は青い』のギターから『不可逆的にさようなら』と『知らない子どもと公園でサッカー』の、また少し毛色の異なる弦の音にグラデーションさせたかったので、この流れになりました。
14曲目:愛に触れている / Tokaya(@Tokaya_11)
15曲目:ある朝のメモアーズ / 弾人(四)(@azma_music)
また少し視線が変わります、より愛の話を深堀りしていきましょう。『愛に触れている』ではハリボテの愛に翻弄される女の話を、『ある朝のメモアーズ』では思い出の中にしか残っていない愛を反芻する男の話をしました。
これまでは優しい愛の話をしていましたが、愛ってそれだけじゃないよね、というお話です。不穏な空気を徐々に滲ませて、気付いたらもう逃れられないところに来てしまったかのような、あの感覚もまた愛なのですから。
16曲目:第三の心臓 / はるまきごはん(@harumaki_gohan)
ね、はるまきごはん!!!
はい、夏と言えばはるまきごはん、苦しい愛と言えばはるまきごはんですよね。最近DJする度にはるまきごはんを流している気がします。好きなので仕方ない。
分裂する自己、遠のいていく温かな記憶。そして、作り上げた見知らぬ友達、もうどこにも吐き出せない愛の受け皿。この時点ではもうどこに行けない、身動きの取れないみかげの苦痛がありありと描写されていて、きつく手を握りこんで物語を読み進めていました。
17曲目:STRANGE / Saku(@sakuogt)
18曲目:r_e_i_! / 井ナカノセ(アカウント削除済み)
荒れ狂う音楽と、必死に希望へ手を伸ばして歌う姿が描かれた『STRANGE』へ。そして手をすり抜け、嵐の中に今にも消えてしまいそうな『r_e_i_!』へと展開しました。確かに伸ばした手は希望で、掴み損ねてもそれを求めているんですよね。この描写が切なくて、悲しくて。そして同じように光を仰いでいるような気分になります。
あと井ナカノセさん……消えないで……。ずっと待っています……。
19曲目:手のひら彗星 / inuha(@inuha0504)
そして『手のひら彗星』!手を固く繋いでいるにも関わらず常にどこか危うげで、不安定な世界観に魅了されてしまいますよね。視線が手に集まっているところで、再度地続きの君と世界へ広がる構成したのでここのカタルシスが堪りませんでした。
未来に対する不安が纏わりつく中、手を繋いだあなたへの想いはこちらを真っ直ぐに貫く。この相反する2つの感覚をボカクラで、特にnagomix渋谷の音響で体感するの最高すぎるだろ!自分で流しながら泣きそうに、というか泣いていました。好きすぎる。
20曲目:さよーならみなさん / 椎名もた(ぽわぽわP)(@siinamota)
降り注ぐ彗星って、まるで花火やパレードの煌めきみたいですよね。じゃあ、ということで『さよーならみなさん』を流しました。アルバム『生きる』の中で、“人生”に相応する作品であり、生きることのままならなさや、それでも地を踏みしめ歩みを続ける姿が描かれています。
21曲目:Fictional World(ふわりPアレンジ) / 蝶々P(@papiyon_cyoucyo),ふわりP(@fuwari_p)
そんな歩みに続く曲として相応しい曲はなんだろうと考え、『Fictional World』のふわりPアレンジを据えました。華やかで南国テイストなサウンドなのに、原作の迷いながらも泥臭く生きる力強さがそのままで、昔からずっとお気に入りのアレンジです。アルバム限定の音源なので、気になった方は是非上記クロスフェードから視聴・購入してみてくださいね。
22曲目:UnderWhite / 千石ナタデコ子(@neetdecoco)
23曲目:幻影 / はるまきごはん(@harumaki_gohan)
24曲目:幽霊東京 / Ayase(@Ayase_0404)
華やかなサウンドのまま、徐々に人生に疲弊し翻弄されていく様を描きました。生きるって、そんな簡単なことじゃないですからね。
虚構で着飾り、毒々しいネオンで照らされた舞台で踊る。泣いている影は見ないふりをして。彼岸と此岸の境界線で足踏みをするような、そんな人間もいるんだということを、ここで示したかった。
(それはそれとして『幽霊東京』なんてドアンセム曲を流す日が来るとは思っていなかったので、ちょっと面白かったです。)
あとこの3曲はどれもピンク系統のネオンが使用されたMVなので、並べて流したいなぁと思っていました。余裕がなくて当日のVJさんに伝えていなかったので、次回こういう演出が欲しい時は事前に伝えるようにします。反省。
25曲目:虚像乖離 / mucell(@mucell_)
はい、深夜テンションです。
嘘です、ちゃんと意味があります。
”BBの墓場”だとか”BB百鬼夜行”だとか言われていますが、皆さんご存じの通り曲がめちゃんこ良いんですよね。自分の手で台無しにしてしまった愛と、欲しかった未来を幻視しながら/現実を直視しないで生きる姿を描いた作品です。ちゃんと文脈が繋がっているんです、本当なんです。
最近本作を収録したアルバム『白色灯、白昼夢』が頒布されたので、是非聴いてみてください。良い曲いっぱいあるよ!!!
26曲目:悪魔の行進 / RED(@8URNRED)
実はこれめっちゃ歌詞繋ぎなんです。『悪魔の行進』は「寂れたこの街には きっと亡霊が潜むから 僕らはさ 正気ではいられないのさ」「僕らは平等に 皆価値などないから 泣きながら笑いながら 死に急ぐのさ」という歌詞で始まりますよね。今までの総決算のような、傷だらけの人生を手を取り合い生きていく姿が描かれているんです。
私は「それでも」という言葉が好きです。とても残酷で、容赦がなくて、けれど希望に満ちていて。
クソみたいな人生だけれど、それでも。そうやって生きていきましょうよ、一緒に。
因みに本当はここから青屋夏生さん(@natsuki_aoya)の『ジョーク』と、川﨑ノーチラスさん(@Nautilus_FDS)の『狂っちまうよ。』でカントリーロックの流れをやろうと思っていたんですが、『狂っちまうよ。』が音源頒布されていなかったので、諦めました。
そしたら相棒の苔氏さん(@kokeshi_0406)がマジで同じ流れやってたんで面白かったです(『悪魔の行進』奪っちゃってゴメン)。
27曲目:遠泳 / 皆川溺(@23dimensionsP)
夏なので、人生の話なので、そしてロックなので、『遠泳』をフルで流しました。
真っ青な夏空と、セーラー服と、淡い恋。現実と空想の曖昧な世界、あちらとこちら。でも、不思議と真っ直ぐ未来へ歩みを進めたくなる、そんな曲です。最高の夏だったね。
28曲目:憂鬱と生きる / やながみゆき(yanagamiyuki)(@yanagamiyuki)
そして『憂鬱と生きる』でこの物語は、伝えたかったことはおしまいです。
危うげでも、恋焦がれても、迷っても。それでも、生きていきましょう。それが人生なんだから、立ち止まったって良いんだから、希望に手を伸ばしていきましょう。
「君がいて嬉しいよ 今、嬉しいよ 理由なら何も無いよ ただ嬉しいよ」
「憂鬱と喜びの中を 私はね まだ生き足りないよ」
あと、『遠泳』と『憂鬱を生きる』はどちらもセーラー服を着た少女がMVに映っています。並べて使いたいなって思っていました。
29曲目:小さな光だけど / 市瀬るぽ(@LUPO_Reportage)
30曲目:Singularity / keisei(@keisei_1092)
さて、最後にミクノポップという私のイメージにない2曲流して締めくくりましたがこれには理由があります。
1つはどちらも希望を歌う曲だということ、もう1つは次の番手であるゲストのジヲさん(@ziwo_ziwo_ziwo)が、kzさん(@kz_lt)の『Hand in Hand』で始めることを知っていたからです。
ならばミクノポップで、そしてマジカルミライで終わろうと思い今回のセトリになりました。聴きに来てくださった方が、「まさかこんな選曲しないだろう」とびっくりしていたので、してやったりとニヤニヤしていました。
おわりに
以上、ボカクロ vol.36のセトリ解説でした!楽しかった~~~!!!
想像以上に長い文章になってしまいましたが、ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
本当に良いイベントになりましたし、最高の1日だったと思います。まだボカクラに遊びに来たことがない人も、これを機に興味を持ってくれたら嬉しいです。
ボカクロはリスナー向けのイベントなので!!!怖くないよ!!! それでは皆さん。
良きVOCALOIDライフを!!!
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