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戦前三輪車を工作する②
さて、引き続き今度はリアの蓋を作り直していきます。
オリジナルの蓋は恐らくアルミかスチールですが、うちの車両には作り変えられたボディに合わせてFRPらしきもので蓋が作られていました。
ボディのゆがみに合わせて蓋も歪んでいたので作り直すしかないのですが、FRPは完全に未知の世界。Howtoはネットで調べれば色々と出てくるものの、本当にうまくいくのかおっかなびっくり作業を開始します。
FRPで蓋を作り直す
基本的には作り直したボディに合わせて型を作り、FRPで制作していく流れになります。
元々の蓋の形だと、リア側がフロント側に比べてかなり低い位置に来ていたので、多少高さも出しつつ前後のラインのバランスを改善も目指します。
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この写真の状態から既にフロント側のボディパネルは少し調整していて、1㎝程フロント側のラインは下がっています。
あと、工作を開始する前はボディパネルを固定するビスの頭がボディパネルとまとめて塗装されてて真っ黒ですね。ビス頭は塗る方がいいのか塗らない方がいいのかは好みが分かれるところだけれど、今回はビスは塗らないで作業してます。
雄型を作る
まずは蓋の造形から開始です。
雄型→雌型→本体という3段階で作業を進めます。
1点物なので、雄型にFRPを貼り付けて造形し、そのまま研磨して完成させるという方法もあったんですが、そうするとFRPの厚み分完成形が型より大きくなってしまい、ボディとのサイズを合わせるのが難しそうだったのと、FRPは研磨がかなり大変なので、横着せずに進めることにしました。
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まずは大まかに針金で骨を作っていきます。
ここも溶接ができれば簡単なんですが、溶接機が無いのではんだ付けで留めました。
この上からウレタンフォームやパテを盛って整形していくのでこの時もう少し骨を小さく収まるように作った方が良かったんですが、そのあたりのノウハウは全くなかったので後で苦労しました。
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養生テープで骨の間を埋めます。
シート背もたれ板の部分は板の断面と蓋が接するので、ほとんどこのテープの面が雄型の表面に来るようなサイズ感。そのあたりも後で結構厳しかったです。
![](https://assets.st-note.com/img/1675406097588-x5EPi6r6ea.jpg?width=1200)
次はウレタンフォームスプレーで全面を覆います。
ホームセンターで売られていますが、元々隙間充填用で広い面積に吹き付けるものではないため意外と1缶で出せる量が少なく、何缶か使用して全体を埋めました。
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吹き付けた部分はしばらくたつとモコモコと膨らんでカチカチに固まります。
固まったらカッターナイフやノコギリで簡単に切断、切削できるので、大まかにカットした後ヤスリやサンドペーパーで形を整えていきます。
![](https://assets.st-note.com/img/1675406097601-KTfrGi6uac.jpg?width=1200)
おおまかな形ができたので、一度表に出して確認してみましょう。
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良いですね。この作業を始めて何回目かの感動を味わっています。
ただ、この辺りで「リアの先端がちょっと丸すぎないか?」と思い始めます。だけど今更後戻りはできません。
次はパテを盛って更に雄型の完成度を上げていきます。
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ポリパテを使用して盛っていきます。
ポリパテはFRPの樹脂と同じ硬化剤を添加して硬化させるパテで、FRPの素材と同時に数kg買ったものの、盛っては削りを繰り返していたら全く足りず、かなり買い足す羽目に。
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パテが薄い部分は少し指で押しただけで穴が開いてしまったり、削っているうちにボロっとウレタンごともげ抉れてしまったりして、これまた大変でした。
骨組みを小さくしてウレタン層をもう一回り小さくできていればもっとやり易かったですね。次への反省としましょう。(次あるのか?)
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基本的にこの雄型がそのまま完成形になります。
凸凹や歪みもそのままになるので、あとで研磨はできるとはいえなるべく平滑になるように仕上げました。
雌型を作る
雄型が完成したので、これを元に雌型を取っていきます。
ボディパネル側に雌型が被ってしまうと外すのが多変なので、バッカー材で簡易的な耳を作っておきました。
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まず、雄型にPVA離型剤を塗ります。これを塗らないと雄型と雌型ががっちり引っ付いてしまって後で大変なことになります。
離型剤にはいくつか種類があり、PVA離型剤はポリビニルアルコールというものでできていて、刷毛で塗布すると水溶性の薄い膜が張ったような状態になります。
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その後、まずゲルコートを塗布します。
これはFRPの樹脂に近いですが、型の表面になる面を固めるようなイメージです。同じようなものにトップコートというのがありますが、ゲルコードはFRPの内側(型に接して空気に触れない)で使用し、トップコートはFRPの外側(最後に塗るので空気に触れる)で使用するものです。
![](https://assets.st-note.com/img/1675406097941-btQEwftYAh.jpg?width=1200)
ゲルコートがある程度乾いたら、1層目にガラスクロスを貼り付けます。
ガラスクロスはガラス繊維を編んだ薄い布のようなもので、曲面に貼り付けるのに向いていますが薄くて強度はあまりないです。
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ガラスクロスを貼ったらポリエステル樹脂を塗っていきます。
刷毛やローラーで塗りつけた後、専用のローラーで空気を抜いて密着させます。この時空気が入ると、型に凹みができるので念入りに。
FRP用の樹脂にはノンパラ/インパラという種類がありますが、積層途中はノンパラを、最後の層にはインパラを使用します。
ノンパラはパラフィン無し、インパラはパラフィン入りという意味で、パラフィンが入っていると乾燥後表面に蝋の層ができてべたつきを抑えられる代わりに、乾燥後に新たな樹脂層を積層する場合には表面を削ってやる必要があります。
積層途中はパラフィンの入っていないノンパラを使用するのが無難ですね。
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ガラスクロスの次はガラスマットを2回積層します。
ガラスマットはエマルジョンタイプをチョイス。普通のマットより繊維の飛散が少なく、比較的柔らかいです。
とはいえマットは3次元曲面になじみにくいので細かく切れ目をいれつつ、根気よく貼り付けていきます。
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完全に樹脂が硬化したら、外した後に歪むのを防止するためにベニヤで適当に枠を付けておきます。
そして、いよいよ取り外し…なんですが、離型剤が足りなかったのかすんなりと雄型と雌型が外れてくれませんでした。
なので一旦車体から雄型ごと取り外し、雄型を破壊して雌型を取り外すことに。
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養生テープはウレタンも樹脂も引っ付かないのでバリバリと剥がれます。
雄型が本当にとれないので、雌型に傷をつけないようにドライバーで隙間を作り水を流し込んだり削ったり、どうにかこうにか剥がしていきます。
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離型剤が悪かったのか、薄かったのか。
なんとか雌型を取り外しました。
本番の蓋を作る
そしていよいよ本番の蓋の制作に取り掛かります。
離型剤の反省から、ワックスとPVA離型剤を併用することに。
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まず固形ワックスをよく塗り込みます。塗りこみを拭き上げを数度繰り返し。使用したのは普通の洗車用ワックスです。
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そして今度はこれでもかとPVA離型剤を塗布します。ワックスが離型剤をはじいてしまったり、重ね塗りすると最初に塗った層が取れてしまったりとなかなか難しいですが、可能な限り厚塗りしました。
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FRPの作業は基本的に雌型の時と同じなので割愛しますが、本体は一旦3層積層しました。
それでもこのサイズのものだと歪むので、梁のようなもので補強は必須かなというところです。
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今回は離型剤を塗りまくったおかげで、ほぼ本体側にPVAの層が付いた状態で外れました。ワックスが良く仕事をしてくれた感じです。
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次はボディとのフィッティング部分を作っていきます。
ボディに対応する縁をまず作って、それを蓋本体と合体させる方法で進めます。
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ガラスマットは直角に曲げることができないので結構苦労しました。
角はエアロジルというFRPをパテにしたようなものを使えばもっとしっかりするのですが、見えるところでもないですしきっちり合わせすぎると逆に蓋が外れにくくなったりしそうなので、角はそんなにきっちりさせていないです。
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作った縁が歪まないように蓋本体と合体させます。
パーツ同士の接着も、ガラスマットと樹脂を使って積層の要領でOKです。
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パーツが合体したら、最後に裏に梁を造形してインパラ樹脂でもう1層ガラスマットを積層しました。
梁は余っていたバッカー材を貼り付けてマットで造形してます。裏なので割と適当。
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こうして、長らく頑張ってきた蓋の本体が完成しました。
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蓋の耳部分をパテで整形している状態なので曲線が強調されているというのもあるのですが、やっぱりちょっと先端が丸くなってました。右のようなRにできればより良かったんですが、もう今更作り直すのは…。
数年後にまた気が向いたら作り直すかもしれません。
塗装
形ができたので、細かい傷や凹凸をパテで整形した後、最後の塗装に掛かります。
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まずはサフで塗装。
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その後カシューで本塗装しました。
カシューを刷毛で塗るのも難しく、何度も塗っては気に入らなくて削って再塗装を繰り返し、だいぶ刷毛塗も上手くなりました。
唯内の環境だとブツが付くのがもうどうしようもないので、塗装後の研磨は必須ですね。
キャリアを作る
蓋ができたので、トランクを乗せるキャリアを作ります。
元々付いていたものは自分が付けたものだったので、基本的に同じ形で作り直します。
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まず位置を決めます。
センターがどこなのか、はっきりとした目印が無いので、目視でよーく観察しながら中央を決めます。
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土台は木を削りだします。
ボディのRは三次元曲面になっているので、現物合わせしながらある程度ボディのRに沿うように削っていきます。
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削り始めるときにうっかりしていたんですが、木目の方向を併せたほうが良かったですね。
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土台のRが完成しました。
実はこれを描いている時点で少し平行が出ていないことが分かっているので、あとで調整するつもりです。
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土台に渡す板はアルミを切断して作ります。
こういうものを作るときは基本的にインチサイズで作った方がしっくりくるのでホームセンターで売られているフラットバーを少し細くカットして使用します。
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キャリアの面をフラットにするため、土台をバーの厚み分削ります。
バーの両端は丸く整形。
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取り付けのネジは座繰りを入れて皿ネジで固定します。
これでキャリアの上面はフラットに出来上がりました。
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最後に土台をニスで塗装。裏からビスで留めて、キャリアも完成しました。
ボディ完成
これで一通りボディの工作は完了です。
ちょっと気になるところはあるものの、歪んでいたボディがきっちり左右対称になったのでむちゃくちゃ気持ちがいいです。
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![](https://assets.st-note.com/img/1675407361055-U09CSRQLy8.jpg?width=1200)
かなり苦労しましたが、きちんと自力で仕上げられて大変満足です。
次は幌を作り直しますよ。
続く。