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絵で食っていく
2024,9.22
「絵で食っていくのは難しい。ましてやイラストレーターなんて厳しいぞ〜。」
高校生の時、通っていた画塾の先生に言われた一言を今でも忘れずにいる。
今やSNSも発達して個人の発信力が大きくなり、趣味で絵を描き始めた人間がイラストレーターとしてお仕事を貰いやすい世の中になってきたけど、
10年前は今ほど"ブーム"といった風潮もなく、本当にイラストで食ってる若い世代なんてほんのひと握りだったと思うし、そんな人達を知る機会もなかなかなかった。
若き日の少年BEYは、絵という道で僕より何倍も長く生き、色々な世界を経験してきた大人がそれを言うもんだから結構心を折られた記憶がある。
僕がパソコンを使って絵を描き始めたのは9歳の頃。
ペンタブで絵を描き始めたのは10歳。
ずっと絵を描くのが好きで、暇な時間はリビングにあるデスクトップPCに釘付けになり何十枚、何百枚も絵を描いてきた。
当時から将来の夢はもちろん絵を描く仕事で、
中学•高校と成長するにつれ、進路の話や仕事の話など"現実"というものを段々と理解していき、
そんな矢先に向けられた「絵で食っていくのは難しい」という言葉にチェックメイトを食らいながらも、その道以外に目を向けることなく生きてきてしまったので、大学はどうしようもなく芸術系の学部に進学した。
大学入学後も相も変わらず、趣味として絵を描き続け、卒業後何の仕事に就くかも考えられぬまま日々を過ごしていたある日、
ふと脳みそに降りてきた「ワメリカン」というワードが妙に頭の中を駆け巡るもんだからこれは何かの啓示なのかも!と当時の先生に相談しヒントを貰いながら自分なりの「ワメリカン」を描き始めSNSにアップし始めた。
あくまで当時もまだ「絵で食っていくのは難しい」の思考だったから、これを仕事にしようとかは微塵も考えずにただ好きだからという理由で描き続けていたら、20歳の時に人生で初めて仕事としての依頼を受けることになる。
それまで「イラストレーター」という肩書きは名乗ったこともなければ名乗ることもおこがましいといった感覚で生きていたが、プロアマ問わずお仕事を受ける以上は「イラストレーター」なんだ!と自分の中で定義づけて、それを機にイラストレーター『BEY』として活動を始めることにした。
当時は大学生イラストレーターとして学業の傍らバイトもして普通に遊び、その合間でお仕事をさせていただく生活を送っていたため卒業後は何となく就職して副業的にイラストレーターをするんだろうなぁ、、、くらいの感覚だったと思う。
だけど就活の現実が迫る中、自分の中でどうしても「絵で食っていくのは難しい」という言葉に対するフラストレーションを感じ始め、もうこうなったら人生ギャンブルに賭けて食えようが食えまいがイラストレーターやったるわい!!むしろ食えるようになってやるわい!!と意気揚々と就活もせず卒業し、飲食業とイラストレーターの二足の草鞋スタイルでクリエイティブがホットな街•福岡に身を投げ出し、限界イラストレーターとしての地位を獲得し現在の東京に至る。
パソコンで絵を描き始め18年。
イラストレーターの活動を始め7年。
現状
「絵で食っていくのは難しい」
つくづくそう思う。
まじ意味わからないくらい絵で食っていくのは難しいなと身に染みて感じる。
10年前に画塾の先生が言ってたことは間違ってなかった。
もう3年以上も事務所所属のプロのイラストレーターとして、様々な大きいお仕事をさせていただいているけど、それでも難しいなと感じている。
周りの同級生達が安定して幸せな暮らしを送っている中、いい大人が波のある生活にヒィヒィ言ってて何してんだと毎日のようにバッドに入るが、
数年後はちゃんと「絵で食ってる」に違いないと淡い期待を抱き今日を生きている。
一貫してこの言葉をある種の人生における足枷のような表現をしてきたが、これは僕の人生にとっての大きなテーマであり原動力であると感じている。
そしてこのプロセスを経て、僕自身が食えるようになることでこの言葉により説得力が増すと思っている。
だからもし数年後数十年後、絵を描く仕事に就きたい!と目をキラキラさせている少年に出会うことがあれば
「絵で食っていくのは難しい」と伝えてあげたい。