【W杯】日本代表ドイツ戦の意義と今後の展望
サッカーは万国共通の唯一のスポーツ競技であり、「代理戦争」とも言われるのだが、戦争や決闘に代わる人々の好戦意識や、憂さ晴らしを昇華するものとして機能しており、世界平和や人々の連帯交流に大きく寄与しているとわたしは考える。
カタールW杯で、下馬評が悪かった日本が世界最強ともいわれるドイツを2-1で破り、W杯史上ナンバーワンの番狂わせとまで言う人がいる。日本でもわたしを含め多くの人が監督の采配を批判し敗戦を予想していただけに、さもありなんと言える。
試合をライブで最初から最後まで観たが、ボールポゼッションと選手の個々の能力は圧倒的にドイツが勝っており、前半だけで見ると引き分けも難しいと思われた。ところが後半以降明らかになったのは、日本はその分、戦術、特に情報戦でわざと混乱させてドイツを出し抜き、選手交代、得点のタイミングもピッタリハマっていた。後から明らかになったのだが、森保一監督は、このために20以上の戦術パターンを想定し、相手が対応する前に次々変えることで、こちらが主導権を握ることに成功していた。「戦術がはっきりしない」「メモばかり取る」というのはこの日のために非常に意味があったのだ。もちろんゴールを決めた堂安、浅野、起点となった三苫、遠藤も素晴らしかったが、これらの奇策のために出場できなかった選手を含め、全てのスタッフでもぎ取った勝利というのは否定できない。うすら涙を浮かべ大迫や原口を外したシーンも今となっては理解できる。全てにおいて気まぐや厚情ではなく、綿密なシュミレーションのもと、どうしたら勝てるのかを真剣に考えていたようだ。
実は森保監督は、4年前、下馬評を覆し決勝トーナメントに進出した前回大会では西野監督のもとコーチとして関わっており、今回は、前回惜しくも敗れたベルギー戦から「時を進めてくれ」とだけサッカー協会から言われただけだという。今回の試合は強豪相手に、一方的に押し込まれながら短い時間にカウンターから2得点したことが共通しており、前回大会のベルギー戦に時が戻ったと言ってもいいだろう。同じく2010年に下馬評を覆してベスト16まで駒を進めた岡田武史監督は、直前のインタビューで、4年間ぶれずに準備をしてきた森保監督を評価しており、代表監督の仕事とはどういうことかも語っているので必聴だ。堂安のブレイクも予言している。
【
https://www.youtube.com/watch?v=F48eIqqQ1TY
今後の日本代表の展望
今後かなりの確率で予想される事態
次節日本代表はコスタリカと戦うが、グループステージ突破には、勝利が必須になると思われる。引き分け以下ではかなり難しくなると考える。初戦勝利しても死のグループだから一つも余裕はないのだ。
次節裏試合のドイツ対スペインは、「談合的」な試合となり、引き分けもしくはドイツの勝利が堅いと思われる。もともとドイツ、スペインのワンツーフィニッシュで想定していたので、この2チームはなんとかしてこういう構図に持っていこうとするのではないか?(八百長をするということではない! 今までのW杯の歴史を見ればこういう結果になるということ)そうなると勝点は以下の通り
スペイン4or3
ドイツ3or6
日本がコスタリカに引き分け、もしくは負けた場合
日本4or3
コスタリカ1or3
最終節において、日本はスペインと同じような勝点であたり、両者絶対に負けられない戦いとなる。コスタリカ戦の試合を観たがスペインは7-0で圧倒しており、コスタリカにはシュート1本も打たせなかった。同国のNo. 1チームバルセロナをそのまま移植したかのような早くて強くて正確なパスを90分間やるチームで(かつて日本はこれを目指していた)、選手の技術、体格、強さとも日本よりも格上、森保監督がどんなに戦術を駆使しても難しい面があると思われた。おそらく前回大会の敗れたポーランド戦のようになるのではないか? しかも今回はスペインが大量得点しており勝点で並んでも得失点差では勝てない。当然フェアプレーポイントも問題外。2戦目のコスタリカに勝っておけば、勝点6で負けたとしてもドイツとの争いとなり、勝点もしくは並んだとしても得失点差でいける可能性がある。
過去W杯では、日本は、勝てると思われる2戦目を不可思議な形で落としている
2006年 対クロアチア 0-0 PKストップも決定機を決められず敗退
2010年 対オランダ 0-1
2014年 対ギリシア 0-0 前半の早い段階に1人少なくなった相手に決めきれずドロー
2018年 対セネガル 2-2
非常に苦労している。
しかしこういう事例があれば、過去から学び改善できるというふうにも捉えられる。
今のコスタリカには、8年前、ナバスのスーパーセーブを中心にベスト8まで行ったときの強さは見受けられなかった。その時のメンバーも結構いるが、年齢を重ねてその時よりもどうしてもプレーの質量は落ちているだろう。さらに8年前、日本代表はそのコスタリカと親善試合を行い4-3で勝利している。決して難しいチームではない。
コスタリカは複数得点による勝利が求められており、かなり前がかりになって攻めてくると言われているが、このパターンだとドイツ戦と同様、鉄壁に守ってカウンターという森保監督が得意とする戦術が使え、日本に有利だと言われている。
予想に反して、コスタリカが8年前成功したガチガチに固めてカウンターという戦術を取ったとしても、日本はアジア地区予選でそういうチームをたくさん経験しており、勝てるのではないかと思われる。
わたしがまだサッカーに全く興味がない、20年以上前、日本がアトランタオリンピックで初戦でブラジルを破り、マイアミの奇跡と言われたことがあった。当時はインターネットもなく、わたしはテレビも新聞も読まない生活をしていたが、銭湯にいると知らないおじさんが「日本勝ったぞ」と言っていて、サッカー知らないわたしでもそれがすごいことだとわかった。今回も似たような雰囲気を感じる。
1996年アトランタ五輪 日本代表
対ブラジル 1-0
対ナイジェリア 0-2
対ハンガリー 3-2
得失点差でグループリーグ敗退
初戦で奇跡を起こしても、次節負け、その後どんなに頑張っても無理
そんなことを日本はもう26年前に学んでいる。
この時の監督は、西野朗監督(初陣)
2018年の前回大会は、その西野監督が指揮をとった。
その時、メンバーがベンチも含め、自分の得意とするポジションじゃなくてもチームのために受け入れ、かつ攻撃重視で躍動するようにプレーしているのを観て、わたしは今でも勇気をもらっている。サッカーとはそういうスポーツである。