地獄の如く噴出す熱湯温泉のような人々のエネルギーに飲み込まれてしまいそうになった|大分・別府旅行記
大分は別府へ、一泊二日の旅をしてきました。超久しぶりの旅でした。
コロナがこの世に爆誕する前は、一年に二回の海外旅行を目標にして、あらかた達成してきました。でも、コロナ禍ではこの小さなワンルームでの楽しみ方を見つけ、楽で安心した生活を送ることにすっかり慣れ切ってしまいました。今更どこかに行くなんて面倒だ、そんな気持ちでいっぱいでした。
月〜金まで仕事をし、土曜には終日ポッドキャストの収録や編集をし、日曜はだらだら韓ドラを見漁る。これがわたしの1週間のルーティーンとして定着して久しかったのです。もうずっと、この小洒落た街に、一人で暮らし続けることになったとしても、あんまり文句はないなと思っていました。
ただ、この旅で、ただの日本の一つの地方で、そしてたったの一泊二日で、なんだかとても衝撃を受けたのです。衝撃、というよりも、なんだろうか、波に飲まれそうな勢いを感じたのです。
なぜ旅をすることになったのか、どうして別府に行くことになったのかについても書きたくて仕方がないのですが、さっき書いていたら長くなりすぎてしまったので最後に余白があれば書きたいと思います。
兎にも角にもエネルギーに圧倒された
正直に言って、国内旅行に魅力を感じたことがなかった。色々行ったことはある。あるんだけど、まあ日本の地方だ、くらいにしか思っていなかった(失礼ですみません)。国内を旅するくらいなら、体力と気力のあるうちにできる限り海外に行きたいと思っていたのだ。
今回色々な偶然に偶然が重なりまくって、とにかく別府に旅行することになった。もちろん一人で。
わたしが配信しているポッドキャストのリスナーさんが大分に住んでいらっしゃるとのことで宿を紹介してもらった。そしてたまたま旅の日程と別府が開催していたアートマンスというイベント?が重なっていたらしく、宿の女将さんからよかったら他のお客さんと一緒に回らないかとお誘いいただいた。
特別予定を立てていたわけではなかったので、二つ返事でありがたく同行させてもらうことにした。
よく分からなかったのだけれど、まあなんかちょっとしたイベントがあるんだろうくらいに思っていた。近場の公園で、寂れた活気のない催しものがあったり、まばらな拍手が聞こえてくるようなパフォーマンスがあったり、そんな程度だろうと思っていた。
が、わたしの予想は大きく外れた。そう、大きく。大きくだ。
その日(2021/12/18)は、オリンピックやパラリンピックのジャージをデザインされた有名な服飾デザイナーさんが考案した?新しい形のお祭り?奇祭?があるというのだ。よく分からないではないか。よく分からないけど、小さな公園で催すようなレベルの話ではなさそうではないか。ではさっそく写真を見ていただこう。
とまあ、このパフォーマンスもすごかったのだが、わたしが圧倒されたのはそこじゃない。この集まった地域の人たちだ。
わたしは女将さんに連れて行っていただいたのだが、そこに来ていたありとあらゆる人が知り合いなのだ。しかも、みんながみんなのことをちゃんと知っているのだ。どういうことかというと、「どこどこの〇〇屋さんの人」みたいな感じで紹介される。「XX町に住んでる人」とか「〇〇ちゃんのお母さん」とかじゃない。どこで何を生業にしている人なのかを紹介されるのだ。
これ、前提として、みんなが何かしらの肩書きがしっかりあるということなのだ。しかもそれを、地域の人は大体知っているのだ。田舎なら当たり前かもしれないんだけど、東京に住んでいるわたしからしたら、ありえない光景にすら思えた。
そもそも、ただの会社員とか、主婦とかいないの?という感じだ。本当に紹介される人はみんな、どこどこでゲストハウスやっているとか、絵本作家とか(こちらは本気の有名人だったw)、お洋服屋さんとか、とにかく肩書きが曖昧だったり、説明しづらいような人が全然いなかったのだ。
もちろん、女将さんの繋がりだからというのはあるとは思う。それに代々家を継いでいるというのもあると思う。あると思うけど、それにしても一人一人が精力的に生きている、そう、"生きている" 印象をものすごく受けた。みんな、めちゃめちゃ元気なのだ。スナックで働いていると思うのだけれど、歳を重ねると、元気な人と、元気じゃない人でものすごく二分される。元気じゃない人は、寂しいのか愚痴ばかりだったり、体の不調を訴え続けたりするんだけど、わたしがお会いした別府の人は、もれなくみなさん超元気だった…。カラッとしてて、でも不躾では決してなくて、わたしにも優しく心を開いてくれてるような器の広さすら感じました。
それと同時に、なんだか陳腐な表現だけれど、人のつながりもものすごく感じた。なんだろうな、うわべなただの知り合いとかじゃないというか、みんなで助け合って生きている感じがしたんです。例えば、絵本作家さんの絵本をゲストハウスの店主が読み聞かせしていたり、女将の温泉に別の宿の女将が入りに来たり、雑貨屋さんで古着屋さんのポップアップを開催したり。
それぞれが人生を懸けた責任のある事業を持っているから、その大変さや楽しさをみんなが分かっているから、だからこその助け合いなのではないかと思う。
ものすごく個性的でエネルギッシュだった。わたしの母くらいの年齢の方々もたくさんいたと思うし、わたしもエネルギーあるって言われてきた方だけど、圧倒されて何回「すごいですね…」と言ったか分からない。もう何十回と言ったところで、言い過ぎて恥ずかしくなり、わたしの言葉の引き出しに「すごい」以外の語彙はないんかいっとつっこみたくなるほどだった。
東京でこの感覚を味わったことはほとんどない。大学生の時に行ったどっかのスタートアップの集まりのツンツン尖った部分を超マイルドにさせたくらいの熱気があった。わかりますかね、若いスタートアップって最初は熱気で押し通すようなところがあると思うけど、もうそのくらいの熱気なわけですよ。事業に対する熱気というよりも、生きることに対する熱気のように感じましたが。それが、ただの地域の人々なわけですからね。「事業やってる人の集まり」ではなくて、ただの「地域の集まり」ですからね。すごいです。
今わたしが住んでいるところじゃ考えられませんよね。。そもそも別府のそのイベントのようなものが開催される気配なんてありませんし、あったとしてもわたし自身も知らんぷりすると思いますし、行ったとしてもぼっちでしょう。顔見知りすらいないんですよ。毎週通っているパン屋の店員だって、いつ行ってもまるで初めて来た客のように対応してくるじゃないですか。
だから、連れて行ってくれた女将さんもずーっと誰かしらとお話しされておりました。ちょっと歩けばすぐに知り合いがいて、お話しして、わたしにもご紹介いただいて。やっぱり新鮮だ。わたしは近所を30分、いや、1時間歩き回ったって誰一人として知り合いに会うことはないんだから。
東京は、驚くほど人がたくさんいて、流行の発信地で、個性的で若いエネルギーで充満されている街だと思っていた。
でも今回、別府を訪れてみて、東京はむしろ埋もれて隠れるのに最適な場所なのかもしれないとすら思えた。誰にも素性を明かさずに暮らしていける。どこで働いているかも言わなくていいし、怪しいネットビジネスをやっていたって、バンギャの追いかけをしていたって、地域の人にバレる心配なんて微塵もないわけで。夢追い人のままオトナになろうが、成人ニートになろうが、地域の目を気にせずに息を吸えるのだと思う。その分、反対に自己顕示欲が肥大化してしまう人がいるのも致し方が無い、とも思う。
ただ、やっぱり孤独だ。東京は、孤独だ。
この孤独が快適だと感じられてしまうほど、もうわたしは東京に毒されていることに気がついてしまったし、慣れ腐った日常をただ過ごすことに満足しかけていたことにも気づかされてしまった。
もっと生きなければ。
最後に、地獄温泉の写真をお届けします。地獄と言われるほど熱すぎて入浴することはできないため、観光スポットになっているのだとか。まじですごい勢いで噴き出してて、これまたエネルギーを感じましたね。すごかった。。
冒頭で書かなかった、今回の旅のセレンディピティーの連続についてメモ程度に列挙させてください。人生は偶然で成り立っているのだと、改めて感じました。
たまたま聞いていたポッドキャスト番組の人がハワイに住んでいることが発覚
わたしの相方もハワイに住んでいるということを、ラジオレター内に記載したところ、二人をリアルで引き合わせることに成功
意気投合し、初のコラボ回を実施することになった
コラボ回を事前収録したおかげで、ポッドキャストを始めて以来、初めて収録のない土曜日が訪れることが決まった
インスタライブ中に、どこか行こうかな〜とぼやいていたら、あるリスナーさんが行き先をサイコロで決めようと提案してくれた
インスタライブを見てくれていたリスナーさんから候補地を募り、その中に別府があった
サイコロでたまたま別府に当たった(小笠原諸島とかも候補地にあった)
別府に行くことをインスタで報告したら、別のリスナーさんが大分在住だった
その方が宿やご飯屋さんなど教えてくれた
良さそうな宿を即決したら、その女将さんと知り合いだそうで、しかも女将さんもポッドキャストをやっていることが発覚した
たまたまアートマンスと重なり、わたしが一人だったのでイベントに誘ってもらった
イベントの帰り道は女将さんと二人きりだったので、車内でポッドキャストを収録することができた(女将さんの番組で放送予定)
大分在住のリスナーさんも古着屋さんを営んでるそうで、会いに行くことができた
ざっとこんな感じでしょうか・・・?!番組のインスタのフォロワーなんぞ180人程度なのに、ここまで偶然か重なることってあるのでしょうかといった具合で、半ばパニックのまま帰宅する流れとなりました。
偶然と出会いと、暖かい人々に感謝でございます。。
ちなみに行きに遭難しかけた話なんですが、大分空港から別府までのバスが運休で、杵築駅までバスで行こうと思ったのですが、なぜかわたしの目には「杵築IC」しか見えず、ちょっとバスの運転手さんに不思議がられながらそのまま杵築ICで降車したら真っ暗でただの高速道路で、もちろん人なんて歩いてないし、タクシーもないし、雪も降って来たしで半べそになりましたのよオホホ。タクシー会社に電話して「出払っちゃってるから20分くらいかかる」って言われたんだけど、なんかすげー信用できなくて、無心で歩いてたら高校があって、近くにバスを発見し、でも発車しそうだったのをなんとか運転手さんに気づいてもらって乗ることができました。まじで凍え死ぬかと思ったなめてた田舎。。。
でも旅ってやっぱりいいですね。自分の意思でどうにかしようと思わないと進めない時間は、日常を生きていたら意外と少ないものなのだと思わされました。