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獣医師、獣医学生の皆さん。今、未来に希望を持てていますか?
獣医師、獣医学生の皆さん。
あなたは今、自分の未来に・獣医業界の未来に、希望を持てていますか?
「獣医ってなんでこんなに報われないんだろう」
「なんでこんなに苦しいんだろう」
「もう疲れた」
大好きな友人たちは口々にそう言いました。
「もう獣医業界に先はないよ」
憧れだった先輩は頑張って頑張って頑張りすぎて心と体を壊し、悲しそうに呟きました。
「こどもができても獣医にはさせないです。僕ももう獣医業界を離れます。」
結婚してこどもが生まれた後輩は、悔しそうに、でもどこかホッとしたような顔で言いました。
私が大学を卒業して数年後。
学生時代からNGO活動や芸能活動で忙しく、テスト前にぴーぴー言いながら勉強していたダメ学生の私からみたら神様のようだった優秀な友人たちが、会うたびに辛そうな顔で将来を嘆いているのがなんだかとても悲しかった...
こんにちは。獣医師の石井悠紀子です。
Beyond VETという「獣医師・獣医学生向けキャリア育成プログラム」を運営しています。
今日は、獣医業界が抱える課題と向き合いながら、どうして私と2人の仲間がこのようなプログラムを始めたのかについてお話しできたら良いなと思っています。
「悩まない」獣医学生、「悩む」獣医師
私たちは
小さい時からずっとずっと獣医師になりたくて、
受験戦争を勝ち抜いて、
何年も何年も勉強して、
国家試験を乗り越えて・・・
ながーーーーい努力を乗り越えてやっと獣医師になります。
「幼い頃からの夢を叶えられる人なんてめったにいないよ!」
「獣医学科なんだ!優秀なんだね!」
「獣医さんか!将来安泰だね〜」
多くの人からこんな言葉をかけられます。
そう。私たちは小さい頃の夢を叶えたんです。
外から見たら「獣医師」は順風満帆な人生に見えるのかもしれません。
でも、獣医師や獣医学生の業界にいる身としては
「果たして本当にそうなのだろうか・・・?」
というところが本音です。
周りを見渡せば、獣医学生は6年間も勉強しても
・臨床以外の進路がイメージがつかない
・臨床辛そうだし、安定志向だからとりあえず公務員でいいかな
・数件の病院実習に行ってその中から”雰囲気”で就職先を決める
という人が意外に多かったり、
獣医師になって数年経った頃、
・なんとなく臨床に行ったけど、なんか想像しているのと違った
・公務員試験に受かって就職したが、自分がやる意義がわからなくなった
・仕事は好きだけど、本当にこのままでいいのかわからない
といったことで悩む獣医師がとても多い印象です。
「獣医師になる」という夢を叶えることに必死だった私たちは、その夢の先まで思い描けていなかったのかもしれません。
だからこそ、キャリア像を描いているべきだった年齢になったとき、「なんか違う」が起こってしまうのではないでしょうか?
自分の将来像をちゃんと考えられる環境がない
ではなぜそのようなことが起こってしまうのでしょうか。
私たちは獣医学科卒業生の悩みを深掘りしていった結果、大きく3つの原因があるのではないかと考えています。
①一般的な就活がない=自己分析などをしたことがない
②"獣医師免許"の存在が大きすぎて「獣医師になる」がゴールになってしまう
③臨床・研究・公務員・・・進路たくさんあるよと言われ思考停止
①一般的な就活がない=自己分析などをしたことがない
一般の4年制の学部の方がするような企業就活をする人は獣医学科には多くありません。
私立の獣医学科では4年制大学の学生と交流すらない学生も多いので、一般的な就活の緊迫感を知らないまま社会人になることも珍しくないでしょう。
動物病院などへの就活も「実習に行って合うところを決める」なので、「合うか合わないか」であって、自分の存在価値を深掘りすることはありません。
専門性が高い業種なので免許があるだけで価値が認められ、「WHY YOU」なんて考えなくても就職先は見つかってしまう場合が多いのです。
自分がどういう存在なのか、自分の価値観を深掘りする経験もないままに、ただ「就職先を探す」という作業だけを経て社会人になっていきます。
そして必死で働いて働いて、いろんな困難にぶつかって、ある日ふと思うんです。
あれ・・・私が本当にやりたいことってなんだったんだろう。
私が一番輝ける場所ってここなのかな?
生きていくために考えなければならない本質的なその問いにやっと出会えた時には、養わなければいけない家族がいたり、転職できるほどのスキルがなかったり、なかなか軌道修正が難しい状況にあることもしばしばです。
そんな「キャリアに対する考えを養う環境が無い現状」に私たちは懸念を抱いています。
②"獣医師免許"の存在が大きすぎて「獣医師になる」がゴールになってしまう
獣医師や獣医学生はゴールに向かって走りきれる努力家ばかり。
でも「獣医師になる」がゴールになってしまっている人がたくさんいます。
夢が叶ってしまったら、次に目指すものが見えなくなってしまったんです。
獣医師免許は目的ではなく、手段のはずなのに。
「獣医学科を卒業するのだから、獣医師にならないともったいない」
そう思ったことがある人がほとんどなのではないでしょうか?
「獣医師」以外の進路を在学中に時間をかけて考えた事がある人はどの程度いるのでしょうか?
獣医学科を卒業し国家試験を受けて「獣医師資格を取得する」という進路選択をする中で「獣医師資格を活かしたい」という思いだけが先行して、「獣医師資格を”どう使うか”」まで就職前に考えられている獣医師・獣医学生はきっと多くないはずです。
「獣医師」という手段をどう使って何を実現したいのかについて、自分の想いを自分の言葉で語る事ができ、さらに行動に移せている人に会う事は非常に稀に感じられます。
③臨床・研究・公務員・・・進路たくさんあるよと言われ思考停止してしまう
獣医学科に入ってまず最初に言われる、
「獣医師には、臨床・研究・公務員などさまざまな進路選択があります」
という言葉。
そして「国家資格」という専門性も相まって、「獣医師免許さえとればどうにかなる」と思考停止してしまう人が非常に多いように感じられます。
Beyond VETのチームメンバーで、400人以上の獣医師のキャリアカウンセリングを行ってきた在田さんもこのようにおっしゃっています。
「獣医という職業の特別感」が良くも悪くも働き、自分の選択肢を狭く捉えてしまうことが多々あるのではないでしょうか。
獣医学では動物の治療や病気の研究だけではなく、生物、微生物全般の事を幅広く学べます。しかし、約7割の方は大学卒業後に臨床の仕事に就くと思います。
臨床への進路はもちろん応援したいですし、それを否定するつもりは一切ありません。
本来、大学卒業後に選べる進路が多いはずが、「自分で進路の選択を狭くしているのではないか?自分の選択肢の幅を知る事に興味は無いのか?」
僕にはどうしてもそのように見えてしまっていました。
確かに、「獣医師免許」があれば、手に職をつけて食いっぱぐれることはないでしょう。
でもそれだけでは、マズローの欲求5段階説で言えば一番下の階層の「生理的欲求」や「安全の欲求」が満たされるだけで、「自己実現の欲求」とかには全然至っていないわけです。
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だから私たちはBeyond VETを作った
だから私たちは、「獣医師・獣医学生が自分の将来像をちゃんと考えられる環境・手がかりがない」という課題に対して新しい解決の糸口を見つけたくて、Beyond VETを作りました。
獣医師、獣医学生が「自分らしさ」を見つけ、なりたい自分になるために必要な学びを得て、共に羽ばたける仲間を作れるプロジェクト、コミュニティとして。
獣医師という太い軸に「自分らしい〇〇」をたくさん掛け合わせて、一人一人が生き生きと、自分らしく働き、自分の能力を生かして社会に最大の価値を提供できる環境を選べる。やりたいことに向かってチャレンジできる。自分の人生充実しているなと思える。
そんな獣医師が増えて、社会の中で獣医師が活躍する場がもっともっと増えて、たくさんの獣医師達が輝いたら、きっと獣医業界の未来が少し明るくなるはず。
私は獣医師が好きです。獣医学生が好きです。
世の中的に言う「高学歴」「エリート」な人たちと比べても遜色ない、優秀な人材が獣医業界にはたくさんいると思っています。
なのに、なんだか幸せそうじゃない。自分の人生に迷っていたり、活力を失っていたり、獣医学科選んだの間違いだった!なんて言ってる人たちもいる。
それがどうしても悲しい。その現状を変えたい。
人生の長い期間を勉強に費やして、たくさんたくさん努力をして獣医学生に、そして獣医師になったはず。こんなに頑張ってきたんだもん。もっともっと輝いてたっていいじゃないか!
獣医師免許は鎖でも呪いでもありません。高く、遠く飛ぶための翼です。やりたいことをするためのパスポートです。
小動物臨床、大動物臨床、公務員、動物関連企業、動物に関係のない企業、起業など、どこで働くのが正解か?に模範解答なんてない。
だって私たちは一人一人違う人間なんだから。
獣医師という要素は私たちのアイデンティティの大きな部分を占めるものだと思います。
でも、「あなた」を構成しているのは「獣医師」という要素だけではないはずです。
私は優秀な人間ではありません。
まだ、何者でもありません。
でもとにかくやりたいことにまっすぐに、自分の作りたい未来に向かってまっすぐ走り続けています。
これを読んでくださっているあなたが「なりたい自分」と「作りたい未来」を見つけて、それに向かって走り出せたら、そして「あなた」と「あなた」と「あなた」と「私」の「作りたい未来」がかけ合わさったらなんだかきっと素敵なことが起きるはず。
そう信じて、BeyondVETは一歩を踏み出しています。
まだまだ始まったばかりのプロジェクト。未来は誰にもわかりません。
私たちと一緒に「獣医師になる」のその先の夢、見つけてみませんか?