感情と記憶　～木登り～

ある日
子どもが木登りしているのを見た

なぜだか
“失敗するなよ”
と声を掛けたくなる
そういえば毎回木登りを見ると
“失敗するなよ”と思う
そう毎回だ

なぜだろう？
なんとなくそう思った瞬間
過去の自分が想起された

木登りをしていた

得意満面の笑みを浮かべ
上まで登っていく
自慢げに下にいる友達に
登ってくるように催促している

友達を呼ぶために
葉っぱの隙間から顔を出そうと
枝に足を掛けた

ポキッ

背中から地面に叩きつけられ
気付くと友達に笑われていた

しまった！
痛みよりも恐怖よりも
失敗した感が
自分の中に拡がっていた

全く忘れていたのに
木登りを見たことで
過去の自分の記憶を想い出す

自分が失敗した感情
これが無意識に湧き上がってきて
“失敗するなよ”と思うのか

自分の中で納得感があったし
新たな発見をした気持ちになった

そして私の中では
記憶と感情はセットになって
仕舞い込まれている

それが仕組みなのか
人の神秘に触れた気がした