ニコチンとタールによる健康被害の違いとは?紙タバコの危険性と影響
"タバコの有害物質" と言われて、まず思いつくのが「ニコチン」と「タール」。
その有害性については以前から取り上げられており、CMや街中で見かけることも多いので、喫煙者だけではなく非喫煙者の方にも認知されている言葉だと思います。
しかし、ざっくりと有害物質と言っても、このニコチンとタールはそれぞれどのような特徴があって、さらにどのような危険性や影響があるのかまでを詳細に答えられる方は意外にも少ないのではないでしょうか?
今回は、ニコチンとタールによる健康被害の違いについてや、周囲への影響についてを詳しく解説したいと思います。
「禁煙するつもりはない!」と固い意志をお持ちの方も、「禁煙しようと思うけどなかなか出来ない…」となんだかんだで吸ってしまっている方も、気持ちが変わる内容かもしれません。
ニコチンとタール、体に悪いのはどっち?
結論から言うと、どちらも体への悪影響が大きいことに変わりありません。
タバコの煙には約4000種類もの化学物質が含まれており、そのうちの約200種類は人体に影響のあるものだと言われています。
その中で代表とされるのがニコチンとタールというわけです。
ニコチンとは
ニコチンの主な特徴は、
・依存性が高い
・摂取後すぐに血管を収縮させる働きがある
→タバコが習慣化するきっかけ
となっており、血管の収縮作用による心拍数上昇などから病を引き起こす場合がありますが、体への直接的な害というよりは、依存性が強いことでその他の有害物質を習慣的に取り込むようになってしまうことが問題とされています。
タバコに含まれるアンモニアがニコチンの体内吸収を促進したり、ニコチンがニコチン受容体と呼ばれるものに結び付くことでドーパミンを増加させ一時的な快感を得られることが、依存性の要因と考えられています。
また、驚くべきことにニコチンは、薬物であるヘロインやコカイン、またアルコールよりも依存症になる割合・超過死亡率が高く、一方でそれらによる依存から抜け出すことは同じくらい困難と言われてます。
タールとは
タールの主な特徴は、
・粘質性、着色性が高い
・独特な強い臭いを発生させる
・発がん性物質が多く含まれる
→健康を害するきっかけ
、ニコチンより体への直接的な害が強いのがタールです。
タールはタバコに含まれる一酸化炭素やガス状成分を除いた、複数の有害物質の呼称であり、単一物質ではありません。
非喫煙者と喫煙者の肺を比較した写真からもその粘質性・着色性がわかるように、長期間ノドや肺に留まることで肺炎や癌を発症させたり、歯や部屋の壁紙を黄ばませたり、タバコ臭と言われる強い臭いも全て、タールが原因と言われています。
依存性を高めるニコチンと有害性の強いタールが合わさることで、体にとって最悪の状況が作られていると言えます…。
有害物質はニコチン・タールだけじゃない?
実は、タバコに含まれる強い有害性を持つ物質はニコチンとタールだけではないんです。
・一酸化炭素
・ホルムアルデヒド
・アセトン
・ヒ素
・トルエン
etc...
特に一酸化炭素は、ニコチン・タールと並んでタバコの三大有害物質と呼ばれています。
その主流煙に含まれる量は車の排気ガスとほぼ同じで、酸素を運ぶ力を奪うことから心筋梗塞や不正脈などを引き起こしやすくすると言われています。
ホルムアルデヒドは、発がん性が強く、気管支喘息や慢性気管支炎などのアレルギーの原因にもなると言われている物質です。
他にも、アセトン(ペンキ除去剤に使用される)、ヒ素(アリ駆除剤に含まれる)、カドミウム(カーバッテリーに使用される)、トルエン(工業溶剤に含まれる)というように、他に使用されているものを見れば体に有害であることは明らかです。
加熱式タバコ・電子タバコ・紙タバコでの違いは?
タバコに含まれるニコチン・タールや他の有害物質の主な特徴や健康被害についてわかりました。
最近は特に、タバコの有害性を指摘する広告が多く見られたり度重なる増税の影響で、喫煙者の方の中にも禁煙は難しいけど体や経済への負担を減らすために加熱式タバコや電子タバコに移行したという方もいるのではないでしょうか?
次は、最近注目されている加熱式タバコ・電子タバコは紙タバコに比べて本当に健康被害が少ないのかについて比較してみたいと思います。
加熱式タバコ・電子タバコと紙タバコの危険性と影響の比較
〈加熱式タバコ〉
加熱式タバコは、紙タバコと同じくタバコの葉を使用していますが、火で燃焼させないため紙タバコに比べて有害物質の発生が少ないと言われています。
しかし、タバコの葉を使用していることに変わりないため、発がん性物質をはじめ、多くの種類の有害成分が含まれているのも事実です。また、周囲の人への受動喫煙も完全に防ぐことはできないと言われています。
禁煙目的で加熱式タバコを使用しても、ニコチンは含まれてるのでその依存から断つことは難しいでしょう。
〈電子タバコ〉
電子タバコは、紙タバコや加熱式タバコとは違い、タバコの葉ではなくリキッドを水蒸気にして吸入するもので、日本で流通するものはニコチン・タールゼロのリキッドのみになります。
体に害のある主要な成分、ニコチンやタールが含まれていないので加熱式タバコに比べると健康被害は抑えられるでしょう。
しかし、ニコチンやタールが含まれていないものの、ホルムアルデヒドなどの他の有害物質が検出されたという研究結果もあるため、有害物質が全く無いとは言えません。
どちらもどの程度、健康に影響があるかはまだ明らかでないというのが懸念点ですが、加熱式タバコと電子タバコを比較してみると、タバコの主な有害物質であるニコチン・タールが含まれていない電子タバコの方が、健康被害は少ないと言えそうです。
電子タバコの中でも『JUUL』(ジュール)はランニングコストが安く、取り扱いも非常に簡単で満足感があると話題になっています。
周囲への影響の方が大きい?
ここまで、タバコの有害性や加熱式タバコ・電子タバコとの比較を見てきましたが、明らかに最も体に悪影響があるのは紙タバコだということは言うまでもありません。
これは喫煙者だけの話ではなく、周りにいる人や一番身近な家族や友人の健康にも影響するということです。
しかも、受動喫煙による非喫煙者の健康リスクは喫煙者と同レベルというデータもあります。
健康被害のデータ
〈受動喫煙が原因で死亡する人の数〉
60万人/年
(小児約16.6万人、成人男性約15.6万人、成人女性28.1万人)
〈受動喫煙による肺腺がんリスク〉
喫煙者、非喫煙者ともに約2倍
〈精神的苦痛リスク〉
喫煙者:2.15倍
非喫煙者:1.49倍
その他、気管支喘息・慢性気管支炎・心筋梗塞・不整脈・脳梗塞などの病気を発症させるリスクを高めるというデータも出ています。
受動喫煙が原因で様々な病気を発症しやすく、毎年60万人もの人が亡くなっているという事実をご存じでしたでしょうか?
ニコチンとタールによる健康被害の違いまとめ
ニコチン・・・依存性を高めるもの
タール・・・様々な病気を引き起こすなど体に直接的な害のあるもの
ニコチン、タール以外にも有害性の高いものが非常に多く含まれている
という成分の違いとタバコの危険性について見てきました。
先ほどのデータからもわかるように、タバコは健康を害する恐れの強いものです。
中でも紙タバコの有害性は非常に強いため、ここまでニコチンやタールの特徴や危険性を見て少しでも喫煙に不安を感じた方は、喫煙方法を変えるところから始めてみても良いかもしれません。
喫煙するときには、自分の体だけでなく周りへの配慮を忘れずに、時代に合わせた楽しみ方も考えてみてはいかがでしょうか?
〈参考記事〉
厚生労働省 喫煙と健康
受動喫煙が大人に及ぼす健康被害