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二人のアカボシ、あるいは君がいた夏

あかぼし。
明け方、東の空に見える金星。
明けの明星。

そんな星の名を冠したこの曲は、キンモクセイというバンドによって2002年にリリースされた。
最初に聴いたのはテレビだったか何だったか。
とにかく一発でハートを射抜かれた。
2002年当時、「二人のアカボシ」は当然懐メロではなく最新の流行歌だった。
なのに懐かしさが込み上げる。
二十代のあの頃の、あの夜の、高速道路の橋から見た港や工場の夜景が蘇る。
形容しがたいノスタルジーのようなものに全身を包まれた。
当時どの町にもあったレンタルCD店ですぐにCDを借り、録音して何度も聴いた。
いっそ買えばよかったかなCD、と今なら思う。

歌詞がまたいいんだな、これが。
ボーカル君が書いた歌詞なのだそう。
バンド名の由来はボーカル君が幼い頃から家の前にあった金木犀の香りが好きだったから、とのこと。
1970年代の歌謡曲やニューミュージックもこよなく愛してるんだって。

《そこに色々な要素を取り入れて、懐かしいが新しい”キンモクサウンド”を作り出している》※Wikipediaより

だからか!
私が感じた懐かしさは錯覚ではなかった!

このように、一目惚れならぬ一耳惚れをしたのはじつは二度目である。
一度目は、Mr.Childrenの1stシングル、「君がいた夏」だった。

みんな若い!!
(「君がいた夏」ミュージックビデオより)

リリースは1992年。
当時毎日聞いていたFM802で、月替わりの《邦楽ヘビーローテーション》に選ばれたことにより、この曲を知った。
最初に聴いたときの衝撃たるや。
歌と同時進行で私の目の前にメロウな夏の物語(想像)が鮮やかに展開していった。

舞台は海辺の避暑地。
主人公の若い青年(少年)は夏のあいだだけやって来る女性(少女)のことが好き。
毎年来るのは別荘があるから?
てことはお嬢様?
青年(少年)はたぶんジモティー。
住む世界が違っても夏が君を運んできてくれる。
海。
自転車。
ひまわりの坂道。

繰り返される《また夏が終わる》というフレーズに胸が締め付けられた。
私にそんな素敵な経験はないけれど、まるであったかのような、ゆく夏を惜しむ切なさで溢れそうだった。
いても立ってもいられず、駆け込んだ近所のCD店でめでたく「君がいた夏」を購入。
以来、陰ながら彼らを応援する日々は続いた。

Mr.Childrenのその次のシングルは、かの有名な「抱きしめたい」だ。
そこからの彼らの快進撃は誰もが知る通りである。
そのちょい前の、まだミスチルが全然有名じゃなかったときに、「君がいた夏」に一耳惚れしたという事実を、私は今でもうれしく思っている。

好きな音楽ってさ、語り出すと止まらなくなるよね。

#キンモク #ミスチル
#創作大賞2024 #エッセイ部門

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