
競技に必要な持久力とは
昨今の事情による影響もあり多くの学校で部活動も活動を休止しているところが多い。私の患者さんにも怪我で治療中のクライアントと話しをしていると、チームとしての練習不足が心配との声もちらほらと聞こえてくる。中には休止期間のせいで、練習再開時の走り込みがきつくなるのが怖いと話す人もいる。
競技種目にも左右されるが走り込みに代表される持久力。持久力とは何を意味しているのだろうか。
競技における持久力を分解してみる
まず、持久力を分解すると二つに分けることができる
①個人におけるパフォーマンスの維持能力
②チームパフォーマンスの維持能力
持久力と言えば、個人におけるパフォーマンスの維持能力を指す人が最も多いのではないでしょうか。
チームパフォーマンスを維持するためにも最低限の個人のパフォーマンス維持能力は必要不可欠であるがチームパフォーマンスを維持できる量があれば十分とも言える。
それぞれを少しずつ考えてみよう。
私はラクロスに関わっているのでフィールド競技(サッカーとかグランドホッケーとか)をイメージして読んでもらえるとうれしい。
個人におけるパフォーマンスの維持能力
個人におけるパフォーマンスの維持能力こそが持久力の本質的な部分となる。もしくは、フィールド上における仕事量をどれだけ長くこなし、チーム内における個人の質のある仕事を維持し続けられるかとうことだ。
しかし、チーム内で持久力というと、〇〇km走や一試合当たりにどのくらい走っているなど単純な量に換算されることが多い。これは非常に残念な見方である。
そうはいっても量的な評価でなければ客観性に乏しくなるため簡易的に評価するうえで使われているが多いのも事実である。その際の持久力は以下の二つに分解できる。
①直接的持久力(一定時間を動き続ける能力)
②間欠的持久力(運動と回復を繰り返しながら一定時間動き続ける能力)
多くのフィールド競技では間欠的持久力が何よりも重視される。
間欠的持久力に重要なのは以下の7つである。
1)短い時間で中等後〜高負荷の出力を回復できる能力である
2)筋持久力に代表される乳酸や解糖系における回路
3)最大酸素摂取量に代表される心肺機能の適応能力
4)中枢の判断能力の維持能力
5)コーディネイションの能力に代表される協調性の維持能力
6)心理的影響への適応能力
7)身体的な柔軟性、脱力といった身体操作能力
目的に合わせて走り込みのような持久力トレーニングは必要になるかもしれないが、個人のパフォーマンスの維持を学習するために走り込みのメニューを行うことは、不足が多いことがわかる。なぜならば、これはフィールド上での距離の量を測定しているにすぎず、仕事量や質については触れられていない。
1)〜7)はどれも非常に重要な要素である。そもそも、ある程度の距離を走り切れるだけの能力は不可欠であることは理解している。
※決して、必要ないと軽んじているつもりはありません。
だから、距離的な量に加えて、フィールドの上のすべての環境が相互作用し、試合以上の身体的、精神的負荷量をかけることができるメニューを提案することが望ましい。
ちなみにサッカー(スペイン1部リーグ)では、1試合あたり約11km程度走るがその55%〜60%は歩いているか低いリズムで移動している。残りの時間の15%は約時速13km前後、15%は時速17km前後、5%は時速20km前後、2%は時速23km前後である。一般的なプレーの継続時間は30秒(73%)、プレーの休息時間は30秒以下(93%)とされている。
チームパフォーマンスの維持能力
チームにおけるパフォーマンスの維持能力は個人のそれはとは異なる。
チームが全体として、戦術を達成することにフォーカスされる。
偏った見方をすれば、
個人がチーム内において任される仕事量をこなせれば止まっていようが、歩いていようが問題ない。
むしろ、あえて止まっていたり、歩いていたほうがよいケースも多くある。
例えば、よくあの選手はよくレンズに写る選手だと形容されることがあったり、ボールに必ず絡む選手と言われたりしますが、最大効率の仕事していることと仕事量が多いこと、走行距離が長いことはまったく別ものであること理解している選手はどの程度いるでしょうか。
チーム内での
仕事とは
ボールマンやオフザボールでの役割
量とは
いかにボールもしくはスペースに対して働きかけ、ゴールに結びつけるためのアクション
例えば、
歩きながらでもスペースを削る動きや、止まることでマークをくぎ付けにすること、相手の視界からできだけ姿を消すだけでも首振りの数を増やすことも仕事のひとつである
質とは
言語もしくは非言語を用いたコミュニケーションやコーチングも質にかかわるかもしれない。雰囲気やムードなど精神面もこれに含まれる。
たとえ、中枢的・身体的疲労によって走行距離が短くなろうとも、チーム戦術を達成させ仕事の量と質であるチームパフォーマンスを維持出来ていればその選手の持久力はあると言えてしまうである。
チームパフォーマンスを維持するために重要なのは、
単純に身体的な意味での持久力や個人のパフォーマンス維持能力だけではないことがわかる。
もちろん、チームパフォーマンスを維持出来ないほどであれば、再考する必要がある。
本当に個人的な問題なのか、
戦術に対しる対応能力(中枢的な疲労)によるものによるのか、環境不適応によるものなのか、
といった要素を見定めるのもトレーナーとしては必要な観察力である。
フィールド競技に求められる持久力とは(まとめ)
フィールド競技における持久力はチームパフォーマンスの維持能力と個人のパフォーマンスの維持能力に分解できる。
チームスポーツである以上、個人の持久力は最終的にチームの持久力に変換できなければ意味をなさない。
チームの持久力は、戦術を試合終了まで完遂しチームを勝利に導くために必要な持久力を指す。そのため、いかに各選手が自分の仕事量が最大効率で発揮できていることが重要であり、歩くことや止まることも含まれる。
したがって、単純に走り続けることだけが個人の持久力とはなり得ない。
戦術を完遂する判断力を維持する中枢性の疲労や心理的疲労も十分に加味される。また、短時間で高負荷の動作を繰り返すことできる回復力も重要である。
そして、すべてはフィールド上の選手同士の相互作用によるものである。チーム持久力をあげたいのであれば、より相互作用が高頻度かつ高速で行われる状況かで、時間を長く行うことが望ましい。
cf;ラクロスの場合
ラクロスの場合、根底にあるクロスワークをつけることや基本的なスキル(キャッチ、スロー、グラボー)に大半の時間を取られることが多いです。なぜなら、大学で始める選手が多く、まず競技としてプレーできるレベルまであげる必要があるからです。
指導を受ける時間を捻出するために、チーム持久力を上げることに時間を当てられず、個人持久力である走り込みといったメニューで代償せざる得ないのが多くのチームの現状でしょう。
この状況は一部リーグの一部のチームでも起こっている現象です。結果として、4年間の間に選手もチームも成熟しきれず、就職と同時に引退してしまう選手が大半です。私もその1人でしたが。
コーチやトレーナーを含めラクロス指導者がもっと選手がラクロスという競技を楽しめるように学生を指導できるようになれたらと思います。
あなたにとって、「今日の気づきは何でしたか?」成長のその先へ。