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背中 ~ 東大寺大仏殿 ~
「せ・・・せなかが・・・」
その日、東大寺大仏殿に入った僕の耳にかすかに聞こえてきた声。聞き覚えはないけど、どこか懐かしい声。その声の主は・・・
「上や上、ワシやワシ」
見上げるとそこにおられるのは盧舎那仏。いわゆる奈良の大仏さんである。
「だ・・・大仏さま?!」
「そうや、ワシや。実はお願いがあんねんけどなぁ」
「な、なんでしょう・・・」
「実はな、背中が痒くてかなわんのや。ちょっとかいてくれんか?」
僕はあわてて後ろにまわった。そして見上げる背中・・・
「キミ、それ背中ちゃうで」