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【10】酒と下戸

その子との連絡を控えるようになっていくらか経つ。それは嫌いになったからとか、面倒くさいというのとも少し違った気持ちがある。

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その子は鳥のように突然現れて、僕の生活の中に割り込んできた。時間があえば電話をしてみたり、メッセージのやりとりをしてみたり。たまには仕事中でも手が空いていればメッセージを返すのに夢中になった時もあった。無邪気な鳥は警戒する素振りもなく僕の懐に潜り込んできた。

「おはよう」から「おやすみ」。一人暮らしの僕はその挨拶をする相手はいなかったが、その子と挨拶を交わすだけで少しは人間らしい生活ができている気がした。"あなたは1人ではないよ"という充足感をくれているようだった。

その子は幸運を運ぶ鳥なのだと思う。「幸運なんてただの紐付けでしょ」と内心冷めた気持ちを持っていた部分はあったが、実際に仕事で失敗になりかけていたことがその子のおかげで事なきを得たことがあった。その時は幸運の鳥だと思わずにはいられなかった。

しばらくすると鳥は外に出かけることが増え、留守しがちになっていった。少し寂しさを感じるが、自由な鳥をカゴに閉じ籠めるのは良いことではないと思って見守ることにした。鳥は自由だ。そして鳥はまた誰かへと幸運を届けているのだろう。それを止めることはあまりにも無粋なように感じ、同時に「1人でも多くの人が幸せを得られたらいいな」と夕暮れの空を飛ぶ鳥を眺めた。

目にもの見せて孤独な人 言葉で酔わせて溺れる程

#日記 #写真 #景色 #空 #紫陽花 #夕暮れ #山 #東京事変

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