【9】ないものねだり
議題を生んだ「日本 対 ポーランド戦」。観戦していなくてもニュースやSNSでその内容を見た人も少なくないだろう。
FIFA ワールドカップ
4年に1度しか行われないワールドカップという大会は全ての国に出場権が与えられているのではなく、限られた枠の中からまず1つ目の戦いは始まっている。欧州13+1(開催国)、アフリカ5、南米4.5、アジア4.5、北中米カリブ海3.5、オセアニア0.5という枠があり、32ヶ国が出場している。日本はアジア地区予選を突破しワールドカップへの切符を手にしている。
まず予選が行われる。32ヶ国を8グループに分かれ、予選が行われている。それは1組4ヶ国になっていて、その中で上位2ヶ国が決勝トーナメントへと駒を進めることができる。昨夜、日本は2位を確定させ決勝トーナメント(ベスト16)へと見事進んだ。「予選で全敗もありえる」という前評判も出た予選だったものの、奇跡的な番狂わせを起こしFIFAランキング16位のコロンビアに勝利、更に27位のセネガルと2対2で引き分けるという善戦を見せたのだった。ちなみに日本はFIFAランキングは61位に居る。(※FIFAランキング→ https://fifaranking.net/ranking/ )
ブーイング
ここまで、ちょっと良い感じに受け取れるように紹介してみた。しかし昨夜決勝進出を決めた時の戦い方は、日本国内に限らず多くの批判が起こった。
予選最終戦となる対ポーランド戦で勝利または引き分け以上であれば決勝へと進むことができる。そういう状況だった。しかし、日本は苦しくも失点を許してしまった。「このままでは3位で予選敗退」という状況に追い込まれた。なんとしても同点に追いつきたい。
そこで日本にとって奇跡的な展開が起こった。日本対ポーランドと同時に行われていたコロンビア対セネガルで戦況が動いた。コロンビアが1点先制を決めたと情報が入り、それと同時に(これまでの成績により)日本が2位へと繰り上がったのだった。
日本は0対1で負けている状況、残る時間は20分を切っている。得点を取ることも簡単ではない上に、点を取られないことだけでも必死な日本。その状況から同点に持ち込む難しさは根性論だけでどうにかなる問題ではなかった。
コロンビアの活躍により2位に指がかかった日本はひとつの判断を下した。もし攻めて1点を取りに行く場合、点を取れればいいが、逆にミスひとつでカウンターからの追加失点の可能性もある。しかし、もう1点失った瞬間に日本の決勝進出は水の泡となってしまう。彼ら日本代表チームは「攻めない」という作戦に出たのだ。
ポーランドは自分たちが勝っている状況。相手が攻めてこなくなったので、ただ時間が過ぎれば勝つことができる。さらに追加得点を取ったところで決勝へは進めないことが確定している。
日本が勝利を諦めたことにより、試合は残り10分程度を残しながらも実質的に終了してしまった。その間、もしコロンビアがセネガルから失点を食らえば日本は即予選敗退となる状況に多くの人が震えた。人によっては「自分たちの進退を他チームに委ねるな」と強烈に批判した。会場にいた人たちにとって最も面白くないラスト10分間だっただろう。
決勝へ
試合を止めずに攻めていって同点に持ち込むことができれば理想だった。しかし、万が一追加点を食らって負けてしまった場合は恐らくマスコミだけでなく多くの人が「予選敗退」と残念な気持ちをぶつけてくるだろう。
カウンターのリスクを負ってでも1点を取りに行き同点を狙うプラン、コロンビアの勝利に委ね防戦で順位を守るプラン。その2択の中でより確実に決勝を狙える方は後者だと日本チームは判断した。そしてそれは成功した。
ポーランド戦は主力メンバーを出さず大幅なメンバー変更もしながらの対戦であり、それにもしばしば批判の声は挙がっていた。1戦ずつ全力で戦うことは理想的ではあるのだが、野球でもサッカーでも全国大会に安定していけるチームほど選手層は厚く、日ごとに選手を入れ替えることでコンディションをキープさせて駒を進めていく傾向にある。いくら代表の選手たちといっても、人間の体力は無限ではないのだ。
ワールドカップ過去の成績
ここで過去の日本代表のワールドカップ成績を振り返ってみる。
1998年:グループリーグ敗退(フランス)
2002年:ベスト16(日韓)
2006年:グループリーグ敗退(ドイツ)
2010年:ベスト16(南アフリカ)
2014年:グループリーグ敗退(ブラジル)
こう振り返るとベスト16が過去最高成績となっている。今回、そのベスト16になったことは過去記録に並ぶ快挙なのは間違いない。ちなみに1994年のワールドカップは「ドーハの悲劇」と呼ばれる戦いがあり、アジア地区予選で敗退してしまったため出場が叶わなかったという経歴もある。
日本代表が見据えるもの
FIFAランキング8位のポーランド相手に主力を温存しながら試合に臨んだ日本。順当にいけば日本が主力で当たっても勝てない相手だ。にも関わらず、主力を温存した日本代表チームは明らかに決勝トーナメントを視野に入れていることが伝わってくる。"ベスト16"の記録を上回る"ベスト8"だ。
これらの試合を見てきた人には一目瞭然だと思うが、足の長さの違いや筋肉の質、背の高さなど、明らかに日本は「体格」という面で負けていることがわかるだろう。横に並んでダッシュ競争すれば負けてしまう、そんな相手にどうやって立ち向かっていくだろうか。背が低くてもタイミングで勝負する選手、相手の動きを先に予測して動く選手、テクニックを磨いた選手、運動量でカバーする選手、最後までボールを諦めない気迫溢れる選手、日本代表チームは相手が明らかに格上だからといって諦める姿勢が欠片もないことは明らかだ。
次に待ち構える決勝トーナメントの初戦は7月3日(火)午前3時のキックオフ。相手はベルギー。FIFAランキング3位。もう一度書く。日本は61位。
サッカーに限らず、日本の歴史は「負けるはずだった」ことをたくさん覆してきたはずだ。「全力を尽くしましたが予選で負けました」ではなく、泥水をかけられることも分かった上で決勝進出を願った日本チーム。チームの士気はいつになく高いように感じるものがある。外部から批判することは容易いが、これまでの歩みや今やろうとしている事をみれば結果に繋がっている。勝ち方にこだわることも大事だが、日本はまだそのレベルには到達できていないことも理解した方がいい。
僕は応援することしかできないけれど、がんばれニッポン。
ゆらゆらゆらゆら 僕ぼく の 心こころ
ゆらゆらゆらゆら 君きみ の 心
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