4.コロナ禍でのあちこち国内視察 ~脳出血を患った旅行会社社長が一組限定宿をつくるまで
さてここでは、過去1年間を振り返り、こだわりの宿のコンセプトを固めるべく土地探し、宿探しの情報収集に出かけた記録を残しておきたい。
まずは、2021年2月に訪れたこちらのお宿からスタートだ。
伊豆高原の一日一組限定オーベルジュ「レピアーノ」。62歳で始められたという加藤オーナーシェフのお料理の腕、人柄に癒やされ満足度が高かった。宿を始めるまでの熱意、経歴や宿泊棟の動線など、参考になるものが多かった。(実は、このときに伊豆高原のご縁が生まれていたのだ。)
続いて、3月に訪れた千葉県大多喜町の一棟貸し古民家「まるがやつ」。
僕たちの検討施設として古民家もありだった。社長の牧野嶋さんはオープンに何でも教えてくれて、資金繰りから稼働率、地元との関わりの大切さなど、多くの貴重な情報が参考になりとてもありがたかった。スタッフ無人ながら、夜のたき火は落ち着くものだ。未来の宿でも取り入れたいものだ。
3月は立て続けに出かけた。
京都町屋の一棟貸宿「庵町屋ステイ」では、チェックイン時のみスタッフの人と接点がある以外はサービス皆無、ロケーションと利便性と町屋の雰囲気を味わいたい人向けだ。素泊まり2人で4万円を切る価格設定。ここはここで良いけれど、やっぱり人のつながりがほしいなあ、と感じる。
今回はこちらがメインの視察であった。
「アマン京都」と三重県伊勢志摩湾の「アマネム」である。弊社HPに視察レポートを掲載しているので良かったら目を通していただけると嬉しい。
https://www.teestyle.jp/topics/topicreportjapan210406.html
https://www.teestyle.jp/topics/topicreportjapan210414.html
アマン京都の森がなんとも静寂で、ただ歩くだけで心が洗われるよう。
そして、アマネム。海外のアマンを思わせるリゾート感、ホスピタリティ。食事のクオリティに震える。
この後、三重県の湯の山温泉にある「湯の山 素粋居」を視察。天然温泉のついた一棟宿が建築素材ごとに分かれて点在する、美術館のような宿で興味深かった。食事は隣接のレストランで。
7月中旬、初めての土地探し視察へ。
この事業計画当初より相談している、建築士の治子さん(宇建築設計事務所https://sola-archi.com/)たちとともに、伊豆の候補地を数カ所見て回った。治子さんは千春さんの友人であり、土地仲介もできるので、今回の土地情報の協力を大いに得られて心強かった。草むらに分け入って何十カ所も蚊に刺された記憶が懐かしい・・
9月、再び伊豆高原へ集中視察。ここでついに、土地を決定。
まずは第一弾の宿として、首都圏から2時間半程度で行ける、温暖な温泉のある宿、をテーマに決めたので、それに添う形で選んだのが伊豆高原である。(実は、伊豆高原の中でも選んだ場所はちょっと標高が高く、冬は雪がうっすら積もるぐらいの寒さだと、後々知る・・)
全国幅広く視野を広げると僕の気に入りの熊本、平山温泉もいっとき候補にしたかったのだが、諸条件が揃わず断念。前職の後輩Kei君には多忙な中尽力していただき、とても感謝している。
そして10月。
僕の誕生日ということでプライベート旅行で熊本へ。いつでもどこでも、未来の宿をイメージしながら過ごした。深みのある温泉と雄大な阿蘇山、地元料理に満足し、家族で過ごす特別な思い出の旅となった。
あ、ここで一言。我が家は、成人男性の息子たちを旅行に連れて行くレアなケースのようだ。僕はいつも、今行けるうちに、と思っている。だから、タンザニアでもコスタリカでも国内温泉でもどこでも、息子たちの予定を聞いて家族全員の予定を調整して日程を決めるのが得意である。時には、子供たちにホテルインスペクションや撮影係、通訳係、メモ係まで指示したり。プライベートと仕事は一心同体?であった。この10年が懐かしい。
結婚27周年、僕の手料理でささやかにお祝いもした。
その翌日、第4次申請のためのミーティング中に、「1.脳がぶち切れた」。
奇跡というのか、いろんなことに恵まれて、今こうして少しずつ回復してきている。
第4次は当然ながら間に合わず、第5次申請準備のラストスパートだ。資金繰りシミュレーションの細かい計算に苦労している。
千春さん曰く「前の年光さんだったらグイグイ攻めたよね。こういう計算、得意中の得意だったよね。」
僕は答える。「前の僕はいない。いるのは今の僕だけです。」
我ながらしっくりくるな、この言葉。
そうです、これからは今の僕が、やっていくんです。
(→5.へ続く)