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国際高等専門学校 見学レポート その1

 こんにちは!進路選択コーチ・共育コンサルタントの金澤です。

 2019年5月、石川県白山市(金沢市から車で1時間程度)にある「国際高等専門学校」に1泊2日で見学に伺いましたので、そのレポートをお送りします!学校選びはマッチングですので、しっかりどんな学校かを知ることは非常に有益です。お子様が学校を選ぶ目線で、細かいところまでお伝えしたいと思い、しっかり取材してきました。

 結論としては、今までの日本には類を見ない、本当にすごい学校でした!より多くの人に知ってもらいたいと思っています。ぜひご一読ください。

一般的な高専と国際高専の違い

 国際高等専門学校は、分類としては高等専門学校、いわゆる「高専」と呼ばれる学校です。高専はもともと高度経済成長期に、産業界で即戦力になる人材を育成するために1961年に作られたもので、現在全国に57校あります。そのうち国公立が54校、私立が3校。この国際高専はこの「3校」の一つ、非常に珍しい学校です。

 もともと高専は就職率が極めて高く、その専門性の高さから産業界でも高い評価を受けていますが、学校数・学生数共に多くはなく、認知度は低いのが現状です。私も以前は、高専といえば早く就職したい人が行く学校、というイメージがありました。

 ところが、この国際高専は一味違います。前身だった金沢高専から校名を変更、大きく体制を変えて2年目(2018年創立)の新しい学校ですが、彼らが最終的に目指しているのは「卒業生が起業すること」です。そして5年で終わらない、「9年一貫教育」を掲げた骨太な教育を作っているのです。

グローバル×工学を本気で学ぶ

 その学習内容は、一言で言えば「グローバル×工学」。従来高専でやっていたような工学の履修内容を、オールイングリッシュで、先生の7割が外国人の環境で学びます。さらに、3年次は全員がニュージーランドにある国立オタゴポリテクニクにて1年間留学。帰ってきたら、4年・5年は母体である金沢工業大学の大学生と共同研究して研究をスタートします。

 オタゴポリテクニクはこちら↓

 従来の高専と同じく、3年修了時の他大学受験や、卒業時の他大学編入も可能です。ただ、なるべく4年・5年の研究に継続性を持たせるため、金沢工業大学の3年への編入を強く薦めています。そして学部3年・4年・院1年・2年と研究を進めていくことで、自分の専門分野・知識を活かして起業するところまで育成していく、というコンセプトです。

 Leaders of Global Innovation を育成する、と校長先生は意気込んでいます。それもそのはず、英語が堪能になっているので即世界で勝負できるようになり、かつ世界でも全く引けを取らない専門知識が身につき、そして何より全寮制・NZの1年留学を経たチャレンジ精神を養って、社会に出て行くことになります。そんな生徒たちが、国際的なイノベーションを起こす次世代リーダーになるなんて、夢がある話ですよね!

 1・2年では、こんな素敵な環境で、のびのびと学習を進めていきます。画像は生徒の共用学習スペースです。超キレイでしょ!?

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設備も充実

 設備も非常に充実しています。次回エントリーで写真付きでシェアしようと思いますが、いくつか紹介すると、

・全寮制、寮母つき、全員個室、夕食後は全生徒共用スペースに集まって教師帯同のもと学習、メールボックス完備

・24時間守衛がいたるところを警備、一部教職員もキャンパス敷地に住んでいるため何かあっても安心、学習スペースは学生証のカードセキュリティを導入

・周りは緑いっぱいで空気が美味しい素晴らしい環境(ヘッダの画像をご覧ください!)

・生徒は天然温泉入りたい放題(一般客も利用可能)

・かんぽの郷を改築したので保護者も宿泊可能

・3Dプリンタやレーザーカッターなど最新設備(規模こそ小さいが)があり、生徒はいつでも利用可能。スマホケースを自作する生徒も

・体育館にはトレーニングジム完備で冬も運動ができるように

・学食があり、3食全食つき(しかも相当うまい)

 などなど・・・

 どうですか、子どもを行かせたくなってきたんじゃないですか?(笑)

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 温泉もあるよ!天然温泉!

デメリットをどう捉えるか

 いいところばかり紹介してきましたが、いくつかデメリットとして考えられることも当然あります。私からいくつかデメリットを挙げると、

1)学費が高い

 平均で年間300万円がかかります。(1年・2年300万、3年300万+渡航費、4年・5年160万+住居費)正直、教育内容に関して考えれば決して高すぎない金額だとは思いますし、奨学金制度もなかなか充実しています。ですが、教育を投資と考えてポンと払える所得があるかどうか、というところは大きなハードルだと思います。

2)1学年の生徒が現状少ない

 現状では、知名度の低さもあいまってか、1学年の人数が少ない状況です(12名〜13名)。当然運動系の部活動がなく、部活は現状三つとのこと(Language and Culture / Nature and Adventure / Design and Fabrication)。運動部を目一杯やりた〜い、という人には向かないと思います。

3)図書室の蔵書が少ない

 これは新しい学校だとどうしてもそうなってしまうと思いますが、この学校の図書室の蔵書は3500冊とのこと。これは相当少なくて、多い高校だと30万冊なんて学校もあります。金沢工業大学の蔵書数は56万冊あるそうですが、その図書館に行くのは時間がかかって大変ですので、なかなか利用はできません。

 と、この辺りはどうしてもしょうがなく出てきてしまうデメリットかな〜と思います。一方で、他の気になることは大抵クリアできてしまいます。詳しくはこのFAQページをご覧ください。


かんぽの郷を改築したイノベーション・ハブ

 門をくぐると、広々とした空間の中に、ライトブラウンの落ち着いた建物と、弧を描いた黒基調のカッコいい建物が目に入ります。

 門をくぐって左側のベージュの建物は、「イノベーション・ハブ」と呼ばれるゲストハウス。かんぽの郷を買い取って改築した建物で、1階・2階にはカフェテリア、カウンセリングルーム、保健室、交流スペースなどがあり、3階から上は宿舎になっています。

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 カフェテリアはインターナショナルスクールなどで入っている”Cezar’s Kitchen”が入っており、美味しさよし・バランスよし。ハラルフードへの対応もしているとのこと。

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 イノベーション・ハブと校舎は渡り廊下で繋がっています。この校舎内の渡り廊下は全て2階で繋がっていますが、これは冬に雪が降ったときにも使えるとの配慮とのこと。2年前は大雪で2階まで雪が積もったとのことです。また、校舎への渡り廊下の途中には、ピアノがあったり絵画があったりボルダリングルームがあったりと、生徒たちが様々な方向に興味を向けられるよう幅広い設備が整えられています。

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※真ん中にある空中に浮いている通路が渡り廊下

こだわりの詰まった開放感のある校舎

 校舎は2階がリビング・コモンズと呼ばれる共用スペースに多目的スペース、教室三つ。1階が図書室と教室二つ、メーカーズ・スペースという構成。リビング・コモンズは、什器は主に木で作られており、非常に落ち着く雰囲気。特にどこがどういう使い方と定義されているわけではなく、夜は子どもたちがプロジェクトやチームに分かれて、自習しあったり個別に補習を受けたりと有効に使っています。

 天井も高く開放感のある設計。

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 謎の標語。でもなんか深い。

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 什器は木でできています。

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 校舎は内側が全面ガラスで、陽の光や中庭の緑が全面に入ってくるよう設計されており、1階に降りるとその開放感が際立ちます。メーカーズ・スペースには、3Dプリンタやレーザーカッターなどが常備され、データを作ればいろんな加工ができます。(ちなみに生徒は全員Surfaceを入学時に購入するので、それを使って設計できるようになっています)

 図書室のスペース。陽が優しく差し込みます。

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 2階から図書室を見下ろしたところ。スペースを贅沢に使っています。

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 メーカースペース。いろんな器具と製作成果が展示されています。

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 ちなみに、空調は全部下から(黒い穴から吹き出る)。かなり効きます。

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 2階と1階はいくつかの階段で結ばれていますが、こんな大階段も。一番下のスペースにはスクリーンが設置され、プレゼンや発表会が実施可能。

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快適な生活拠点と、地域との交流拠点

 体育館もなんとガラス張りで、外から見える設計に。地域の人たちにできる限り馴染んでもらったり、地域交流に活かしたりできるように、という想いが込められているとのこと。トレーニングジムも完備しており、生徒だけでなく教員も(特に外国人が)使用しています。

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 また、外にはバスケットのハーフコートがあり、外でも体を動かせるようになっています。校舎の周りは山になっていて、遊歩道もあり、トレッキングなんかも楽しめるそう。

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 校舎全景。

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 全寮制ということで、寮のご紹介も。全室個室、6室の小さいグループがいくつも集合した形で棟が構成されていて、その棟が全部で4棟。各棟にResident Assistant(RA)と呼ばれる人がいて、生活のサポートをしてくれます。小さいグループごとに台所、冷蔵庫、リビングが設置されていて、はっきり言ってそこらへんのシェアハウスより絶対快適です。できたばかりで綺麗だということもありますが、それを差し引いても非常にいい寮だなあ、という感想でした。

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 個室。一人なら十分ですよね〜。

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 メールボックスも完備。お手紙送り放題。

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 これに加えて、寮のさらに奥には天然温泉が設置され、生徒は営業時間内入りたい放題。民間にも解放されており、地域の憩い場になっています。校舎から温泉までの道には、冬でも行けるようシートヒーターが設置され、雪が積もらないように設計されています。

 イノベーション・ハブから温泉までのルートもこうやっておしゃれに表されています。DORM左の赤線にシートヒーターが。

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 設計士の方と相当な議論を重ね、こだわりを持って作られた校舎は、生徒が学習に集中するために整えられた素晴らしい環境だと感じました!

 こんなところで勉強できたら、絶対気合入りますよね。実際に、生徒一人ひとりの学びに向かう姿勢・意識が非常に高く、感心しっぱなしでした。


 長くなりましたので、具体的な教育内容や取り組みは別記事でご紹介しています。こちらも合わせてご覧ください!





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