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「幻覚妄想のグランプリ」("The Grand Prix of Hallucinations" )


日本の希有なコミュニティが統合失調症をどう遊んでいるか
How an extraordinary community in Japan plays with schizophrenia


明日(11月23日)に開催されるべてるまつりで講演されるニューヨークESIの共同創設者でソーシャルセラピスト・哲学者のロイス・ホルツマンさんが、2014年に浦河に来られた時の様子を記事にしたブログの日本語訳を掲載します。
元記事:https://www.psychologytoday.com/us/blog/conceptual-revolution/201411/the-grand-prix-hallucinations#


「私は以前、自分の症状にとらわれていました、今はそれらを研究しています」

統合失調症を何十年を抱えながら生活している男性が、多くの人たちがいる場で話していました。彼は自分の研究で得たことを共有していて、質問やコメントも熱心に寄せられていました。

男性は自身が聴いた「声」など、自分の症状について学んでいることを話していると、別の人がホワイトボード にイラストを描いていました。ある時は、別の人が前に出て「声」にとらわれている様子を発表者と一緒に演じていました。多数のプレゼンターが彼のレポートをフォローし、聴衆は彼らの研究を発展させる可能性のあるたくさんの質問とコメントをしていました。

この珍しいミーティングは、日本の北の島、北海道の長閑な港町にある統合失調症(およびその他の診断)を持つ人々のためのコミュニティであるべてるの家で開催されています。

べてるの家は日本国外の人々には知られていませんでしたが、イェール大学の人類学者カレン・ナカムラのおかげで変わる可能性があります。
彼女の著書『 A Disability of the Soul』と映像作品『Bethel』は、べてるの家の生活、その歴史、哲学、メンバーたちの成功やいざこざ、そしてコミュニティを形成するための継続的な実践を描いています。

べてるの家は、精神科病棟から退院した人々が地域に住むのを助けるために1984年にはじまりました。これは、メンバーたちに仕事を提供することを意味しました。初期の事業は昆布や麺の包装と販売でしたが、これはべてるの家と浦河の町に継続的な利益をもたらしています。メンバーたちはまた、べてるのカフェで働き、全国で講演を行い、自分たちの生活に関する本やビデオ、Tシャツ、カレンダー、およびギフトを販売しています。

私は最近、べてるを訪問する幸運に恵まれました。
メンバーが生産的で、社会的で、責任を分かち合う生活を築くために、自分たちのありのままを活かしている姿に感銘を受けました。
彼らは精神疾患の医学的な診断を受け入れますが、彼らは決してそれらによって定義されていません。そのかわりに、彼らはお互いを助けるために、自らの「病気」(幻聴、幻覚、妄想など)を活用しています。お互いを気遣い、時に素晴らしいユーモアを持って、貢献する様子を目撃しました。

そして、べてるの家の遊び心、パフォーマンス、劇場性を体験しました。これは、メンバーやスタッフを含むコミュニティ全体の精神的、社会的、経済的発展に貢献していると思います。

実際、劇場性・演劇性はべてるが日本でよく知られるようになった方法のひとつです。毎年、「幻覚&妄想大会」を含むフェスティバル「べてるまつり」が開催されます。「幻覚&妄想大会」は、その年の最も素敵な幻覚または妄想を表彰するコンテストです。
毎年多くの人々がこのまつりを目的に訪れます。

私は、2012年に講師として日本に招かれ、講義やワークショップを行ったときにべてるの家を知りました。
日本発達心理学会や様々な大学に訪れたときには、浦河へ訪問することはできませんでしたが、次回日本に来たときは、べてるの家に訪問する予定を立てることを誓いました。

そして、今回初めてそれが叶いました。
神戸から札幌まで飛行機で行き、北海道大学の教員と5人の若い学生と一緒に3時間以上ドライブして浦河まで行きました。
ホテルにチェックインした後、地元のレストランで伝統的な日本食をいただきながら、べてるの家の人々に会いました。私たちはそれぞれのコミュニティへの強い関心を共有しながら、べてるの生活について学びはじめました。

私が惹きつけられたのは、社会的療法、つまり物質的および心理的制限に関係なく、人々の発達に焦点を当てたコミュニティベースの治療アプローチでした。

私たちには、何か共通点があるように思えました。

私たちは、当事者研究を含むべてるのミーティングを観察して、参加し、様々なメンバーやスタッフと会い、町のべてるのカフェで昼食をとり、彼らからのインタビューを受けました。
新しい友人たちに別れを告げた後、私たちは札幌に戻りました。

精神疾患への「非」医療的アプローチに興味がある場合、またはこのユニークなコミュニティについてもっと知りたい場合は、カレン・ナカムラの作品をチェックしてみてください。


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