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「シビル・ウォー アメリカ最後の日」は何の映画か?

 映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、そのタイトルと、上映前後にしつこく展開されていたプロモーションによって、ものすごーく誤解させられていた。派手な戦闘シーンが続く戦争アクション映画と思いきや、まったく異なる内容に驚かされた。本作は戦争そのものではなく、戦場カメラマンたちの目を通じて戦争の本質に迫る、深遠なロードムービーだった!

 物語の中心に据えられるのは、4人の戦場カメラマンたち。その中でも特に印象的なのは、キルスティン・ダンストが演じるベテランのリーと、彼女に憧れる新人ジェシーの関係性だ。ダンストはその確かな演技力で、経験豊富なプロフェッショナルの重厚感を見事に体現し、若手女優のキャリアを積むジェシー役のケイリー・スピーニーも、その繊細な変化を鮮やかに表現している。ジェシーが戦場の現実に触れながら変貌していく過程は、この映画の核ともいえる部分だ。初めて直面する死の現場や、激化する戦闘に巻き込まれる恐怖が、彼女の人間性とプロフェッショナリズムを徐々に研ぎ澄ませていく。

 特に印象的な場面は、リーが「良い写真なんて30枚撮って1枚あるかどうか」と語るシーンだ。成果を出せない自分に落胆するジェシーを諭す言葉は、戦場での仕事の厳しさと、カメラマンとしての哲学を端的に表している。この関係性は単なる師弟関係にとどまらず、戦争という極限状態の中での生と死、そして真実を追求する人間の姿を象徴している。

 映像美もまた本作の大きな特徴だ。戦場を描いた作品であるにもかかわらず、驚くほど美しいシーンが随所に散りばめられている。一部はストーリーのテーマと見事に調和し、象徴的な役割を果たしているが、時には過剰で場面から浮いてしまっているようにも感じられる。しかし、この「美」と「破壊」の対比が、戦争の二面性を観客に強烈に突きつける。

 戦争シーンそのものも特筆に値する。どちらの陣営にも肩入れすることなく、戦場の無慈悲さを圧倒的なリアリティで描いている。そこに正義は存在せず、あるのはただ暴力と破壊、そしてその中で懸命に生き延びる人々の姿だけだ。

 『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、タイトルこそ誇張された印象を与えるが、現代の平和を享受しているこんにちの我々に「戦争の現実とは何か」「真実を伝えるとはどういうことか」という普遍的な問いを投げかける作品だと思った。戦場カメラマンという存在を通じて、視聴者自身が戦争の悲惨さ、それを記録する意味を考えさせられる。この映画は、エンターテインメント映画では無かった、とても考えさせられる映像作品だった、それが一番の驚きだった!

 でも☆は5段階中の3.5。チーン


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