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ファビュラスな幸せ! #幸せをテーマに書いてみよう

 今回の企画、必ずしも「幸せとは何か」である必要もあるまい。
 そこで私は、全く違う幸せ、をかすめた話しを書きたいと思う。

クイア・アイ

 もう知ってる!大ファンだという人も多いと思うけど
 Netflixのオリジナル番組「クィア・アイ〜外見も内面もステキに改造〜」、簡単に言うとビフォー・アフターの家だけでなく全て版、それをファブ5と呼ばれるゲイ五人〜フード&ワイン担当のアントニ、インテリア担当のボビー、美容担当のジョナサン、カルチャー担当のカラモ、ファッション担当のタン〜が視聴者等が推薦応募した一人の民間人をターゲットとして改造しちゃう大ヒット番組。もうシーズン4が終わって、今は特別編としてなんと日本を舞台にしたスペシャルシーズンが始まってる。

 これがもう、楽しくて楽しくて!

 どの話しも面白くて幸せすぎるんだけど、今回特に紹介したいのはシーズン4−1「ひとまず恩返し」。美容担当のジョナサン(可愛くて、お調子者で一番オネエで私の一推し!)の20数年前のかつてのハイスクール・母校でお世話になった音楽教師、キャシー・ドューリーを改造しよう、という回です。クイアアイ初めての人もこの回(4−1)から見て、1−1を見て、日本−1をまず見れば良いと思うんだけどどうかな。

ジョナサンとキャシー

 イリノイ州クインシーにそれはある。公立高校で、キャシーはそこの音楽教師として、学校のみならず町の音楽イベント全てに関わっているほど活躍している。それこそ、寝る間も惜しんで、何十年もだ。この町が高いレベルの音楽で賑わっているのはキャシーのおかげ。学校を、町を豊かにしていることが映像からもよく伝わってくる。そしてジョナサンはLGBTQを自覚しはじめて悩んでた時、まさにキャシーによって励まされ、助けられたのだ。キャシーは同僚と結婚しているが、子供はいない。(LGBT+Qが何なのかは調べてね)

 推薦者でキャシーのアシスタントのサラは、そんなキャシーを心配する。キャシーは仕事熱心すぎて、自分のことを二の次にしすぎていると思ったのだ。サラが教え子だった時も、ジョナサンが教え子だった時も、キャシーの髪型はマレットヘア。ずーっと変わってない。皆、変えなきゃね、と口々に言う。(マレットヘアが何なのかは調べてね。ひどい言われようだからw)

 街はちょうどオクトーバーフェスという年に1回のパレード・お祭りの時期。そこで今回は町の誰もが尊敬して愛してやまないキャシーを主役にしようという計画が町ぐるみで、ある。それに今回の企画が乗った形だ。

 大型のRVカーでいつものようにファブ5の五人が以上のような解説を兼ねてお喋りしながら現地へ向かうが、ジョナサンは上機嫌なようでいて、少し緊張していた。しかし、キャシーとチアリーダー部「ブルーデビル」の集まる体育館で大歓迎を受けジョナサンはキャシーとハグすると、不安も打ち消される。

 それからはいつものクイア・アイだ。校内を案内しながら、ファブ5は計画を考える。そして懐かしい校内をキャシーと一緒に見て回るジョナサンは、LGBTQを自覚しはじめて悩んでた時、それでいじめられもしていた時のことや、まさにキャシーによって励まされ、助けられたことを思い出す。

 ファブ5はフード、インテリア、カルチャーなどの各担当が次々に彼女やその周囲を変えていく。その間にも、彼らは先生と真剣に向き合っていく。キャシーは、すでに素晴らしい高校教師だった。そのことは十分、痛いほどよく分かる。だからこそ、ファブ5は、皆んな(視聴者含む)は、彼女に自分をもっと大切に、ご褒美をもっと受け取ってもらっても良いんじゃないかと、切に願う、祈る。

 お互いに、泣きながらだ。

 人の幸せを真剣に願い、思い悩むのだ。

人の幸せを祈る時

 ファッションの番。タン・フランスが担当。彼女のファッションを大改造するのだ。地元のアパレル路面店に入ると、彼女は明らかに慣れてない様子。それもそのはず、服を買うのはいつも夜中のテレビショッピングだと言うのだ。それも、眠れない時に、テレビをつけて。

 彼女は明らかに慣れてない。もしかして迷うタイプ?少し、そういう所があるわね……。
 タン独白「彼女でも迷うことがあるって、意外だった。」
 選んだものを試着してみます?ええ。
 タン「それまでずっと、彼女はパワフルで、存在感があった。」
 タン「そんな彼女にも不安なことがあるって、この時まで思いもしなかったけど、嬉しかった。」
 タン「困った時に頼ってもらえて。」
 タンが全身選んだ服を試着してもらう。
 試着するたびに、彼女は輝きだす。
 タンが眼鏡を持ってきてそれまでのと交換する。「あなたの瞳を見たいのに、ピンク色が邪魔してた。」
 新しい透明な眼鏡の奥に、輝くキャシーの瞳が見えた。

 次はいよいよジョナサンの番。髪を切ります。犬みたいなマレットヘアとはバイバイ。しかしキャシーは長年連れ添ってきた長髪(放りっぱなしの)に未練がありそう。それを察したジョナサンは「言いたいことある?」と聞くと……、

 キャシーは「長年お世話になってきたもの」と言う。するとジョナサンは
「これだから先生は好き。」
「だから愛してる。」
「……言いたいことわかる?このままでも先生は十分美しい。本当に。そして先生が私にカットを任せてくれてとても嬉しい。」
 ジョナサンは静かに優しく丁寧に、カットし始める……。

「辛いことはおしまい。」

 キャシーは気づく。
「何かにこだわることって、あるものでしょ?それは手入れは、しなかったけど。これが自分らしさだと思ってた。ずっと……。」

 ジョナサン「……赤毛は変えないわよ。その色大好きだもの。」
 ジョナサンは赤毛を損なわず強調するように染髪も行い、彼女を優しくマッサージする。そして3…、2…、1!
 全く新しく生まれ変わった、ショートで若々しく超キュートになったキャシーがそこにいた。

 こんなにも、変われるなんて……。

 あまりの変わり映えに、感動で、胸が熱くなってきます。

 ファブ5のみんなにも紹介する。みんな大喜び。チヤホヤするのに慣れてねキャシー。
 内面の美しさがあらわれてる。ポケットに手を入れちゃおう!
 先生仲間に紹介する。ジョナサンのエスコートでみんなの前で1回転。みんな大喜び。

 楽しい時間はあっという間に過ぎていって。

 ジョナサンとキャシー二人きり。感想は?

 キャシー「完全に圧倒されてる。大興奮よ。あなたは立派になったわね。素晴らしい友達やスタッフに会えて感激してる。でもここまでしてもらえる資格があるのかって…。」
 ジョナサン「私は先生が、みんなの人生に影響を与え続けてるって自覚して欲しかった。みんなの人生を変えてきたこともね。実は…」

 ジョナサン、突然真剣な顔になり、目が泳ぐ。

「実は、ここに来ることを楽しみにしてたんだけど、すごく不安でもあったんだ。だって、ほら、クインシーを出て以来ずっと、この街は私の心にとても辛い歴史として刻まれてきたから…、ブルーデビルは大好きだったけど、辛いこともあったから。だけど先生は、私や、私みたいな人のことも、他の子たちと同じように接してくれたんだよね。LGBTだからこそ、余計に普通だと感じたいし、変わり者扱いされたく無い。先生はそうしなかった。」

 ジョナサンとキャシーは手を強く強く、つなぎ合っていた。

「で……、私今回、自分の傷がずいぶん癒えたように思う。本当に感動したの。それって先生のおかげが大きい。先生は、私みたいな子達の命を救ってきた人。だからともかく自分を労われるようになって欲しい。好きなことを続けられるように。」


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補記

 生きたいように生きていて、結構幸せそうな人を、もっと幸せにする。新たな幸せをプレゼントしてあげる。そういう幸せもあるんですね。エンタメを仕事にしてる私もそうありたいな、と思ってます。

 幸せがテーマというこの企画。多くの方は幸せとは何か、自分なりに。というものになるのだろうか。
 が、そのテーマはもともと私のこのnoteでは主題であり続けていたし、最近も特にそこにフォーカスした小品を書いた。
 一つは、現状の幸せよりももっと幸せがあるかもしれない恐怖を書いて幸せが根源的に相対主義的な側面を持っていることを描いてみた。


 もう一つは、社会の中で要請される幸せの基準というものがマウントしあって歪(いびつ)になっていく様を描いてみた。

 幸せが、人それぞれであるならば、幸せなんて言葉、適切じゃないんじゃないかな、自分が幸せか不幸せかなんて考える必要もないんじゃないかなって最近思ってます。

……にしてもクイア・アイは幸せだー!

end.



楽しい哀しいベタの小品集 代表作は「メリーバッドエンドアンドリドル」に集めてます