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マンション分譲当時からの建物の欠陥につき管理会社は建物の欠陥の補修等に関する業務の不履行責任を負うか?


判例シリーズ4
(東京地方裁判所 平成16年11月30日判決)

交渉はテーブルに着く前に既に決しているものです。

誰を味方につけてどう話しをするのか。

誰かれ構わず噛み付けば良いってものでもないと言うお話し。

(1) 事件の概要


Aが分譲したマンションでは分譲当時から

・エントランス吹抜け部分
・非常階段部分
・玄関アプローチ部分
の排水が不良で水溜りができる。

屋上陸屋根勾配の取り方が不良で水はけ用ドレーンが不足のため水溜りができ、9階の専有部分のベランダに水が流れ込む等の欠陥があり、区分所有者らから苦情が出されていた。

管理会社Xは区分所有者らの苦情を受け、Aに対し補償を要望し、 管理組合Yが設立されてからは、再三にわたり、Yからマンションの欠陥についての補修の要望等があった際はこれをAに伝えたり、 Aに対する文書の申入れを提案する等していた。


しかし、7年近く経っても欠陥が解消されなかったことから、 YはXに対する管理委託費を支払わなくなり、 Xの担当者が理事会に出席することまでも拒否するようになった。

またYの理事長はXの担当者に対し、通帳関係及び書類等を持参するよう申し向けて、持参した通帳等を理事会で預かりXの担当者が決算書類作成のため通帳交付を求めたものの、その交付が遅れたためXが作成する業務報告・決算報告も遅れた。


XはYに対し管理委託費の支払を請求したところ、Xは建物の欠陥、設備の保守点検など契約の本質的部分を履行していないし、収支状況報告が遅れた等として争った。


なお、XとAは代表者が同一であり、 XはA他数社が出資して設立した会社である。

(2) 問題点


① Xに「建物の点検業務」の不履行があるか

②Xに「補修工事、 施設の保守点検等の外注に関する業務 (発注、履行確認)」の不履行があるか

(3) 裁判所の判断


Xには債務不履行はないとして、Yに管理委託費の支払を命じた。 

①について

欠陥を発見したらこれをYに報告し、さらにAや施工会社と折衝するほか、検等の外注に関する業務等の項目を根拠に、Xには建物の点検を行い、 Yは、管理委託契約書の建物の点検業務、補修工事、施設の保守点 Yの決定した方針に基づき、修繕工事の発注等について助言するなどの義務を負うところ、Xはその義務を怠った旨主張するが、Yが問題としている建物の欠陥はYの主張によっても、既に分譲当初からX及び区分所有者ないしYにおいて認識されていたものであるから、設備の点検、報告業務に関し てXの債務不履行は問題とならない。 

② について

建物の欠陥の補修等に関する業務の不履行についてであるが、Y の主張はマンションの欠陥とAの補修工事に対する不満を言い募るものであり、つまるところ、補修工事が完全になされていないから、Xが契約上の義務を果たしていないというにすぎない。

本件のような分譲時からの建物の欠陥の補修については、本来Aあるいは施工会社に対して主張すべきもので、管理業者であるXについて、直ちにAや施工会社と同様の建物の欠陥についての補修責任があるとはいえない。 

契約書の「補修工事、設備の保守点検等の外注に関する業務 ( 発注履行 確認)」は、その文言からして、 

基本的には、補修工事を外注する場合についての規定であり、分譲当初からの建物の欠陥に関し販売会社等に売主の責 任としての補修等を要求する場合とは異なる。 

また、補修工事発注等の前段階ないしこれに付随する業務あるいは「分譲会社、施工会社等の業務折衝等」 との項目に基づき、本件のような建物の欠陥に関するXの管理業務を考えうるとしても、XとAとは別会社である以上、XとしてはAに補修を要請するなどの働きかけはできても、Aに補修工事を強制することはできない。

また、AがYの期待どおりに行動しない場合にも補修工事を強制することは できないし、施工された工事の内容が満足できるものでなかったとしても


XとしてはYの意向に従い補修工事を外注するとか、Aについて損害賠償訴訟を提起する等、その手続面でも補助を行うことができるにとどまる。

その意味で、Xの契約上の債務の内容としても、Yの意向に従って決定された方向での事務を補助するにとどまり、建物の欠陥を解消させることにまで責任 を負うものと解することはできない。 

欠陥の補充を完成させることまでがXの責務ではない以上、補修がなされないからといって、直ちにXに債務不履行があるということはできない。

Yは、XとAは一体であるからXには建物の欠陥の補修について特段の履 行義務があると主張するが、 XとAは代表者が同一であり、XはA他数社 が出資して設立した会社で、 AXの約50%の持株を有する資本関係はあるが、Aが100%出資しているわけでもなく、 Aの分譲したマンションの多くの管理をXが行っていることは認められるが、それだけでAと同一視して同等の補修責任を負わせることはできない。

また、Yは管理報告義務について3ヵ月分の業務報告書が提出されていない等と主張するが、これら業務報告書が作成されていることは明らかであり、 これをYに提出しない理由を窺うことはできない。 

収支状況報告が遅れたことについては決算報告書を作成すべき時期にXは通帳類を所持していなかったことからYにもその責任があったもので、Xについて管理委託費を減額すべき債務不履行があったということはできない。

(4)ざっくり簡単にまとめると

建物の初期不良は施工会社に責任があるので施工会社の業務不履行であって、管理会社の業務不履行ではない。

難癖つけて管理会社の業務不履行とか言う暇があったら管理会社と手を組んで施工会社を正す方が良いんじゃないの?

という話しでした!

ではまた!

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