先着順で駐車場使用契約をした区分所有者が駐車場を継続使用できる旨を定めるには総会の特別決議を要するか?
判例シリーズ3
(那覇地方裁判所 平成16年3月25日判決)
売りたい販売業者と住み始めた住人達の考えはなかなか噛み合わないものですよね。
(1)事件の概要
管理規約には駐車場が共用部分及び共用施設として規定され、 駐車場使用者は使用料を払いその収益は管理費に充当することは定められているが、区分所有者間で駐車場をどのように使用するかについては一切規定がなかった。
マンション分譲当時、先着順で駐車場使用契約を締結していた区分所有者を中心とする管理組合Yは、従前の態勢をそのまま維持・存続するため、普通決議により下記内容の駐車場使用細則 (本件使用細則)を定めた。
これに対し駐車場を使用していない区分所有者達X (Xはローテーション方式等全区分所有者が駐車場を利用できることを前提とした駐車場使用細則の制定を求める動きをしていた)
Yが定めた本件使用細則は区分所有法 31条1項に定める規約にあたり特別決議が必要だとして総会決議無効確認の訴訟を提起した。
a)本件駐車場は本件マンション所有者で現居住者のうち、Yとの間で駐車場契約を締結した者が使用することができる。
b)駐車場契約者が本件マンションの区分所有建物を他の区分所有者又は第三者に譲渡又は貸与したときは駐車場使用契約は効力を失う。
c)駐車場契約が合意又は債務不履行により解除された場合、管理組合は当該空き区画について速やかに公募しなければならない。
d)附則:ア)本件使用細則施行前にした契約は従前の例による。イ)本件細則は管理組合の定期総会で決議後施行する。
(2) 問題点
① 先着順で駐車場使用契約をした区分所有者が駐車場を継続使用できる旨を定める使用細則は管理規約にあたるか (特別決議を要するか)
(3) 裁判所の判断
本件細則が規定する内容は法31条1項に定める規約事項であり、総会で駐車場使用細則を制定した決議は無効であるとした。
① について
区分所有法は17条1項本文、18条本文、39条1項を規定する一方で30条 1項、31条1項を規定しているところ、
本件駐車場のように同法17条及び 18条に定める共用部分であり、かつ同法30条1項にいう附属施設に該当する部分の使用、管理に関する事項が集会決議事項となるか規約事項となるのかという点については、
当該事項が同法18条に定める 「管理」 に関する事項であれば、規約によるまでもなく当然に集会の決議で決することができると共に、任意に規約により決めることもできるのに対し、
当該事項が同条の「管理」の範囲を超える場合には、もはや集会の決議で決めることは許されず、専ら規約により定める必要がある。
そうすると、共用部分たる附属施設である本件駐車場の使用・管理に関する事項について規定する本件細則が、法30条1項及び31条1項にいう「規約」にあたるのかという点についても、その規定事項が同法18条にいう「管理」の範囲内にあるのか、これを超えるのかという点から決すべきである。
さらにその点を判断する際には、単に形式的に、その規定文言のみに基づき判断するのではなく、その規定が設けられた経緯、趣旨をも踏まえて、その規定の意味合いを実質的に勘案して判断する必要がある。
例えば、その規定内容が共用部分としての性質に反し、あるいはその性質を変更するような使用形態を規定するもの、即ちXの主張するとおり、
特定の区分所有者に半永続的な専用使用権を与えるようなものであれば当該規定内容はもはや 「管理」の範囲を超えるものであって「規約」事項にあたる。
本件マンション販売時においては、本件駐車場の特定区画について各区分所有建物の購入者に専用使用権が設定されていたわけではなく、
基本的には実際上先着順で駐車場使用契約した区分所有者がその契約以来 特定の区画を継続して使用してきており、
駐車場契約できなかった区分所有者は当初契約者の転居等による例外的な場合にのみ空いた区画を使用することが可能となるにすぎなかったことや、
Xらがローテーション方式等で全区分所有者が駐車場を利用できることを前提とした駐車場使用細則の制定を求め調停申立や訴訟提起までしたものの
現に本件駐車場を利用する区分所有者による賛成多数により本件細則が制定決議されるに至ったこと等の経緯及びその決議状況等を踏まえて本件細則を検討すべきである。
そうすると本件細則は、本件駐車場の使用者をどのように決め、どのように利用させるかという使用者、使用方法に関する定めを設けることを主眼としていたと推認される。
そうすると、a)の規定もd)のア)と併せ読むと、実際上は、従前の駐車場契約の効力の維持存続を前提としつつ、
本件細則施行後も従前からの駐車場契約者、即ち同細則施行時に現に駐車場契約をしている区分所有者が本件駐車場を継続利用することを容認する規定である。
また、本件細則においては、駐車場契約が効力を失う場合としてb)・c)が規定されているが本件細則制定の経緯等に照らすと、
本件駐車場を利用している区分所有者にとって今後区分所有建物を譲渡するなどの例外的な場合を除き、
駐車場契約が効力を失うことはまずないといえ、現に駐車場契約を締結している区分所有者が実際上今後も優先的に本件駐車場を利用することを認めるものである。
以上によれば本件細則は従前、本件駐車場の特定の区画が先着順で駐車場契約をした特定の区分所有者らによって専用使用してきた実態を容認し、
今後も当該区画について、事実上同人らの優先的な使用態勢を維持存続することを意図して制定されたものと認められ、
実質的に特定の区分所有者に本件駐車場の特定の区画の優先使用を認める規約内容になっていると評価することができる。
そして、このような優先的な使用態勢を認めることは共用部分たる駐車場としての性質に反するものであることが明らかであるから、
このような優先的な使用態勢を内容とする規定事項は、法18条1項で定める 「共用部分の[管理]の範囲を超えるものであり、法30条1項、31条1項にいう「規約」により定めるのが相当である。
以上により本件細則が規定する内容は、法31条1項に定める「規約」事項にあたり同条が規定する特別多数決議によるべきであった。
ざっくり簡単にまとめると
今回の共用部分である駐車場の使用方法について、どちらか一方が超優位な態勢を決めたいならば、[共用部分の管理]のレベルを超えてるからちゃんと[規約]で決めようねって言う事で。
普通決議ではなく、特別多数決議でやりましょうと言う話しを裁判で白黒つけたお話しでした。
みんな自分に都合の良いルールにしたいですよね。
でも共同住宅なんでみんな仲良くお互い様の精神を忘れない様にしましょう。
それが嫌なら戸建に住んだ方が良いですね。
ではまた!
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