【創作日記】バリ島・旅日記-その4
2017/10/02: ブログ転載記事
朝の散歩に出かけていた私は、知人と約束していた時間から少し過ぎたころホテルへ戻った。
ホテルの庭園を通ったとき、屋外用ソファでくつろいでいた知人を見つけた。
「遅かったですね。迷子になったのかと思って心配しましたよ」
「すみません。現地の人と話をしていて遅れてしまいました」
「英語は通じましたか?」
「いや、日本語で声を掛けられました。日本語を上手くしゃべる男でしたね」
「ああ、ガイドですね。まぁ、信用のできる人もいるけど、日本と同じでいろいろな人がいるから、注意したほうがいいですね」
知人は落ち着いた口調で言った。
「はい。話をしただけだから、大丈夫でした」
「そろそろ街を散歩しましょうか。ああ、そうだ。繁華街に鏡屋さんがあるんです。面白い鏡があるから見に行きましょう」
私は知人に誘われて、街に繰り出すことになった。宿泊しているホテルから20分ほどの距離に、その店があるという話しだった。
ホテルから離れて歩いていくと、バリ島の街並みは私には刺激的で珍しく映るものばかりだった。
和洋折衷の三階建ての建物の近くに、藁葺の平屋建ての建物が建っていたりする。そのような光景を見ていると、なぜか、既視感のような、郷愁のようなものを感じる。
なぜ、そのように感じるのか。皮膚感覚なのか、私には理由は分からなかった。
しばらく繁華街をぶらぶら歩き、目的の店に入った。
カウンターにいた女性店主は、愛嬌のある笑みを浮かべながら近づいてきた。
知人はうれしそうに、その店主に英語で話しかけた。
店主はにこやかな表情で、片言の日本語で応えた。
「タイヘン、オセワニナリマシタ」
「参ったなぁ」
知人は一本取られたというように、両手を広げおどけてみせた。
壁に色々なかたちの鏡が展示されている。私は好奇心に駆られ、店の奥まで足を運んで鏡を見て回った。
「ここにある鏡は、メキシコ製です」
「初めて見ました。珍しい鏡ですね」
「そうでしょう。前回訪れた時に購入して知り合いのお客さんに勧めてみたら、全部売れましたよ。珍しいものを好む人はいるもんです。まだまだ、他にも見てもらいたいものがあるんです。そろそろ店を出ましょうか」
知人はそう言って、出入り口に足を向けた。
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