「ようこそ、わが家へ」池井戸潤著の読後感【読書日記】
池井戸潤氏は著名な作家です。
著作の特徴は、主人公の職業は銀行員が多いことです。著者自身、銀行員の経歴が影響していることは明白なようです。
やはり体験した業界を描くほうが、描かれた物語にリアリテイが生まれます。資料だけで知らない世界を描いても、肌で感じることはありませんので、絵空事であることを読者に感じさせるのかもしれません。
小説は、筋立てによって多様な人物を描いて物語を作り出していくものであり、人物の造形を作り出していくのは著者自身です。
この小説の主人公は銀行員ですが、取引先企業に転籍します。電車通勤の最中、プラットホームで列を無視して乗り込んできた三十代の男を主人公は叱りつけます。温厚な主人公は、日頃はそんな態度に出ることはないのですが、その日はなぜかそんな行動を取りました。
その時点で、この小説の起承転結の「起」が始まります。
そこから主人公自身、そして家族にも災いが生じてきます。
転籍した取引先企業の中で起こる問題を本流として、傍流に家族に対する見えない犯人の嫌がらせも絡ませた物語で、複層的な構成に感心し嫉妬心が起こるほどおもしろく感じられる小説になっています。
ただ、出版社が仕掛ける原作のテレビドラマ化、映画化のようなメディアミックスの影響で、この小説が世間に注目され関心を高めていったことも事実だろうと思います。インディーズの世界ではメディアミックスがありませんので、非常に冷たい風が吹くばかりです。(苦笑)
あまり小説の内容を書くとネタばれになりますので、できるだけ抽象的に書くように心がけたいと思っています。では、このあたりで終わります。
『ようこそ、わが家へ』(ようこそ、わがやへ)は、池井戸潤の小説である。2005年秋号から2007年冬号まで、文芸誌「文芸ポスト」に6回にわたって掲載された後、加筆修正し巻末に村上貴史の解説を収録して2013年7月10日に小学館から文庫オリジナルとして刊行された。
2014年8月に、NHKラジオ第1放送でラジオドラマ化された。
2015年4月に、フジテレビ系でテレビドラマ化された。
出典元
幸田 玲 著作一覧
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