音域から切り分けて考える自分なりのMIXとテクニック

低音

・音量とリズム(グルーヴの一部)を担う大事なパートである 一部例外を除き、打ち込みサウンドやダンスミュージックに分類される楽曲は低音部分を どのように出していくかに注力すべき。

KICK

低音部分を扱う楽器として捉えて終わるのでは足りない。
もっと音の時間軸によって音選びの段階から曲のキャラクター性が変わる ドラムパートに分類される楽器やシンセ系統や生楽器でも弾く、叩くと言った演奏を 行う楽器類はエンベロープ(ADSR)認識が大事。
アタック部分とリリース部分を切り分けて考えるだけでも最初はいい。
キックの場合で言うとアタック部分の「ドッ」(トランジェントと混同することが多い がトランジェントはアタックの一番最初の発音時のノイズ、ドッの音の一番頭のザリっとしたノイズ部分)からリリース部分「ウゥン」 このお互いの⻑さでキャラクター性が変わる。

ドンッとした短いキックは低域を⻑く占領しないため裏打ちベースなどが入ってきやすい&低域が存在しない空白部分を作ることによった縦ノリ感を演出しやすい→4つ打ちの早いサウンド向け、ヒップホップ系の ビートでサブベースがずっとなってる場合などもベースと干渉しにくい点から使われることもある。

ドゥンッとした短いキックは低音の迫力が短い中にもしっかりある。
サイドチェイン効果でベースをしっかりダッキングさせ(引っ込ませ)ても低音の迫力が出やすいためEDM系統のキックに採用されることが多い。
また自然な鳴り方ではあるもののシンセで生成されていることが最近は多い →チューニングされているケースがあり、自分の曲のキーとあったキックを選ぶことで馴染ませることが可能になる(勿論位相の相性によって馴染まないこともある)。

ドウゥゥンと言った⻑いキックはヒップホップ系の808サウンドを合成したような音程を担当するキックの場合とテクノ系のランブル(反響音) が混ざったキックの場合が多い。
ベースに関わらず低音が⻑い間楽曲に残るため横揺れ感が出やすい。
ゆったりとしたBPM帯やテクノ、トランスなどの横揺れ系のサウンドと相性がいいがBPMの速い4つ打ちなどには合わない。

曲のパートごとにキックのカットタイミングを変えたりするアレンジはGOOD、狙った結果でないのであればBAD。
キックのリリースをカットすることで低音の時間が短くなり、上擦ったような質感になる傾向が見られる。
それを狙って作っている場合はなるべくそのパートは短くすること、上擦った曲を⻑く聴いた時聴覚的にいい印象は持たれづらい、要は踊りにくいサウンドになってくる。音ゲーのボス曲のようなそもそものグルーヴよりもノーツ数を意識した必然的に音数が増える楽曲の場合は採用してもOK(他のサウンドを少しでも 邪魔しないことによって他のサウンドが前に出やすくなるため苦肉の策である点には意識をおきたい)。

BASS

低音部分をメインに扱う楽器の代表 DTM(打ち込み系統)だと基本的に低音部分を占有するサウンド自体がなんでもBASSと 呼ばれることが多い。
現代のベースのサウンドは非常に重厚かつ実際に演奏可能な弦楽器としてのベースよりはるかに低い音域をカバーする必要がある。
これはサウンドシステム上で迫力を出したりする目的だけでなくイヤホンヘッドホン上でもそういったSUBと呼ばれる音域をブーストしたサウンドが好まれる傾向などから現代的なサウンドにSUBは欠かせないものとして確立しつつある。

そもそもSUBとは
ここがDTMというかダンスミュージックにおいて認識できているかどうかが 実際の楽曲クオリティを大きく変える。
SUBとは人間の耳で聞くことが可能とされている最も低い音域20hz~100hz あたりを鳴らす低音という認識でいい これらの音はベースミュージックとされるジャンル以外ではほぼ単独でなっていないため認識すること がかなり難しい。
またシンセから出力した際(serumなど)サブオシレータというものが存在しており擬似的にSUBも同時に鳴らしてくれるプリセットも存在するためややこしくなっている

SUBがないとどうなるか
前のキックの欄でも説明したようにSUBが存在しないということは 低音が存在しないとほぼほぼイコールな状態になる。
つまり上擦ったサウンドであったりサウンドがまとまらずうるさい楽曲になりやすい。
これはベースサウンドがSUBを補完していない場合でも同様である 特に現代の楽曲ではMIDBASSとSUBBASSを別で生成していることが多いため初心者時代はこのSUBがない サウンドに陥りやすい点には注意したい。

SUBの作り方
基本的にはレイヤーする手法を前提として作るのがおすすめではある メインとしたい音色のベースの音域の基音を110hzより上(音階上ではA) に設定してやり、その際に出る100hz以下の音をなるべく副次的効果の出ないEQでカットしてあげる(EQに関しては⻑くなるため割愛、基本的にはリニアフェイズ搭載のEQがいい)。
そしてそこにサイン波で110hzをなるべく超えないようにメインのベースとまったく同じ音程でSUBを打ち込めば良い。
この際SUBをM/S処理にてサイドに音が寄るほど聴覚的に非常に気持ちの悪い音になるのでなるべくMIDの みでなるように下手な処理はしないほうがいい。

緊急的な作成方法としては現段階で作成したベースの110hz以下をカットしてオクターブを下げたベースを複製、複製したベースの 110hz以上をカットするという手法がある。
聴覚上の低音は得られるが、完全なサイン波と比べた際低音の出方がかなり汚くなるほかM/SにおけるSIDEの音もオクターブが下がって濁った状態で残っており奇妙な音になりやすいため注意が必要。
あくまで緊急的な方法であり決して最善策ではない。

SUBも⻑さで曲のキャラクター性が変わる。
もちろんキックと同じで低音部分の⻑さで縦ノリか横ノリかの違いが生まれる 基本的にはメインで耳に聞こえやすいMIDBASS(SUBが入っていないBASS)と同じ⻑さで鳴らすことになるため、エンベロープをしっかり作り込むことで曲のクオリティは格段に向上する。

中音

中音域(200hz~4000hzぐらいのイメージで良い)には非常にたくさんの音色が集まりやすく、この大量のサウンドを何もせず同時に鳴らすと音量(dbs)を無駄に上げてしまい、またそのままマスターでマキシマイザーなど刺した時には濁った上に他の曲よりも音圧が低く て小さく聞こえるといった非常に残念な結果になる事が多い。
この問題を改善するためにはEQing、M/S処理、Panningなどの方法がよく用いられる。

EQing 


そのままわかりやすくEQによって他の音と被ってはいるもののあまり対象となるサウンドでは重要でない音域をカットする事である。この際理由なくブーストはしないこと!

EQを使うのはDTMする上で誰でもやったことがあると思いますが EQはゲインを大きく上下させるため基本的にはそこに注視したほうがいい。
特にブースト的な使い方をすると単体ではよく聴こえるようになるが全体で聴いた時他のサウンドを大きく邪魔するため濁ったサウンドになりやすい。
またEQを使った際に注意したいのがブーストするとブーストした音を基音とした場合その倍音なども並行し て上昇することが多いのに注意したい。 例えば400hzを持ち上げた際に副次効果として800hzや1600hzの周辺音域も持ち上がってしまうため、結果 として非常にうるさいサウンドができやすくなるためこの副作用を理解した上で使う必要がある。 現状のプラグインではほぼすべてこの副作用が出ると思っていい。

逆にカットする際にはこういった問題は起きにくい(これもプラグインの質による)が、プラグインEQでロー カットや急激なカットを行った際にアーティファクトと呼ばれる意図しない副作用が発生する。
ローカットをおこなった際にはカットしたローの周辺域で意図しないブーストがかかり、ブーストした音域で前述のよ うに倍音も同時に持ち上がったり、位相が歪むことによって元々馴染んでいた音が馴染まなくなるなどの副 作用が生まれ、急激に特定音域をカットした場合もまた位相にズレが生じたりカットした音域を補完するためなのか謎の音が生成されてしまう副作用がある。
このような急激なカットやローカットは副作用があると認識した上で行うべきであり、尚且つ必要なカットはするべきといった非常に繊細な作業である。
プラグイン付属EQなどでは副作用が出やすいため注意。 なるべく急なカットをしたい場合はリニアフェイズ搭載のEQを使うようにしたい(リニアフェイズ搭載EQ はこういった副作用が少ない、ただ位相の歪みを補完しようとして音に遅延が発生するという別の副作用が出る)。

Panning

PANという概念は基本的に左右(LR)という認識で良い 中央ですべての音を鳴らすのではなく左右にばらつかせることで音が密集するのを防ぐことで最終的な音圧を上げる事が可能である、また積極的な音使いでも用いること が多い。

基本的に人間の耳は極端に左右に寄った広い音(PADとかSuperSAWとか)を聞くと気持ち悪く聴こえるた め、こちらもEQと同じく思い切った処理をするのは控えたほうが良い。完全に左右に振り切ってアルペジオを鳴らしたりパーカッションを鳴らしたりするのは手法としてとても良いが楽器選びは必ず慎重に行う。

ではどのように使うか、 基本的にはLRそれぞれ5~20%以内でサウンドを散らしてあげるだけでもかなりの効果が出る。
これは中音域を主体とするシンセ類だけでなく高音域を主体とするシンバル類などにも特に効果的である。ただしメインとなるリードやヴォーカルは中央からあまりずらさない方がいい。
全体を通して音が片側によってしまうのを防ぐためだ。
メインの音以外で効果的であると認識することが大事である。

M/S処理

M/Sという概念は中央とそれ以外といった認識だでこれはPanとは違い非常にややこしいが、この手法を用いることでメインとなる音と脇役となる音を非常に効果的に棲み分けることが可能になるため上手く使うことで効果的にクオリティを上げることが可能である。

そもそもM/Sとは音をモノとステレオに分けた際モノだけで鳴っている部分をMID、ステレオでなっている 音からモノでなっている音を抜いた部分をSIDEとして扱っているプラグインが多い(困ったことにプラグイ ンによってこの分割法が違う場合が多く注意したいところではある)。
よくM/Sで使われるプラグインでは所 謂イメージャー(ステレオイメージャー)などが代表的。
またメーカーによってはPanのLRのようにMIDとSIDEで音量をいじれるものも存在する。Airwindowsの EveryTrimなどがかなり使いやすい。

このM/S、例えばMIDだけで鳴らした場合はモノで鳴らした場合と全く同じ音が出るため(処理は違うが結果は同じ)、メインとなる音のMIDは削らない方がいい。メインの音が中央にあった方がいい理由はPanと同様である。
逆にSIDEだけ鳴らすとどうなるか、ここが重要であり結果としてはモノで鳴っていたサウンドが消失するため非常に不安定かつ軸のない音になる。
これもEQやPanと同じで思い切った処理をする際は慎重になるべき部分である。

上手に使う場合、やはりメインとなりづらいサウンドを処理する際にこのM/Sは非常に効果的である。
代表的 な例としてはサブとなるコード類やPad系統の音に対してMIDを削ったりSIDEを補強することで相対的にメ インとなるリード系統のMIDが他に邪魔されなくなって聴き取りやすいすっきりとした音像を作ることが可能になる。
ただしリードがなっていない場合残っている音がぼやけたり不安定な気持ちの悪い音になっていることには注意すべきだ。
また現状のプラグインではSIDEをブーストすることでもEQと同様にアーティ ファクトが出る可能性があることに注意したい。
EQ系統のプラグインで特定音域のMID及びSIDEをカットしたりBoostしたりできるものもあるがこれも同様である。

高音

基本的に高音域は人によって指定する部位がかなり分かれやすいため指標が難しいが、基 本的には人間の耳に刺さりやすい中高音域(1500~4000hz)とそれより上の高音域で分けて処 理するとかなり効果的にサウンドの質感を上げられる。 これも中音域同様にEQ、PAN、M/Sを駆使して処理していくことになるがプラグインの中 にはディエッサーといった高音域専用のEQとコンプを掛け合わせたようなものも存在する。

中高音域

人間の耳にかなり突き刺さって聴こえやすい音域であり、 それでいてシンセやヴォーカルなどの音が密集しやすい音域でもある。
適切な音量にしてやることで煌びやかさと聴きやすさを両立できる。
使用しているサウンドにもよるが、この音域は前述した通りかなりの音が密集するため処理をしない状態ですべての音を鳴らした際に耳につきやすく濁った音に聞こえる原因を多く生む部分である。
そのためメイン である音以外はこの音域帯を削ってやることで音質が改善するケースがかなり多い。
M/S処理においても同様で、特にこの辺りの音域はM/S両方でかなりの音量が重なっていることが多いため、パッドやコード類のMIDを削っていてもSIDEでこの音域にかなりの音量が集っていて依然音がよくならないケースがある。
そういった際にはこの中高音域をEQでカットしてやることでM/S調整と相乗して音をクリーンに仕上げることが可能だ。

削りすぎた場合、この音域はトランジェント(音が発生する際に出る最初のノイズのような音)やアタック部分の輪郭に当たる音が多分に含まれている(だからこそ音が密集しやすい部分でもある)。
したがって削るほど音の輪郭感や 存在感が減少することに注意したい。
これを逆手に取って空間系の音(Pad,Atmosphere系の音)から余分な輪郭を取り除いて音像を後ろに配置するテクニックは非常に効果的である。

高音域

中高音域ほどではないが人間の耳に刺さりやすく、かついろんなサウンドの倍音やノイズ成分が密集するためごちゃごちゃした音になりやすい部分である。
ここの処理が曲全体の輪郭感や空気感を大きく決める部分である。

ドラム類
シンバル及びハイハットやシェーカーなどはこの音域でなっていることが多いが重なるほどに位相の問題や音量の余分な増加を発生させる。
そのため適切なPanningであったりEQ処理やM/S処理で音量を出しすぎな いことが効果を発揮しやすい。
逆の例でリードやベースの倍音に圧迫されてこの音域が引っ込んだり濁って聞こえる際はサチュレーション やディストーション、ノイズジェネレータなどを使って音の輪郭を変えてやることではっきりしたで音にす ることが可能であるが、EQのブーストと同様音量が上がったり副作用的な音が出ることに注意したい。
まずはPanやEQを調整するところから始めよう。

シンセ類
基本的に倍音が上に行けば行くほどこの音域に集約していく。
したがって前の処理でEQや他プラグインなどでブーストしているほどこの部分に音は集まるため、あまりにも高音域に音量が出過ぎている場合は前の処理を見直すところから始めたい。
意図を持ってブーストするのと結果としてブーストされてしまうのでは音の綺麗さが大きく変わる。
またシンバル類やFX系統と音の被りを避ける方法として18000hzより上の音をカットする手法がありこれはかなり効果的である。
必要ない輪郭感を除去することによって結果として中高音域の輪郭が相対的に出やすいためである。

ディエッサー
元々ヴォーカルの処理を目的として作成されたプラグイン系統の一つではあるが、もちろんヴォーカル以外に も使用可能である。
コンプレッサーに挙動が近く、特定の音量を超えた時だけ指定した音量分抑えてくれるかなり便利な挙動ではある。
が、高音域は音の輪郭部分と被っていることが多いため下手に使うと輪郭を失いつつも音量だけは出ているといった結果になりやすい。
また音も鈍ることが可能性としてあるのであくまで時短的な仕様には向いているが効果的なものを使用しない限り音やリズム感、曲の輪郭感に悪影響が出やすい点に注意すべきである。

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