「親ガチャ」なんて単語見ると絶望するから「さらさらさん」(大野更紗著)って本でも読もうぜ
最近いつも、「今生まれてくる子どもに、自分は顔向けできるだろうか」と考えます。先にこの世に参入している者として。生まれた瞬間、何かの「クジ」をひいた瞬間、運命が決まってしまうような社会だとしたら、「希望を持って」なんて口が裂けても言えません。
親ガチャ。
安直すぎる表現なので、初めて見た時からわりと絶望させられたのだけど、こういう言葉が流行ってしまう程度に、現代は閉塞的な空気らしい。
そういえば少し前に「反出生主義」とかいう、知的そうなわりにがっかりする言葉が流行ったこともあった。
一方で、
「生まれで人生が決まってしまうような世の中にならないように」
と本気で考えている人もいるのだ、という事を言いたい。
ただ、この本は正直、少し難しいかもしれない。
中島(中島岳志氏)「ツイッター型社会の速さに、僕たちは摩耗させられないように、そこでまた違う意味での失語にならないように、気をつけないといけませんね。」
大野「私は今、これを書くときはこういうモードで、これを書くときはこういうモード、みたいな感じで自分が五つくらいに分裂している気がします。ギアチェンジして使い分けないと、若い人に届く言葉を探しつつ、社会のメインストリームや、どんどん進んでしまう時間についていくことができない。もう必死ですね。
この部分に表れているように、「親ガチャ」という言葉が生まれたSNSなどの文章のフェーズから離れた内容なのを著者たちが認識していて、読者としてもそれは認めざるをえないと思っている。ある程度読書習慣がある人でないと、内容が頭に入らないかもしれない。
しかし、
「人生は親ガチャだ、生まれで決まるんだ」
という意見に対して言いたいのは、
「安易な流行っている言葉を使って安易な決めつけをするのは、どうなのでしょうか? もっと踏み込んだ考えをすれば、そうではないかもしれませんよ?」
という事である。
事実、この本は親ガチャなる現象に対して全力で抗っているような内容に感じられる。(だから、数年前に発行された本だけど今取り上げた)
「お前は恵まれているから、そんな事が言えるんだ」
と思う人もいるかもしれない。
確かに、親から虐待を受けたわけでもないし、日本の東京という少なくとも物質的にはかなり恵まれた環境で生まれ育ったというのは、恵まれているといっても差し支えないかもしれない。
しかし、自分だって落ち込まないわけではないし、お金もそんなに持っていないし、何より言いたいのは、単なる無知による勘違いの絶望に巻きこまれるのは嫌だ、ということである。
本当に全ての可能性を当たったのか?
ちゃんと考えた結果なのか?
と、安易に「親ガチャ」なる発言をする人たちに問いたいのである。
話は少し変わってしまうが、ある別の本に、
「カンボジアの貧しい村に生まれ育って、スモーキーマウンテン(ゴミが大量に捨てられていてゴミから出るガスに火がついて自然発火し煙が上がっている所)でゴミ拾いをして生活費を稼いでいるような子供は、おそらく一生そこから出られない」
と書いてあったのを読んだことがあって、そこまでひどい程度でなくてもいわゆる貧しい環境で生まれ育ったら、「親ガチャ」という発想になってしまうのかもしれない。
それは致し方ないのかもしれない。
子供の頃の環境というのは変えることはほぼ不可能で、その頃に貧しかったり虐待を受けていたりしたら、抵抗できないという無力感から、自力で環境を変えることは無理、つまり「自分で何も変えることはできない、人生は生まれ育った環境で決まり、全ては親のせい」と強く思うようになってしまうだろう。
しかし繰り返したいのは、「生まれで人生が決まらないような社会にすることを本気で考え続けている人もいる」という事である。
そういう人達に向かって、簡単に「人生は親ガチャです、生まれで決まります」なんて言えるだろうか? 失礼ではないだろうか? そう結論づけていいほど熟慮し、行動したのだろうか?
なにより、勘違いかもしれないのに、それで人生を投げ出してしまっていいのだろうか?
言葉が流行っているのは事実であり、不特定多数の人間が考えている正直な気持ちなのかもしれない。
この度の騒ぎによる危機感のせいで、人の本音のような部分が露呈している、ということなのかもしれない。
しかし、そういう風潮に対して疑問を持ち、抗わないではいられない、というのが個人的な今の正直な気分である。
負のエネルギーに巻き込まれたくないのである。
そして、負のエネルギーに巻き込まれてしまった人達に、
「それでいいのですか?」と言いたい。
自分でやれることをやりましたか、と。
ちゃんと考え抜きましたか、と。
やれるだけやってから、考えぬいてから、親ガチャとか言って絶望してほしいと思っています。
「親ガチャ」なんて、勘違いかもしれませんよ?
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