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兵庫県警察機動隊員の自死について②

二 権威主義と過覚醒

 警察社会は階級社会である。また、警察組織は職階とは別に(警視、警部、警部補、などの)階級が設けられているため、他の組織に比べ上下関係がはっきりし、上意下達が徹底されている。警察組織において、しばしば上位者に対して下位者の服従がみられるのはそのためである。警察官は職務規範としてその構造を受け入れていることから権威主義的傾向にあると考えられる。

 人間の行動や判断の基になる考えをパーソナリティというが、人が生まれつき備えている性格的なものに加えて家庭環境や周囲との人間関係、成長の過程で作られるものとされている。以下のような傾向が見られる権威主義的パーソナリティであるが、特に、⒈の”権威への従順”や⒍の”硬直した思考”、⒌の“異質性に対する敵意”などは警察官として奉仕する過程で身につきそうなものであると感じられる。

権威主義的パーソナリティの傾向

1. 【権威への従順】権威ある人物や制度に対して無条件に従う傾向がある
2. 【権威の行使】権力を持つ立場に立つと、他者に対して権威を行使しようとする
3. 【従順と攻撃性の二重性】上位者には従順である一方、下位者や弱者に対しては攻撃的になる
4. 【伝統の重視】伝統的な価値観や習慣を強く支持し、それに反するものを否定する
5. 【異質性に対する敵意】自分たちと異なる価値観や文化を持つ人々に対して強い偏見や敵意を抱きやすい
6. 【硬直した思考】物事を白黒で捉え、柔軟な思考を持ちにくい
7. 【強い自己正当化】自分の行動や信念を正当化するために、他者を批判したり責任を転嫁したりする
8. 【パワーとタフさの崇拝】力や強さを重要視し、それを持っている人物や集団を崇拝する

 これらの権威主義的傾向は準軍組織に顕著であるが、加えてストレスに晒されることによって起きる身体の過剰な警戒状態『過覚醒』もまた警察官に顕著である。

過覚醒(過度の覚醒状態)は身体が過剰に警戒状態にあることを意味し、さまざまな身体的症状を引き起こすものであり、主な症状は以下の通りである。

1. 【心拍数の増加】心拍が速くなりドキドキする感じが続く
2. 【呼吸の速さや浅さ】呼吸が速くなり深呼吸を難しく感じることがある
3. 【発汗】特に手のひらや額に汗をかきやすくなる
4. 【震えや筋肉の緊張】手や体が震え、筋肉が緊張しやすくなる
5. 【胃腸の不調】胃痛、吐き気、下痢、便秘などの消化器症状が現れることがある
6. 【頭痛】緊張性頭痛や偏頭痛が頻繁に起こることがある
7. 【疲労感】休んでも疲れが取れず全身の倦怠感を感じることがある
8. 【睡眠障害】不眠や浅い睡眠、悪夢を見ることも多くなる
9. 【集中力の低下】注意散漫になり集中力が続かなくなることがある
10.【過敏性】音や光、触覚などに対して過敏に反応することがある

これらの症状は、ストレスやトラウマ、過度の緊張状態が原因で引き起こされることが多いものである

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