続・漫画連載の完結に思うこと。
前回、『ファイナルファンタジーXI Boy meets Girl』という漫画の連載・打ち切り~連載再開~完結巻が出るまでのお話をしました。
全5巻(プラス同人誌にて外伝1作+α)。
作品の具体的な流れは以下のようになります。
(※古い本なので、Amazonさんから本の画像をお借りしてます)
↑こちらの3巻の途中までは、当時不定期で出版されていたFF11のアンソロジーコミックにて描かせていただいた読み切り、もしくは前後編の漫画で構成されていました。
それぞれ一話完結ではありますが、以降もすべて登場人物は共通のシリーズものになっています。
そして、こちら。↓
↑3巻『アトルガンへいこう!』の後半2話、そしてこの4巻『またあした』掲載分からは、アンソロジーコミックではなく「コミックヴァナ通」という雑誌が創刊されたため、そちらで同シリーズを『続き物として連載』することになりました。
そして「コミックヴァナ通」は7冊で休刊となりましたので、7話目で連載も打ち切りとなりました。
その後、前回の記事に書いたような交渉の末、Webコミックサイトに移籍して続きを描かせていただき、完結することができました。
このWebコミックサイト「ファミ通コミッククリア」での連載分が全部入っているのがこの最終巻になります。↓
前回割愛した部分なのですが、
今回は、コミッククリアで連載再開にGOが出た後にも色々有りまして…というお話。
・第1話製作中に東日本大震災に見舞われ
掲載はしばらく延期と言われる事件
幸い自分の周辺に大きな被害は無かったのですが、世の中のいろんな物流が麻痺していたのはわかっており、紙が足りないとか一部で印刷が止まっているらしいことは聞いていたものの、一見関係なさそうに見えるWebコミックのほうにもやはり進行の影響が出てしまっているようでした。
今もコロナ禍のなか、雑誌連載をしていない私ですらその影響でお仕事に計画の変更が出たくらいです。世の中、いつ何が起こるかわからないものです。
具体的に「いつまで延期」という回答がしばらく無かったので、地震よりもその先の生活の不安の中描き続けていたのを覚えています…
(このままダメになるんじゃないかと何度も思いました。)
・連載回数を削ってくれと言われた話
連載再開をするにあたって、あとどれくらい描くつもりなのかということをまず聞かれました。
『コミックヴァナ通』で連載を始めた時に資料とおおまかなプロットは担当氏に提出してあったので、そこからざっくりと割り出して、単行本に収録できるのが大体5話程度と考えて、
『単行本にして約2冊分ですかね』と報告しました。
そしてしばらくのち、編集部経由→担当氏からのご連絡。
『単行本あと1冊(の話数)でどうにか完結してくれないか』とのこと。
これにはさすがに面食らいました。さてどうやって縮めようかと。
ただ前回も描きましたが、無料コミックサイトなので、単行本で利益を出さないと意味がありません。漫画を掲載してみて、これは単行本が売れそうにないと判断されればその時点で打ち切りです。あと1冊か2冊とかいう以前の問題です。
担当氏や編集部さんがギリギリのラインで頑張って通してくれた企画であろうことは重々承知しておりましたので、これ以上無理を言って話数を引き伸ばし、また打ち切りで未完のままの作品になるよりは、どうにか編集部さんの意向に沿った話数でまとめるのが最善策であろうと私も了承いたしました。
『そのかわり、単行本の総ページ数はもう少し増やしても良いと言われているので、その範囲でなんとか頑張りましょう』と担当氏。
最終回までの話数を逆算してプロットを削り書き直し、その時点で月1掲載、最終回を迎えるであろう日程というのもそこで決まりました。
…もちろん、全てはうまくいったらの話です。何度も言いますが、無料公開する以上「単行本は出すのが前提」ですが、評判が悪ければ連載は打ち切りですし、もしwebで完結までさせてもらえたとしても、最終的に「これは売れそうにない」と判断されたならば単行本にもなりません。
もともと紙の本での連載で、当時は今ほど電子書籍やwebコミックが多くはなかった頃なので、
「webで読むのは好きではないので単行本化したら読みます」
とおっしゃる読者様も大変多く、それゆえ最後の最後まで本当に緊張の抜けない日々でした。
そして、『そのギリギリまで増やしていただいた話数』での最終回。
一応ネームは描けたものの、やっぱり展開ツメツメのスーパー駆け足感は否めませんでした。それでも「終わらないよりマシ」という判断の元、どうにかこうにか描いて提出しました。
そして返ってきた担当氏からの神回答がこちらです。
『前後編に分けて良いって言ってるので、もう一話増やして終わりましょう。』
コレはもう本当にありがたかったです。最終的に単行本に掲載されているバージョンもだいぶ駆け足だったとは思うんですが、当初はあれよりもっと詰まっていたということです(笑)。
喜びのほうが勝っていたのでネームを描き直す作業自体はどうということはありませんでしたが、問題はアシスタントさんとのお仕事の約束がその月までということでした。
先方さんにも当然来月以降のご都合がおありでしょう。
ダメなら仕方ない、最終回は腹をくくって全部自分で描くしか無い、と思いつつお問い合わせをしました。
『もう一ヶ月お手伝いできますよ。^^』
もう本当にありがたかったです。女神の祝福…!
ひとりで描いていた頃は毎月アトルガン装備の模様(しかもモブの)描きながら心のなかで泣いてたので、アシさんがおられなければ漫画の連載なんて無理無理無理でした。本当に感謝感謝です。
そうしてどうにかこうにか連載完結、そして最終巻発売にたどり着くことが出来ました。
あと1冊で終わってねと言われたときはどうしようかと思いましたが、やってみればなんとかなるものですね。
そして仕上がってきた念願の最終巻がこちらです。↓
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や、ほ、ほら!!!
約束通り「1冊で」!!終わりましたし!!!
ね!
ね!
ね…………
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アシスタント様方、担当様、編集様、コミッククリア編集部様、スクウェア・エニックス様、
最終巻の帯を描いてくださった田中弘道プロデューサー(当時)様、
最後まで本当にお世話になりました。
そして当時から今まで、このような昔話まで見届けてくださった読者の皆様、
重ね重ね、誠にありがとうございました。
(小声)いや…終わってみればやっぱり残り2冊分だったなっていう…なんかその…編集部様…すみませんでした…色々ご尽力いただき…お手数をおかけしました…
今もゲームのコミカライズ企画は数多ありますが、キャラからストーリーまでオリジナルでやっていいなどという漫画の企画はもうやらせていただけることは無いだろうなと思います。
(その上『最後まで描かせろ』なんてのは…w)
あの時代だったからやらせていただけたことだと思います。
本当に貴重な経験をさせて頂きました。一緒に同じ時代を駆け抜けて下さった冒険者兼作家陣の皆様も、本当にありがとうございました…。
(12/7 一部追記)