琴線日記#003 痛みを抱えて生きる、すべての人たちへ
映画『書くが、まま』
中村守里主演×上村奈帆監督作品書くことでしか、想いを伝えることができない14歳の、物語。
こんなにも胸がきゅっ、となる映画を見たことがなかった。
見終えた時、もう二度とこんなに苦しい思いをする「中学生」という時期をやり過ごさなくていいのだ、と安堵したことを、鮮明に覚えている。常に周りの顔色を伺って、いじめられないように、目をつけられないように、ひとりぼっちの寂しい人間だと思われないように、大して好きでもないクラスメイトと微妙な顔でただ群れていた毎日を思い出すと今でも吐き気がする。
自分の思いを書くことで昇華させる。誰に伝えるでもなく、ただ淡々と溢れ出る感情をノートに書きつける。叩きつける、というのが正しいのかもしれないと思うくらい、激しく感情を上塗りしていた。
この作品の魅力は、どの登場人物にも感情移入できるポイントがあるというところだ。書くことでしか、自分を表現できない主人公松木ひなの、リーダー格の子にはぶられないために媚びる子、飄々としている松木さんが気に入らない常にフラストレーションを抱えている子、自分のエピソードを話してなんとかひなのの心の紐を解こうとする保健室の先生、事なかれ主義の教頭、役に立たないクラス担任。ある種ステレオタイプで、だけど皆どこかしらに不満や不安を抱えていて、それが痛いくらいに伝わってくる。
学校は、子どもたちにとっても、大人にとっても、窮屈で檻みたいな側面がある。それが色濃く反映されていて、頭を抱えた。
これは、ひとりの中学生の成長の物語というだけではない。成長しているのは、松木ひなのだけではなく、松木さんによって心を動かされたすべての人たちである。ラストシーンは涙なしに見れない。この映画に出会うのがあと10年早かったら、どれだけ音楽や「書くこと」に救われていたかわからない。
痛みを抱えて生きている、全ての人に見て欲しいと思う。中村守里ちゃんの「声を出さない演技」がとてもよかった。伏せ目がちなところ、視線が全てを物語っていた。
【登壇情報】※公式より引用させていただきました
新宿k'sシネマにて2月9日より
2/9(土) 中村守里・長谷川葉生ほかキャスト
2/10(日)阿部広太郎(映画プロデューサー/コピーライター)・羽賀翔一(漫画家)
2/11(月)もっちゃん(Youtuber)
2/12(火)竹内道宏(映像作家)
2/13(水)中村守里、長谷川葉生
2/14(木)88生まれの女たち
2/15(金)中村守里・長谷川葉生ほかキャスト
予告編はこちらから。公式HP