見出し画像

〇イヌの台詞 35~昔の犬の話の巻~

父が犬好きということもあり、私のウチにはいつもイヌがいました。今と
なっては、ほとんどのイヌはあまり記憶に残っていないのですが、1匹だけよく覚えているイヌがいます。
 
名前を「ペチ」といいました。私が幼少期から小学校の卒業の頃まで、10年くらい居たと思います。オスで中型の茶色の雑種犬、やや太めの短足で、
どちらかと言えば、ブサイクなイヌでしたね。
 
ペチは気性が荒く、時によその人を咬んだり、他のイヌとケンカしてボロ
ボロになって帰ってきたり、いろいろと問題のあるイヌでした。
しかし、おとなしく気の弱い少年であった私にとっては、強くてやさしい
「味方」であったのです。



昭和30年代(1950年代)までは、朝夕のイヌの散歩というのは、繋いでするのではなく、放していました。イヌは自由に走り回り、そこらにウンチを
して、お腹が空いたら帰って来るのです。車も少なく、ノンビリとした時代で、この辺りも田舎でしたから、許されたのでしょう。
 
 
当時は、家の軒下に犬小屋を置き、そこで飼うというのが一般的でした。家の中でヒトと同居しているイヌというのは、稀な時代であったと思います。
ドッグフードなどという物もなく、家の食事で残した残飯をやっていました。
 

ペチは10歳になった頃、フィラリアというイヌの病に感染し、腹部が膨れていました。きちんと予防接種をすれば、感染などない病気なのでしょうが、当時はまだ医療体制が十分でない時代であったのです。

ある日、いつものように散歩のために放してやったペチが、いつまで待っても帰って来ません。探しに行くと、近くの川の側の農道に横たわり、すでに息絶えていました。夕暮れ迫る頃、私はペチを木製の荷車に乗せ、1人で車を押しつつ、涙がとめどなく流れてきて……

今から60年以上前、私が少年であった頃の、少し悲しい思い出です。

いいなと思ったら応援しよう!