ビスケットの刀を研ぐ
どういうわけか、一向に平和は訪れない。
数々の戦いにおいて、我々は勝利を収めてきた。
圧倒的な軍事力をもって、憎き敵対勢力を、完膚なきまでに叩きのめしてきた。
我らの宗派こそが、民主主義の名のもとで、より多くの人間を悦ばせられる「正義」であるということを、長年にわたって示し続けてきた。
我々は正しい。
愚かなる敵対勢力たちは、そのいかにも重そうなかぶとを脱いで、我らが軍門に降らなければならない。
さもなくば、その身体は無惨にも焼き払われ、溶かされてしまうだろう。
我々は確かに勝利した。
戦争はもう終わったのだ。
しかし、
どういうわけか、いまだに平和は訪れない。
「持つところがあるから手が汚れなくてすむ」というあまりにも苦しい主張を盾に、残党たちはみにくく無駄な抵抗を続けている。
いちばんはじめに触れられる強みが、味や食感にかかわる情報にならない時点で、彼らの敗北はすでに決まっているというのに。
手をよごさずに小腹を満たしたいという、愚劣極まりない甘い考えを持つものに、チョコレート菓子を語る資格などあるわけがないというのに。
今日も我々は、
愚かなものたちを啓蒙する。洗脳する。始末する。
すべては、我々の陣営による完全な世界のために。