あたたかいところ
そこは、まるでてんごくだった。
まいにち3しょく、あたたかいごはんがたべられる。
いっしょにくらすともだちはみんなやさしいし、
おとなたちはいきなりなぐってきたりしない。
それどころか、かんたんなしごとをしているだけで、みんなほめてくれる。
ねるときに、だれかにふみつけられることもない。
そこにいるときだけは、
こんなじぶんでも、たのしくいきていられたんだ。
「もう2どと、かえってきちゃダメだよ」
しゅっぱつのときにかけられたことばがよぎる。
でもごめんなさい、せんせい、
あのときのやくそく、もうやぶっちゃいそうです。
まわりをキョロキョロとていねいにみわたし、
ぼろぼろのスニーカーのつまさきで、ゆかをトントンとたたいて、
メロンパンのふくろを、ぐいっとポケットにねじこんだ。