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土地のビールがいちばんだ、が……
ベルリン酒場探検隊である。
今回も世界各国に暮らす物書き仲間によるリレーエッセイ「日本にいないエッセイストクラブ」としての参加である。前回走者については、文末をご覧いただきたい。リレーエッセイのこれまでの記事は、マガジンにまとめられているのでこちらもご一読をお願い申し上げる。
さて、リレーエッセイもすでに8周目を迎えた。今回のお題は「日本の恋しいもの」である。
レポート提出者:久保田由希
ビールは、その土地のものがいちばん
しょっぱなからナンだが、隊員久保田自身は「日本の恋しいもの」というのはあまりない。ビールはドイツのうまくて安いものがいくらでも飲めたし、それに合うつまみもソーセージにフライドポテトと、これまたドイツのうまくて安いものが目白押しだ。アルコールの中でビールをもっとも愛飲する久保田にとっては、それで十分、いやそれが幸せだったのである。
「そうは言っても、ドイツで日本のビールも飲みたくなるのでは?」と思われるかもしれない。
だが、これがまったくそうならなかった。久保田は「ビールは土地のものを飲むのがいちばん」と常日頃から唱えている。ドイツのカラッと爽やかな空気のもとで飲むのは、ドイツビールがうまいのだ。決してキンキンにさせず、ほんのり冷えたビールを舌の上でじっくりと味わいながら喉の奥へと流す。
当然ながら、ドイツビール自体もしっかりとした味わいがある。鼻を近づけたときのホップの香り、口に含んだときの苦味と甘味、流し込んだときの満足感。ドイツビールは、ドイツの風土に合っている。湿度の低い爽やかな夏にも、厳しい寒さが続く冬にも、そのときどきにふさわしいビールがいくらでも揃っているのだ。
逆に言えば、日本では日本のビールが合う。特に、まとわりつくような湿気のある日本の夏には、ドイツビールは重すぎるかもしれない。そういうわけで、日本にいるときにドイツビールが恋しくなることもない。たまに飲むのは、楽しみのためだ。
おしゃれな焼酎に心が揺れる
ドイツでポピュラーなアルコールといえば、ビールのほかにワインがある。日本ではドイツワインというと甘口の白を思い浮かべる人も多いようだが、ドイツの主流は辛口白だ。なぜ日本のスーパーには、ドイツワインコーナーに安い甘口の白しか置いていないのか。そんなんだから、いつまでたっても誤解が解けない。棚を見るたび、憤慨している久保田である。
日本酒はずいぶん浸透しており、ベルリンでは日本でもおいそれと入手できない蔵元の酒を出す店も現れている。もちろん高級品であるからして、プレゼンテーションもおしゃれである。
ニューカマーは焼酎だろう。日本酒に比べて焼酎はまだ新しい。ベルリンで焼酎を飲める店は、まだまだ少ない。そしてこちらもおしゃれである。
あるとき、ベルリンでしゃれた日本食レストランに出かけた。こういう場では、ビール以外のものを飲みたい気分になる。そしてメニューで見つけたのがレモンサワーだ。
レモンサワーがこんなにうまいものだとは、知らなかった。爽快で、香りもいい。ちょっといいカクテルを飲んでいる気分である。しかし値段もカクテル並みだ。
「これ、日本ならビールと同じか、それより安いくらいなのに……」
ちょっとだけ恋しくなった瞬間であった。
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前回走者、インドネシア在住武部洋子さんの記事はこちら。
昭和、それは「いとおしいダサさ。」の表現に心底共感する。
昭和、それはベルリンの酒場にも感じるもの。現在日本のガード下で一杯(緊急事態宣言下ではノンアルで)やるのが楽しみな隊員久保田は、武部さんを同志と呼ばせていただきたい。
次回走者はカタール在住のフクシマタケシさんである。前回記事はこちら。
運動不足から現れた体調不良。改善のために歩きはじめたフクシマさんが発見した「散歩のお供」とは。
寄る年波には勝てず著しい体力低下を痛感し、せめてもと歩きはじめた隊員久保田にとって、これまた痛く共感する内容であった。カタールのフクシマさんにとって「日本の恋しいもの」とは食べ物なのか、気候か、はたまたまったく違うものか……ご期待願いたい。
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