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二度と行けない #バーテンダーとの思い出

20代前半の頃、ものすごく好きなバンドがあった。関西で行われるライブには全部足を運び、東京にも何度もライブに行くために通った。夜行バスに乗っての日帰り。楽しかった。

そのバンドとよく対バンをしていた大阪のバンドがあった。そのバンドもかっこ良くて好きだった。金管が入ったSwing系のJazzバンド。ゴリゴリした感じと艶やかな感じが好きだった。中でもトランペットの人がすごく好きだった。穏やかなで優しい雰囲気の細身で背の高い人だった。トランペットだから前に出て煽ったりもするけど、グイグイとした気配がない。ロック界隈において貴重な癒し系だ。

ライブの中でだったかはっきり覚えていないが、そんなトランペットさんが大阪の有名なビルの中でバーテンをしているということを知った。一緒にライブに通っていた友人と「行ってみたいね!」と盛り上がったことを覚えている。しかし、結局行かずじまいだった。

何故だろうと考える。お酒も飲めるし行って話したいという気持ちはあったのにどうして行かなかったのだろう。

この記事を書くにあたって、前述のBarに行ってみようかなと思いバンド名で検索してみたが解らなかった。どちらのバンドもなんとなく自然消滅していた。お店の名前もトランペットの人の名前も覚えていない。検索しても出てこない。これはもう二度と行けない。行っておけば良かったという気持ちが湧き上がる。

ふと考えると、これまでお酒を楽しむBarというものに行ったことがない。…多分、行ったことがない。ダイニングバーやカフェバーはある。私はどちらかといえばお酒は食事のお供なのだ。Barと聞くと少し身構えてしまう。ドラマなどで見るカウンターでお酒を楽しみながらバーテンダーと親しげに会話を交わす大人。そんなシャレた人間に自分がなれる気が一切しない。

きっと行けばバーテンダーの方が上手に話してくれるのだということも解る。しかし、別に喋りたいわけじゃない。そっと適度な距離で放っておいてくれるのも解る。それはそれでどうしたらいいのか解らない。Barのお作法が解らない。バーテンダーさんと何を話せばいいのか解らない。私が何をしたいのかも解らない。ご飯が食べたい、そうだ私はご飯が食べたい。

馴染みのBarとか憧れるけど、勇気が出ない。どのお店に行けば良いか解らない。誰か教えて。どうしたらいいの。

トランペットの人とした会話といえば、ライブハウスで「すごく楽しかったです!」「次のライブも楽しみです!」このくらいだ。お店に行ってみたいと伝えれば良かったなぁ。

もう二度と行けないなぁと思う。

そもそも一度も行ってない。


#バーテンダーとの思い出

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