死んだふり、または気絶するスマホ。

今日、私のスマホが気絶した。

お昼前くらいに、朝食兼昼食のパンを貪り、私は家を出た。インスタで見つけた蚤の市的なイベントが2件あったからだ。本当はもっと早く家を出るはずだったが、ダラダラとしてしまい少し遅くなってしまった。

地下鉄に乗り込み、無事に2件を見て楽しんだ。思っていたよりも早く終わったので、もう少し街をふらついて帰ろうと思った。とはいえ、お買い物欲は満たされている。今日は地下鉄に何度も乗るからと思って、600円の地下鉄1日乗り放題のカードを買っている。そうだこの間インスタで見た可愛いパフェのある喫茶店に行こう。そう決めて私はすぐに御堂筋線へ乗り込んだ。その喫茶店も素敵でパフェもとても美味しかった（長くなるのでこの件はまた別で書きます）。カフェを出てもまだ明るく、どこかに行きたい気持ち。

ふと「温泉に行こう」と思った。温泉といっても夕方前の時間から、遠方まで行くのは嫌だった。ちょうど、途中の大国町駅の近くに、たまに利用するスーパー銭湯がある。明るい時間から温泉に浸かって心と体を解そう。楽しいイベントを見てお買い物をし、美味しいものを食べ温泉。最高の休日じゃないか。

スーパー銭湯につき駐車場を横切り、入り口に向かっていると止まっている一台の車にライトが点いている。私のいた位置から運転席には人がいるように見えなかった。車に詳しくはないが、たまにスーパーなどでライトつけっぱなしであるアナウンスがなされている。困ったことになるのだろうと何となく思っていた。ライトを点灯したまま温泉に入っていたとしたら、1時間くらいは戻ってこないだろう。本当に誰もいなかったらお店の人に伝えた方が良いのではないかと思い、そっと車の方に近づいてみた。助手席や後部座席には人がいなさそうだから、運転席だけちらっと確認できれば良いと見ていた。車まで一台くらいのところにくると、人が見えた。あ、運転手の人いた。良かった。そう思った瞬間に、相手も私を見えていることに気づく。自分の車に近づいてくる見知らぬ女。温泉から出てきたわけでもなく、道路側の入り口からわざわざ車の方に寄ってくる女。側から見れば不審者である。私は、不審者ではないですよ、車上荒らしではないですよ、と心の中で唱えながらさりげなく車を離れる。

さりげなく普通に入り口を目指していたつもりだが、心は焦っていたのだろうか。近くに止められていた自転車のハンドルに、スマホにつないでいたイヤホンのコードがひっかかった。自転車は倒れたりしなかったが、外そうとした際に、スマホを落としてしまった。画面からアスファルトに落ちるスマホ。慌てて拾い上げる。画面をチェックしても割れたりはしていなかった。良かった。そのまま何事もなかったような素振りで私は温泉施設に入っていった。

2階のエントランスへ向かうエレベーターの中で、私は再度スマホをチェックした。画面が真っ黒だ。落とした時に電源が勝手に落ちたのだろうか。立ち上げようと、電源を押しても無反応である。先ほど落とした時に何か大事なところにダメージがあったのだろうか、ウンともスンともいわない。入り口の自動販売機で入浴券とレンタルタオルの券を購入し、ロッカールームへ向かった。カバンを置き、上着などを脱ぎ、3段仕様のロッカーの一番上に入れる。もう一度スマホの電源を入れようとしても無反応だ。立ち上げようと、電源を押しても無反応である。充電が切れるような時間ではない。まぁ、いいか。温泉に浸かっている間に復活するかな。楽天的にそう考え、大浴場へ向かった。

40分くらいだろうか。いくつもある温泉を出たり入ったりして堪能した後、ロッカールームに戻った。髪をドライヤーで乾かし服を着る。温泉を出た後、エレベーターで再度電源を入れてみる。スマホの画面は相変わらず真っ暗で無反応である。

死んだのか？嘘だろう？こんなに元気そうなのに、お前の身に何があったんだスマホ。何があったって私がアスファルトに落としたんだが。

使い始めてそんなに経っていないので劣化などでもないと思う。ただ、たまに電源が落ちたり、反応がない時もある。友人のiPhoneさんは寒がりで、とにかく寒い地元では朝起きたら無反応になっていることがあると聞いたことがある。私のスマホさんもそんな感じで、ちょっとご機嫌が悪いだけなじゃいだろうか。謎である。

携帯ショップに相談に行こうかと迷ったが、充電したら反応があるだろうとぼんやりと思った私は、そのまま帰路に着いた。

帰りの電車の中でも何も反応をしないスマホさん。徹底的に私のことなど無視である。落として悪かったって。反省してるって。今度ちゃんとカバーもつけるから、そろそろ機嫌を治してくれよ。

家に着き、いの一番にスマホを充電機に繋いだ。私の願いも虚しく、無反応である。なんてこった。充電器に繋いだら、電源を切ってる時などはバイブして画面に電池のマークが表示されるのだが、キレイな画面は暗いまま。いつもなら点灯するはずの左上の小さなライトも点かない。いよいよどうすれば良いのか解らない。

本当に死んでしまったんだろうか。こんなにキレイな顔（画面）してるのに。

その時、ふとiPodの強制再起動のことを思い出した。ずっと前に使用していたiPodは充電ボタンと何かを同時に長押ししたら再起動できた。このスマホも同じようにしてみてはどうだろうか。そう思い、私は電源ボタンとその上にある音量調節ボタンを同時に長押ししてみた。

ブルルッ

スマホが体を身震いさせた。真っ暗だった画面に明かりが灯った。

生きていた、良かった…！気絶していただけだった！

スマホはいつも通り立ち上がった。私は数時間ぶりに見るいつもの画面に喜んだ。googleやtwitterなどのアプリもいつも通りだ。良かった。

喜んでいる中で、1つ疑問が浮かび上がった。何故か起動できたスマホは気絶する前に立ち上げていたspotifyが起動したままだった。いつもなら、充電が切れたり再起動させれば、その前に立ち上げていたアプリも全部閉じているのに。

…さては、お前気絶じゃないな？死んだふりをしていただけか？そんな疑念が心に沸きあがる。私のこの数時間の心配を返して欲しい。いや、そもそも落としたのは私だが、数時間に渡って死んだふりをし続けなくてもいいだろう。君に対して私はそんなに非道いことをしただろうか。まぁ、アスファルトに顔面（というか画面）から落としたけど。確かに悪かったが。

皆さんの相棒は、死んだふりしてきませんか？寒がりで勝手に電源落としたりしませんか？私は今日の事で反省し、良い加減可愛いケースを着させてあげようと思います。可愛いのが見つかれば。

それにしても死んだふりすることはないだろう。