隙だらけの水曜日。

しまった。寝坊した。
あー、もう最悪だ。
いや、まだ大丈夫。遅刻はギリギリしない。
顔洗って歯を磨いて
すぐに飛び出せばまだ行ける。

電車は一本遅いのでもセーフ。すごい走れば。
とりあえず、5分以内に家を出る。

買ったばかりのユニクロのカットソーとパンツ。

メイクは会社についてトイレに飛び込もう。
とりあえずポーチ。
あ、マスクで隠れるからアイメイクだけでいいや。

あー、もう最悪。
走れるようにローヒール。

全力で走るの久しぶりすぎてしんどい。

電車に間に合った。いける。
駅についたらまた全力ダッシュか。
早歩きでいけるかな。
いや、化粧しなきゃ。やっぱダッシュだな。

あー、汗拭きシート忘れた。
なくなったから昨日買ったのに。
コンビニ寄れるかな。
いや無理だな。
駅のローソン毎朝混んでるもんな。
タオルで拭いてお昼に買いに行こう。

ギリギリ遅刻しない時間に会社に駆け込む。

間に合った。

「先輩、ギリギリなの珍しいですね。
走ったんですか？めっちゃ顔赤いですよ」

隣の席の後輩は今日も爽やかだ。

「先輩…タグついたままですよ」

笑いながらサイズのシールを剥がしとる彼女のネイルは
淡い水色に白のドット。

今日も彼女には隙がない。

鞄からハンカチを取り出し汗をふく。
しまった、メイク…もういいか。

席についたままパソコンが立ち上がる隙に
とりあえずアイラインだけひいた。

鞄にポーチを収めながら
財布を忘れたことに気づく。

本当に…最悪だ。